CIAは大統領選に気の乗らないエンリレ国防相を説得し続け、1985年になってようやくエンリレが食指を動かした。CIAは政治的野心のあるエンリレを「指導者」に、正直な指揮官ラモスに「勇気」を期待していた。ベール将軍とマルコスの秘密連絡はCIAに筒抜けだった。1980年初頭、フィリピン政府が1000万ドルで導入したストロムバーク゜・カールソン社製の電子式遠距離通信システムは、意図的に通信を遮って偽の情報を伝えることも出来る、CIAやペンタゴンの望みに叶う優れものだった。ベール将軍が盗聴を防ぐためのスクランブルをかけると、それはたちどころに解除されてCIAの耳に届いた。1986年のマルコス追放クーデターはかくして成功したが、結果的にアキノ夫人が国民の圧倒的支持を受けて勝利し、CIAのエンリレ大統領の野望は挫かれた。
---「The Marcos Dynasty」by Sterling
Seagrave
P302-315より部分抜粋
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