[概要]19日の米上院外交委の公聴会で、ライス国務長官はイラクの治安に悪影響を及ぼす国についてシリアとイランを挙げ、「両国は戦争と平和のどちらの側につくか決めるべき」と主張した。また米国がシリアへの攻撃を検討したとの報道を受けた質問には、「すべての選択肢は排除されない」と述べ、これを否定しなかった。この日、ライス長官は「シリアとイランからイラクに武装勢力が流れ込んでいるのを許している」と、シリアとイランを厳しく批判した。
ニュースウィーク誌(10月17日号)によると、ブッシュ政権内で最近イラクの国境を越えてシリアへの軍事攻撃が議論されたが、ライス長官が国家安全保障会議で反対したと報道している。
公聴会で議員から、「シリアを攻撃する場合は議会の承認を求めるか」と質問されると、ライス長官は「大統領にはその権限がある」と述べ、必ずしも議会の承認はいらないと見解を示した。
[コメント]私はこれをオセロ・理論と勝手に呼んでいるが、レバノンで親シリア政権が倒れたことで、シリアは地中海の米機動艦隊とイラクの米軍に挟まれたことになる。もしオセロゲームならこれでシリアは親米的な政権に変わることになる。もしシリアが親米的な政権になれば、アメリカ軍は地中海から直接イラクに、軍事物資を陸路で輸送できるようになる。米軍はペルシャ湾やクェートを経由しなくともイラクに物資が送れるようになる。これはイラクの米軍にとって数十万人の援軍が来たに等しい話しなのである。
これでシリアから反米武装勢力を排除するどころか、長期戦略的な補給路を確保できることになる。
さらにである。こんどは米英豪軍が配置されたアフガンとイラクで、宿敵のイランを挟み込むことができる。これもオセロゲームなら、こんどはイランの保守政権が倒れ、親米的な進歩政権が生まれることになる。
しかしである。アメリカとイラクの現実を見ると、イラクの米軍はゲリラ戦に足を取られ、先の見えない泥沼化の様相を強めている。米国内でも米軍のイラク占領に対する非難・不支持も高まっている。とてもシリアに戦線を拡大する余裕はない。さらにイラク撤退の可能性を示す出口戦略さえ示されない。
そこでかつての米軍はベトナム戦争時代のカンボジアのように、秘密作戦が繰り返し行われることになる。シリアを拠点にする反米武装勢力狩りを口実に、特殊部隊を使った短期間に限る制圧作戦を実施するのだ。(米大統領の戦争権限で可能) 少人数の特殊部隊といっても、空にはA−10攻撃機などの対地支援機が援護につく。別の攻撃機から精密誘導爆弾を投下することも可能なのだ。そのような秘密作戦と同時進行で、CIAがシリア政権内にクーデターの罠を仕掛けていく。
このようなことはアメリカのような巨大軍事力を持ち、情報・謀略機関のCIAに莫大な資金をつぎ込んでいれば、誰もが考える一般的な常識なのである。イラクから駐留米軍の大半を撤退させるためには、シリアの支配はなんとしても確保したいところだ。それによって隣国イランに対しても、無言の軍事的な圧力を数段高めることになるからだ。
次にシリアで何かが起きる。決してシリアから目を離さないように。
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