<チェチェン>独立派、大統領暗殺爆弾テロ関与を否定
【モスクワ町田幸彦】ロシア南部チェチェン共和国グロズヌイで9日起きた爆弾テロ事件に関連して、独立派武装勢力系ネット通信社チェチェンプレスは10日、事件関与を否定する独立派指導者マスハドフ氏の声明文を報じた。声明文は「このテロ事件は占領軍特殊部隊(ロシア軍)が組織した」として、ロシア当局による犯行と主張している。
マスハドフ氏は声明で「我々はあらゆる形のテロリズムを非難する」と述べ、9日の爆弾テロ事件の犠牲者と遺族に哀悼の意を表明した。この爆弾テロで親ロシア派カディロフ大統領暗殺に絡む「ロシア当局犯行説」の理由として、「見せかけの政治(正常化)手続きをやり終えたかいらい政権を清算した」と同氏は指摘した。
一方、独立派武装勢力の中で最も過激的なバサーエフ司令官はこれまで別のテロ事件で犯行声明を出したことがあるが、9日以降、動向が不明なままだ。(毎日新聞)
 |
 |
カディーロフ大統領の葬儀に列席する息子ラムザン(Ramzan
Kadyrov) |
カディーロフ大統領の後を引き継いだSergei
Abramov首相 |
■カディーロフの死を巡って
2004.05.10 岡田一男/映像作家
●打ち砕かれたフィクション
5月7日の、プーチン・ロシア連邦大統領就任式を控えたロシアでは、今年に入ってからの激しい戦闘を無視して、楽天的なチェチェン戦争終結の見通しが流され、あたかもマスハードフ・チェチェン共和国大統領自身が、進退窮まって投降を選ぶかのごとき噂が、さかんに報じられてきた。しかしこれらの虚構が、5月9日の「ロシア戦勝記念日」という象徴的な日に打ち砕かれた。公式報道では傀儡のカディーロフ大統領とイサーエフ国家評議会議長、ロイター通信社ハサーノフ記者、それと巻き添えになった8歳の女児が死亡したとされているが、チェチェン独立派公式サイト「チェチェンプレス」によると、親ロシア政権の高官達ほぼ全員が爆発に巻き込まれ、壊滅状態となった。
この事件は象徴的ではあるが、突出した事件ではない。4月6日には、隣国イングーシ共和国のジャジコフ大統領の乗った装甲ベンツがナズラニから隣接する首都マガスへの路上でロシア製乗用車を追い抜いた瞬間、その乗用車が自爆し、破片が150m四方に飛び散る事件があった。ジャジコフは軽傷で済んだが、数日後、シャミル・バサーエフが、「殉教者大隊リヤドス・シャリヒーン」の司令官として、自らの責任で行われた作戦と声明した。そして、イングーシ政府が親ロシア政策を撤回しない場合は、再度攻撃し、チェチェンのカディーロフにもそれが及ぶとを予告していた。
●激化していたゲリラ戦
「チェチェンプレス」は毎週末に週間戦闘概況を掲載しているが、冬の間もロシア側の戦死者数を50−70人とし、絶え間なく戦闘があったことを示唆していた。春にはいると週間戦死者数は100人を超し、4月下旬には170人と報じるまでになった。この数字はロシア側の報道とあまりにもかけ離れており、信用性に疑問もあるのだが、現地通信員を持つAP通信や、ラジオ・リバティーなども、ロシア側の大被害を報じており、全く根拠のないものとは考えられない。報復としてロシア合同軍は、遠距離からの砲撃と空からの爆撃を頻繁に行い、一般住民に大きな被害を強いている。その中で、チェチェン軍東部戦線司令官を務めるアラブ義勇兵、アブ・ワリドが死亡した。
これまでの多くの「戦闘」は、ロシア軍の車列を待ち受け、無線遠隔操作地雷で先頭車両を爆破し、場合によっては対戦車ロケットランチャーでだめ押しするなどの待ち伏せ攻撃が主だったが、4月には、ロシア軍ないしカディロフ派民警特別部隊(OMON)が防御陣地をかまえる平原部の集落にも独立派の攻撃が繰り返されるようになり、12日にはグローズヌイにつぐグデルメスなどの町の奥深くに進入して対ロシア協力者狩りを行った。5月1日には、ツェントロイ村のカディーロフの邸宅が攻撃された。ツェントロイは、カディロフにとって、ここだけは絶対安全と言われていた、血族の村であるにもかかわらず。
チェチェンなど北コーカサスに展開する、連邦側の合同軍およびカディーロフ派民警特別部隊は、プーチンの就任式にマスハードフの首を捧げようと血眼になる一方、マスハードフは側近を次々と失い丸裸の状態で、甥一人を連れて山中を逃げ回っていると報道してきた。だが、本当にそうだったのだろうか?独立派政府の国家ラジオテレビ委員会は、マスハドフ大統領の春夏大攻勢開始宣言のビデオをチェチェン山麓部のローカルテレビ局に持ち込み、放映させた。マスハードフは、その演説の中で、カディーロフ派要員の戦線離脱と独立派へ
の帰順をよびかけ、今年こそロシア軍をチェチェン国外へ叩き出す年だとぶちあげた。
●傀儡を継ぐのは誰か
プーチンの対コーカサス政策は、カディーロフの死を持って挫折した。チェチェンで血なまぐさい民衆弾圧をやって恐れられていたカディーロフの次男ラムザンは、戦勝記念日のこの日、なぜかモスクワにいた。モスクワのテレビ放送は、ラムザンに弔意を伝え、復讐を誓うプーチンとのツー・ショット映像を流した。日本でもこのシーンは報じられたので、ご覧になった方は多いであろう。ラムザンの表情は、まったく生気がなかった。しかし、驚かされたのは彼の着衣がスポーツウェアだったことだ。プーチンは2日前に再任式を済ませた国家元首である。ロシアは服制には寛容な国だが、これは異常である。ラムザンは病室から寝間着のままでクレムリンに飛んできたのだろうか? 実は先週ラムザンは、口論から部下に撃たれ、治療のためモスクワへ送られたとも、死亡したとも伝えられ、ロシア側が必死で否定していたのだ。
一部のロシアマスコミは、カディロフについでロシアの傀儡となる候補人物を早くも論じ始めている。一人は、元グローズヌイ市長で、途方もないチェチェン復興資金着服により、モスクワで逮捕収監されていたのをロシア軍に救い出されたガンタミーロフ・親ロシア政府情報相(1963年生まれ)。チェチェン選出の元ロシア連邦下院議員アスラハーノフ将軍(1942年生まれ) - 彼はプーチンに妥協してコーカサス問題大統領顧問となった人物。ガンタミーロフと較べれば人格的にははるかにましな人物だが... そして、3人目には息子のラムザン・カディーロフが、後継者争いに加わってくるだろうという予想もある。しかし、これらの誰が、プーチンのお眼鏡にかかろうと一般チェチェン人民衆から支持されることはありえない。
●暴力の連鎖を断たなければならない
しかし、大きな問題は独立派の内部にも存在する。「血の復讐」を不文律(アダート)としていまも保持する人々の間では、このような暴力の応酬も一定の理解を得られるだろうが、外部世界の支持や理解を得られるものではない。カタールにおけるロシア特務機関員のヤンダルビーエフ(前大統領)爆殺を非難しつつ、ジャジコフへの襲撃やカディーロフの爆殺に快哉を叫ぶような風潮は、世界の広範な支持を集められる訳はないのである。
チェチェンとロシアの人口比は、200倍以上にもなる。まさに「巨悪」そのものであるロシアの現代植民地主義と対抗するには、軍事力による対峙ではなく、モラルの面で全世界がロシアを包囲し、身動きできなくさせるしかない。チェチェン独立派に求められるのは、民族自決の要求が、普遍的な社会正義に立脚しているという自覚だけではなく、その実現に向けて、道徳性に裏付けられた行動を取ることだ。暴力の連鎖が、早急に断ち切られなくてはならない時に来ていると感じるのは、何も筆者だけではないだろう。
-----------------------------------------------
今回のカディーロフ大統領爆破事件では二年前のモスクワ劇場占拠事件を想起させてくれた。私も当時のことを詳細に追っていたが、半年後にようやく全体の構図を理解したものだ。
【参照】
★2003年5月15日の日誌から「モスクワ占拠事件の相関図」
★2002年10月25-27-28-31日の日誌からモスクワ占拠事件勃発の記録(文中リンク切れ有り)
【私的めもらんだむ】
この5月に多発しているらしい架空請求ハガキ、私んとこにも今日届いた。「電子消費者契約通信未納利用料請求最終督促状」というやつ、購入したはずの商品名も、代金も記載されていない。買った覚えがないのだから当たり前だが、腹が立つッたらありゃしない。思わず記載されている宛先に電話して怒鳴りつけようと思ったが、それこそ向こうの思う壺、と思い直して無視することにした。悪質な詐欺だ。一連の個人情報漏洩事件の波及であろう。まだまだこの類いの詐欺は増えそうである。ハガキを受け取った当初は怒り心頭に達したが、いま少し落ち着いた。血圧上がった分、損した。
【関連サイト】
★「夢なら」架空請求事業者データベース - 検索結果
★
私の家にも同じハガキが届きましたよ!
|