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★マーゼンのために A Moment for Mazen
寺畑由美 Yumi Terahata
2004年9月4日 ─ナブルス通信2004.9.8号による─
夜10時半ごろ、マーゼンは家の前に座っていた。家の戸は鉄の壁と反対の方向に向いている。その夜も、イスラエル軍のブルドーザーが近くにいた。みなそれに気づいていたが、ここではブルドーザーが近くにいることは決して珍しくないから、いつも通りの生活を続けていた。外は真っ暗で、ブルドーザーがどこにあるのか、いったい何台あるのか、誰にも分からなかった。でも比較的静かな夜で、誰も特に心配はしていなかった。
マーゼンの母は戸口から顔をのぞかせて、マーゼンに家に入るように言った。「もう遅いし、学校もそろそろ始まるから、身体がまた早起きに慣れるためにも早く休んだ方がいいわよ。」マーゼンは、まだ眠くないよ、と返事した後、「ブルドーザーがいなくなったか見てくる」と言って立ち上がり、家の角から何か見えるか見に行った。すると突然、銃声が鳴った。母親は慌てて外に出て、目でマーゼンの姿を追うと、地面にうつ伏せになっている彼の姿が見えた。銃撃から身を守るために地面に伏せているんだ、と思っていたが、何度呼びかけても反応を示さない。そこで母親は何かが起きたことに気づいた。銃声が続く中、彼女はなんとか家の中にマーゼンを引きずってきた。家の中も真っ暗だったが、マーゼンの首に大きな傷があるのがわかった。誰かが呼んだ救急車は危険すぎて家に近寄ることができず、救急隊員がやっとマーゼンを運び出せたころには、彼が死んでから数時間が経っていた。
暗すぎてマーゼンの母や家族には見えなかったが、病院の検屍ではマーゼンが胸やお腹に18発以上の銃弾を受けていたことが確認されている。その多くの銃弾はそのまま彼の背中を突き抜けていたという。
遠距離から発射された銃弾は人間の体内に引っかかってしまう。だから、銃弾はかなりの至近距離で発射されなければ、体を突き抜けることがない。警告射撃もなかった。ゴム弾も使われなかった。医者によると、首に受けた大きな傷が動脈を切断し、それが死因だった。この異常に大きな傷口は多分「爆発」弾によるものだという(この特殊な銃弾は接触時に破裂するように出来ていて、ラファではイスラエル軍がよく使っている)。
記事には彼の年齢さえ正しく書かれていなかった。マーゼンは15才。私は知っている。一緒に誕生日を祝ったから。
【詳細】
★イスラエルがガザ地区のハマス訓練拠点を砲撃、14人死亡
[ガザ 7日 ロイター] 目撃者や医療関係者によると、イスラエル軍は7日、戦車や武装ヘリコプター、軍用機などでガザ地区のイスラム原理主義組織「ハマス」の訓練拠点を攻撃した。この攻撃で武装組織メンバー14人が死亡、20人以上が負傷した。
戦車は、イスラエルとガザの境界付近から、ハマスが活動拠点としている町シジャイヤの郊外に向けて砲弾を撃ち込んだ。ハマスは、先週イスラエル南部で16人の死者を出した同時自爆攻撃に関与した。
目撃者によると、イスラエルとパレスチナ武装勢力の間で交戦があった後、ハマス訓練施設で砲弾がさく裂した。医療関係者によると、死亡者は全員がハマスのメンバーだが、負傷者には市民も含まれる。
イスラエル軍は、現時点ではコメントを発表していない。イスラエルの指導者らは、先週の同時自爆攻撃を受け、報復を宣言していた。
【私的めもらんだむ】
▼8時
パレスチナの15歳の少年、マーゼンの体を貫いたのは被弾直後に体内で爆発する弾丸だった。これで思い出されるのがケネディ大統領の頭部を吹き飛ばしたダムダム弾だ。弾丸の先端に予め傷を入れると、被弾直後に破裂するのだ。マーゼンを撃ったイスラエル兵は明らかに殺意があったことだろう。せめてゴム弾であったなら、マーゼンは命だけは助かる余地が残されていたはずだ。しかし、ゴム弾であったにせよ、彼らは頭部を狙っては致命傷を与えることが多い。1ミリ程度の薄い膜で覆われただけの鉄玉は、容易に頭蓋骨を陥没させることが出来る。これまでにも、多くのパレスチナの子供たちがそのために死んでいる。
ロシアでは何百人という子供たちが体育館ごと吹き飛ばされ、アジアやアフリカの紛争国では地雷が子供たちの手足を、その未来を吹き飛ばしている。これら狂気の沙汰が大人世界では必要悪とされ、罪悪感などサラサラ無い偽りの平和が続いている。そのようにしても生きられる人間とは何なのだろう?
【視聴予定】
21時
21:54-23:10 報道ステーション ”皆さまのNHK”はどこへ?制作費流用…カラ出張…受信料着服相次ぐ不正の背景&今日参考人招致…海老沢体制の実像 テレビ朝日
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