1977年に新潟市内で拉致された横田めぐみさん(不明当時13)の事件で、拉致被害者の曽我ひとみさん(46)が、実行犯は北朝鮮の元工作員、辛光洙(シン・グァンス)容疑者(76)だったと、めぐみさんの両親ら、関係者に話していたことがわかった。警察当局もこうした情報を把握している。めぐみさん拉致事件で、実行犯の名前が浮上したのは初めて。
辛容疑者は、80年に大阪市の調理師原敕晁(ただあき)さん(不明当時43)を宮崎市の海岸から連れ出したとして警察庁が国際手配しているほか、地村保志さん(50)夫妻の拉致事件に関与した疑いも浮上しており、警察当局は国外移送目的略取容疑で捜査する方針。
曽我さんが帰国後の04年11月ごろ、米軍のキャンプ座間に滞在していた時に、激励に訪れた横田滋さん(73)夫妻に話したという。
それによると、曽我さんと、めぐみさんの2人は工作員に拉致された後の70年代後半、北朝鮮・平壌市内の招待所で一緒に暮らしていた。辛容疑者はそこで、朝鮮語などを教える教育係だった。曽我さんは辛容疑者から直接、「横田めぐみさんを拉致したのは自分だ」と聞いた、という。
辛容疑者は、85年に韓国でスパイなどの容疑で身柄を拘束され死刑判決を受けたが、南北首脳会談の合意を受け、00年に北朝鮮に帰国した。警察庁は旅券法違反容疑などで国際手配し、北朝鮮側に身柄の引き渡しを求めているが実現していない。
めぐみさんは、中学1年生だった77年11月、バドミントンのクラブ活動を終えて帰宅途中、友だちと別れた後に行方不明となった。
北朝鮮は02年9月の日朝会談で、「めぐみさんは死亡した」と発表、後に遺骨を日本政府に引き渡したが、DNA鑑定で別人の骨だったことが判明している。
|