★北朝鮮外務省声明 「核兵器を製造」 6カ国協議「無期限中断」 ブッシュ政権に対抗 (毎日 2月11日 朝刊)
[概要]北朝鮮外務省は10日、核問題を巡る6カ国協議への参加を「無期限に中断する」と声明を発表した。また米国の敵視政策に対抗すために、「自衛ために核兵器を製造した」と明言した。今まで北朝鮮は、「核抑止力」という表現を使っていたが、「核兵器製造」という言葉は初めてだ。声明では日本に言及し、「米国に追随し、ニセ遺骨問題で日朝宣言を白紙に戻した」といい、6カ国協議から日本の排除を求めている。
[コメント]この声明の感想を一言で言えば、またしても北朝鮮の「オオカミ少年」が始まったである。私は今でも北朝鮮は1発の核兵器も保有していないと断言している。核兵器でもダーティー・ボブ(汚い爆弾)なら持っている可能性はある。しかし核分裂による熱核兵器は持っていない。ダーティーボブなら日本の大学や医療機関でも作ることができる。その程度のことなのである。
軍事原則では、ミサイルに搭載できるプルトニューム弾頭は、起爆装置の複雑・精密さから、核実験に成功しないと核兵器保有を認めない。さらにその核弾頭を運搬する手段の証明も必要である。爆撃機や自動車や列車、それに貨物船では話しにならない。核弾頭を搭載できる弾道ミサイルの発射実験が必ず必要だ。それもどこに飛んでいくのかわからないような発射実験ではだめだ。地上の一点を示し、そこに1キロ以内で命中するミサイルの実射実験である。もし海上なら、廃船を標的に狙って命中精度を証明する必要がある。世界に向かって弾道ミサイルの発射実験を成功させなければいけない。
北朝鮮のように核実験もしない、弾道ミサイル実験もしないで、核兵器保有を一方的に宣言しても、国際的な軍事常識では認められないのだ。そのことを北朝鮮は嫌というほど知っているはずだ。また北朝鮮ウォッチヤーも自分の想像だけでは、世界の軍事常識に通用しないことを自覚しないと、自らが自滅することを知る必要があるだろう。
それに北朝鮮が核武装できない理由は、中国が朝鮮半島の核武装化を支持していないからである。中国は北朝鮮の核武装に反対している。北朝鮮の殺生与奪権を持つ中国が、北朝鮮の核武装化を許すわけがない。北朝鮮が核武装すれば、韓国、日本、台湾の核武装化を誘うことになる。これを中国は絶対に許せないのである。
昨年6月に開かれた第3回6カ国協議で、出席に駄々をこねる北朝鮮に、中国は故障と称して北朝鮮に送る重油パイプラインを3日間止めた。これで震え上がった北朝鮮は、直ちに6カ国協議に参加することを表明した。北朝鮮とはその程度の国である。
北朝鮮は脅してナンボ、怖がらしてナンボの国である。北朝鮮に核兵器を持たせたくないなら「ゼニをくれ」の恐喝国家である。今回の声明は北朝鮮がウソの核武装宣言をするしか交渉カードがなくなったことを証明した出来事である。このことをコリア・ウォッチャーは忘れないで解説して欲しい。厳しい軍事の世界だけは、無知で勝手な想像で解説ができるほどいい加減な世界ではない。このことだけは肝に命じて欲しい。
---日本軍事情報センター 神浦 元彰
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★北朝鮮とミサイル防衛システムの裏側
2003年9月5日 田中 宇
北朝鮮が核兵器開発をさらに進めることは、9月3日の「最高人民会議」(国会)で決定された。この会議では「アメリカの敵視政策に対抗するため、核兵器による抑止力を維持拡大する必要がある」と決議されたと報じられている。
北朝鮮が「核武装するぞ」「したぞ」と言い続けているのは、アメリカに交渉してほしいというシグナルを送るためだという考えがある。交渉の先には、アメリカに外交関係を結ばせ、先制攻撃をしてこない状況を作り、北朝鮮の体制を存続させたいという金正日の目的がある。
アメリカでは、北朝鮮からの弾道ミサイルの到達圏内にあるとされるアラスカとカリフォルニアで、ミサイル防衛システムを稼働させる計画が進んでいるが、迎撃能力に対する疑問が多く、テスト結果も思わしくないため、ブッシュ政権はこのシステムの拡大が思うように進められずにいる。
【関連】米のミサイル防衛 迎撃実験また失敗
そのため、本国で使えないパトリオットを日本などに売り込もうとしているのではないか、とも思える。北朝鮮を「悪の枢軸」に入れたのも、そうすればミサイル防衛システムを米国内や日韓などに売り込むことができると考えてのことだったのかもしれない。
アメリカが北朝鮮に対して不可侵を宣言したら、金正日は韓国の反米派と結託して在韓米軍を追い出し、その後アメリカに邪魔されずに韓国を侵攻しようとするだろう、という予測もある。だが、金正日の目的が自分の政権を維持することだとしたら、北朝鮮がある程度自活できるようになれば、韓国への侵攻を試みる戦略はとらなくなると思われる。
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★米のミサイル防衛 迎撃実験また失敗 実戦配備遠のく
【ワシントン=近藤豊和】米国が推進するミサイル防衛(MD)を主管する米ミサイル防衛庁は十四日、アラスカ沖から発射した模擬弾道標的ミサイルを太平洋上のマーシャル諸島から発射した迎撃ミサイルで撃ち落とす実験に失敗した、と発表した。
迎撃ミサイルが発射できなかったのが原因で、地上配備型の迎撃実験の失敗は、二〇〇二年十二月と昨年十二月に続き、連続三回目。MD予算が削減傾向となるなかで実戦配備はまた遠のくことになり、議会からの厳しい反発に拍車がかかりそうだ。
ミサイル防衛庁報道官は失敗の原因について「迎撃ミサイルの地上機器の問題」と説明しているが、詳細は判明していない。
昨年十二月の実験失敗も迎撃ミサイルそのものが発射できず、ミサイル防衛庁は「コンピューターソフトの不具合で信号送信不良を起こした」などと説明し、早期実験再開に自信を示していた。
迎撃時の命中精度などの問題以前に、ミサイル発射そのものに二度も失敗したことは、MD開発が深刻な状況に置かれていることを示している。
ミサイル防衛をめぐっては、国防総省が二〇〇六会計年度の予算計画で、今後六年間に総額五十億ドルを削減する方針を明らかにしている。
〇六年度の十億ドルの削減方針については、弾道ミサイル発射の初期段階での迎撃能力を高める技術の開発費用について、米議会から「もっと基本的な技術の整備が必要」と強い反発があった結果だった。
ブッシュ政権はすでに、アラスカ州の基地に、地上配備型六基を配置するなどしているが、実際には、使用できる状況にはなく、〇四年末までの実戦配備という方針は事実上延期されている。(産経新聞)
★日本のMD計画に影響ない 米国実験失敗で大野長官
大野功統防衛庁長官は15日午前の記者会見で、米国の地上配備型迎撃ミサイルの飛行実験が失敗したことについて「日本が配備するイージス艦搭載の海上配備型迎撃ミサイル(SM3)と地対空誘導弾パトリオット(PAC3)とは違うもの(???)だ。計画に影響を与えるものではない」と述べ、日本のミサイル防衛(MD)計画には影響しないとの認識を示した。
細田博之官房長官も記者会見で「今回実験した大陸間弾道ミサイル(ICBM)は弾道が高いなど迎撃に問題や困難があるが、日本が導入するのは短距離ミサイルを迎撃するものであり、技術が確立されている」と強調した。
(共同通信)
★MDミサイルの迎撃実験に失敗について 2005年2月16日(水)
オイオイ大丈夫かである。昨日、アメリカでは地上発射型のMDミサイルの迎撃実験に失敗した。昨年12月に失敗して連続3回目の失敗である。本当はアラスカから飛来する弾道ミサイルを、太平洋上のマーシャル諸島に設置された迎撃ミサイルで実験するはずだった。確かにこれはPAC3やイージス艦搭載のSA3ミサイルとは違う。しかし弾道ミサイル迎撃という点では、MDシステムの重要な実験(※)であることは変わりない。今回の実験失敗でアメリカばかりか、日本が導入を決めたMDシステム全体の信頼性が問われることは間違いない。
それにしてもPAC2で代用させるという方針に唖然とした。PAC2は湾岸戦争(91年)でイラクのスカッドミサイルの迎撃に使われた。しかしPAC2はサウジやイスラエルで、スカッドミサイルの迎撃率が低いことを証明してしまった。当初は迎撃率が90パーセント以上と宣伝されたが、実際は25パーセントにもならなかった。約1/4の迎撃率でしかない。そこでPAC2の弾道ミサイルの迎撃率を上げるためにPAC3が開発されたという経緯がある。
主な改良は射程を伸ばしたことである。射程をPAC2の2倍にすることで、距離で2倍、高度で2倍、迎撃面積で16倍(2の3乗)になった。16倍といえばいかにも高性能に聞こえるが、単に射程を2倍に伸ばしただけの話しである。むろんミサイルの射程が伸びれば、レーダーの探知距離も伸びるので改良された。これがPAC3は目標探知能力が向上したという話しになったようだ。
ところで最も重要なPAC3の迎撃率だが、これは軍事機密として公表できないという。オイオイそれはヘンだろう。防弾チョッキを売るのに、対弾能力は言えないというのはおかしな話しだ。この防弾チョッキは拳銃弾なら大丈夫だが、軍用の自動小銃は無理ですと説明するのは最低限の責任である。
本当は信頼できる迎撃率の数字がないのではないか。PAC2も湾岸戦争で初めて弾道ミサイルを迎撃できないことを証明した。PAC3も使いものにならないという批判を避けるためには、米国防省は迎撃実験で実力を証明するしかないのである。その最も重要な迎撃実験に、昨日、米国防省は失敗した。これで信頼しろというほうが無理である。
「裸の王様」という話しを思い出して欲しい。多くの大人が騙されて、心の悪い人には見えないという王様の服を、立派とか綺麗と褒め合う場面がある。今はまさにMDがこの状態になっている。
昨日、TVに出演した前防衛庁長官が、「MDは純粋に防衛的な兵器で、攻撃できない兵器です」と力説していた。それならMDによって完璧に防護された基地から、攻撃機が飛び立てばどうなるか。またこの前防衛庁長官は、ABM条約をご存じないらしい。米ソ(露)が純防衛的な兵器を禁じた条約だ。なぜ米ソがABM条約で防衛的な兵器を禁じたか、よく勉強するといい。自分の間違いが気がつくはずだ。さらに日本のMDはイージス艦を使った海上発射(SM3)と、移動式のパトリオットPAC3(空輸が可能)である。ということは、将来は中東のカタール付近に移動・展開して、米軍の中東司令部をイスラムの弾道ミサイルから守ることができるシステムなのである。あくまでMDは専守防衛用と言うなら、固定式の地上発射ミサイルにこだわるべきだった。
さらに質問すれば、中国やロシアの弾道ミサイルに、日本のMDはどのように対処するのか。そのように考えていけば、MDは北朝鮮の脅威を悪用した詐欺である。どうしてそれを言わないのか。「王様は裸だ!」「王様は裸だ!」。
※昨日、迎撃実験に失敗したのは、地上発射で飛来する弾道ミサイルを大気圏外で迎撃する迎撃ミサイル(THAAD)です。これは終末段階高々度地域防衛システムと呼ばれています。同じシステムに大気圏内で迎撃するPAC3があります。大気圏外と大気圏内という違いがありますが、迎撃する誘導・破壊システムはほぼ同一と見て差し支えありません。
---日本軍事情報センター 神浦 元彰
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大野防衛庁長官は何をピントの外れたことを云っているのか?信じられない。海上の迎撃ミサイルであれ、パトリオットであれ、ミサイル防衛システム(MD)に組み込まれている限り、根幹の司令塔ともいうべきMDに支障が出れば、系統下部に位置するミサイルは全て機能しないことになる。肝心の迎撃ミサイルを撃ち落とせずしてMDの存在価値は皆無だ。それとも、撃ち損じた迎撃ミサイルをパトリオットなどで追い撃ちするとでも云うのだろうか。実に馬鹿げている。
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