中国空軍が新たに改良して実戦配備し、今年八月以降、複数回にわたり東シナ海の日中中間線付近や南西諸島方面での活動が航空自衛隊によって確認されている電子戦機「Y8EW」の機体写真がインターネット上のウェブサイトで初めて公開されていることが分かり、防衛庁で確認と分析を急いでいる。
機体写真を公開したのは、英国に本拠を置く「サイノ・ディフェンス・コム」が運営するサイト「チャイナ・ディフェンス・トゥデー」。
十二月四日に公開された写真では、機体の上部、下部などに複数の突起物状の電子機器が装備されている。同サイトは「電子情報収集やレーダー、交信を攪乱(かくらん)する装置を装備しているとみられる」と分析。さらに、装備されているハイテク機器について「二〇〇一年四月一日に南シナ海上空を偵察飛行中に中国軍機と空中接触し、中国の海南島に緊急着陸した米海軍電子偵察機EP3から流出した技術によるもの、との未確認情報もある」と指摘している。
Y8EW電子戦機は、今年八月以降、南西諸島方面や日中中間線付近に複数回飛来、日本の防空識別圏(ADIZ)内に侵入を繰り返し、空自の要撃戦闘機が緊急発進(スクランブル)して対処している。空自もすでにY8EW機の機体写真をスクランブル機から撮影しているが、一切公表していない。防衛庁では公開された写真と空自撮影の写真との比較検討や分析などを始めている。
中国軍機の東シナ海での活動は活発化しており、今年四月から九月までの半年間に中国軍機に対して空自が実施したスクランブルは三十回に上る。十月、十一月にも複数回スクランブルを実施しており、国別対象機の統計を取り始めた平成七年度以降、過去最高を記録している。
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■攻撃・防衛一体型へ
中国空軍は、従来の「国土防衛型」から「攻撃・防衛一体型」への転換を目指し一九九五年から本格的な中長期の近代化に着手し、新鋭の第四世代戦闘機であるロシアのSU27のライセンス生産も九八年から開始、空軍力でも周辺国の脅威となると予測されてきた。
防衛庁では近代化のペースは当初の予想よりやや遅れているものの、SU27に加えて開発中とされるJ10戦闘機、さらに早期警戒管制機や空中給油機なども整備され「戦闘機の機数、能力、パイロットの技量などではまだまだロシアに及ばないものの、中国空軍は着実に増強されており、近い将来に名実ともに近代空軍となる」との見方を示している。
日本周辺では偵察機や情報収集機の活動が頻繁になっているものの、中央指揮システムやレーダーサイトなどの能力がまだ不十分なため戦闘機については、「外洋までの進出作戦を実施するまでには至っていない」(航空自衛隊幹部)と分析。
航空自衛隊が実施する緊急発進(スクランブル)でも、これまでのところ中国軍の第四世代の戦闘機は確認されていない。
(産経新聞) |