★ウランの健康影響、冊子記述に誤り 原子力文化振興財団
財団法人「日本原子力文化振興財団」が、今年6月につくった小冊子「劣化ウラン弾による環境影響−IAEAとUNEPの報告から−」に、放射線と健康の関係について誤った記述があることが分かった。健康への影響を小さく見せる表現で、財団は内容を掲載したホームページの関係部分を訂正する。
小冊子は劣化ウランの特性や劣化ウラン弾の特徴について、国際原子力機関(IAEA)などの調査結果を紹介している。
子どもや胎児への放射線の影響について、米国の専門機関の報告として「ウランが母乳に濃縮されることもなく、胎盤を通して母胎から胎児に伝わることは非常に少なく」と記している。ところが、報告を出したのは別の組織で、原文も「ウランが母乳に濃縮するとは考えにくい。胎盤を通じて胎児に移行するかどうかは分からない」と、より慎重な表現だった。
また、放射線と白血病との関係を「世界には、日本人より10倍以上も高い環境放射線量で暮らす人々もいるが、放射線によって白血病などが増えたという事実もない」と断定している。
広島大学原爆放射線医科学研究所の木村昭郎教授(血液内科)は「低線量の放射線と白血病の関係を疫学的に明らかにするのは大変難しい。これまでに疫学的にそれを証明した報告はない」と指摘する。
横手光洋常務理事は「学術論文のように一言一句、正確性を吟味した文章ではない。『白血病が増えたという事実は報告されていない』とした方が正確だった」と話した。母乳と胎盤の部分については「妥当な表現と考えた」としながらも、訂正を検討するという。
小冊子は、米軍が湾岸戦争やイラク戦争で使用し、イラク市民らの病気の原因ではないかとも指摘される劣化ウラン弾について「正しい情報を提供するため」、2月に開いた特殊法人「日本原子力研究所」幹部の講演や資料をもとに、財団の担当者が書いた。A4判10ページ。780部を報道機関や企業などに配った。
ただただ呆れるばかりだ。国民を愚弄するにもほどがある。原子力文化振興財団の云うことを真に受ければ「ウランは健康に良い」とまで考えても不思議はないほどだ。事実彼らは「健康肌着」と称して放射性物質を織り込んだ肌着を売ろうとした前科がある。
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★ゾルゲと尾崎、淡々と最期 古書店で処刑記録見つかる
太平洋戦争を前に、日本やドイツ政府の政治、軍事の機密情報をソ連に伝えたゾルゲ事件で、死刑となったドイツ人新聞記者リヒアルト・ゾルゲと、ジャーナリスト尾崎秀実(ほつみ)の処刑記録が見つかった。取り乱すことなく死に臨む2人の姿が記されていた。国内最大のスパイ事件として知られ、様々に語られ描かれてきた2人の最期の様子が、初めて公文書で明らかになった。
社会運動史を研究する渡部富哉さん(東京都三鷹市)が今年8月、東京・神田の古書店で、連合国軍総司令部(GHQ)が作成したゾルゲ事件の調査報告書を発見。その中に、「市谷刑務所」と印刷された用紙に記された処刑記録を写した写真が含まれていた。
国防保安法違反、治安維持法違反などの罪名が列記された後に、処刑の宣告と執行の様子が記録されていた。ゾルゲについては「静カニ教誨師(きょうかいし)始メ職員ニ対シ『皆様御親切有難フ』ヲ繰返シツツ何等取乱シタル態度無ク刑場ニ進ミ」など、尾崎は「香ヲ焼キ閉目シツツ心ヨリ敬礼ヲナシ終リニ職員ニ謝礼シ取乱シタル態度ナク刑場ニ入リ南無阿弥陀仏ヲ二唱シ」などと記されていた。
2人は41年10月に逮捕され、44年11月7日に処刑された。だが米軍内には、日本がソ連に中立を守らせる取引材料として、「ゾルゲをひそかに生かしている」との見方があったとされる。
今回発見されたのは、GHQ内の情報部門が行ったゾルゲ事件の調査報告書で、47年8月5日の日付がある。処刑記録の写真は2人の処刑を確認する証拠として添えられたもので、「33〜45年の市谷刑務所と東京拘置所における死刑執行の記録からの抜粋」と英語で説明がついていた。
記録を見つけた渡部さんは「処刑から60年、様々に描かれてきた2人の最期が、冷静で落ち着いたものだったことがよく分かった。この記録と照合すると、51年のドイツ雑誌の特集記事が最も正確で、日本政府がドイツに伝えていたことが考えられる」と話している。
GHQ報告書は93ページあり翻訳中。内容は11月6日午後1時から杉野学園第4校舎(東京都品川区上大崎4の6の19)で開かれる講演会「現代の情報戦とゾルゲ事件」で明らかにされる。
(10/17 15:53)
●「日々雑感」1992年2月23日の日誌
篠田正浩(1931-)監督がスパイ・ゾルゲの映画をつくるそうだ。リヒャルト・ゾルゲ(Sorge,Richard)はドイツ人の父とロシア人の母の間に生まれ、ドイツで教育を受けながら子どもの頃からロシア語を母から習うといった特異な環境で育っている。のち、英語、フランス語、中国語、日本語といった各国の言葉を習得する語学の達人でもあった。当然ながらゾルゲは特高の監視下に置かれ、ゾルゲもまたそれを承知で細心かつ大胆に危ない綱渡りを演じていた。特高はキヨミという女性スパイを使ってゾルゲに罠を仕掛けているが、ゾルゲもまたその罠を見抜きながら自ら罠に嵌っていった節がある。数日前に尾崎秀実が逮捕されたという事実を知りながら、ゾルゲはキヨミと自宅に篭ったまま逮捕されるに至る。逃げようと思えば逃げられたはずのゾルゲが、何故逃げなかったのか・・・
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Sorge Richard |
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尾崎秀実 |
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★『弟の死』 ラファ・トゥディ(“Rafah Today”)より
ムハンマド
2003年10月27日 (ナブルス通信 2003.10.31配信による)
心のない世界。大多数の人は感情を失っている。人間の意味を忘れ去っている。価値も規範も、もうどこにもない。僕の弟は、世界が沈黙しているさなか、冷酷に殺された。
弟のフッサームは17歳、高校生だった。フッサームは、とにかく家から出てどこか安全な場所を見つけようとした。家から出た途端、悪意に満ちた7発の銃弾が襲いかかった(年端もいかない子供たちを銃撃するイスラエルを支援している国々の銃弾……フッサームが受けた銃弾はすべてアメリカ製だった。イスラエル兵が銃弾をフッサームに撃ち込んだ時、33歳の女性が、フッサームを助けて病院に運ぼうと走り寄った。だが、イスラエル兵は、そんな彼女にも銃弾を浴びせた。こうして、ふたりとも地面に倒れた。
妻を助けようと駆け出したウェダードも、首と全身に銃弾を受けて、現在、病院にいるが、危険な状態が続いている。さらに、母親を助けようとした息子も撃たれ、病院にいる。そして、みんなを助けようとしたウェダードの弟もまたイスラエル軍の銃弾を浴びた。5人が次々と倒れていった。地面は真っ赤に染まった。誰かが助けてくれと叫んだものの、あたりは激しい砲撃音でいっぱいで、誰の耳にも助けを求める声は届かない。F16戦闘機やアパッチ攻撃ヘリまでもが攻撃に加わっていた。イスラエル兵は救急車の運転手にも銃弾を浴びせ、結局、運び込むことができたのは、長い長い時間がたってからのことだった。
僕は、自分が心の底から憎んでいるものが何か、わかりかけてきた。
どうして、彼女がイスラエル軍に殺されなければならなかったのか。4人の子供を残して──ひとりはまだ赤ん坊だというのに。僕の弟は悪意に満ちた7発の銃弾で殺された。なぜだ? 何千本もの樹が根こぎにされた。何百軒もの家が破壊された。なぜなんだ?
イスラエル兵の全員が、たくさんの家を壊し、できるだけ大勢の人を殺してやろうとしていた。この事態を知っている人が、いったいどこにいるというのだろう?
いったいどこに、僕たちのことを気にかけてくれる人がいるというのか?パレスチナに人権はないのか? 疑問は果てしなく湧き上がってくるけれど、本当に必要な答えは、この世界には見つからない。強者が弱者を食らうこの世界、本物のジャングルにいるも同然のこの世界には……。指は悔やみの言葉をつづっていても、口ではありとあらゆる弔意と追悼の言葉を並べ立てていても、結局のところ、その手は、数え切れないほどのF16とF15とブルドーザーと戦車でこの侵攻を行なったイスラエルを支えているのだ。これが、調停者(ピースメーカー)たちの言う正義なのか!?
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なぜなんだ?ムハマンドの問いに涙するだけの私が、今度は自分に問いかけている。なぜ?なぜなんだ?・・・せめて私に出来ること、平和への祈り、真実を知り伝え続けること、そんな思いにムハマンドの言葉が追い討ちをかける・・・ピースメーカーたちの言う正義は、結局のところイスラエルを支えているのだ・・・と。
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