2002/7/31-日本の原発動向
衆院事務局出向中に便宜=経産省外局課長補佐、1千万受領−業者に売り込み先紹介
経済産業省外局の原子力安全・保安院新型炉規制課の課長補佐(45)をめぐる収賄疑惑で、課長補佐が衆議院事務局の科学技術調査室に出向中の1998年、親しくしていた業者に職務上知り得た情報を提供し、見返りに現金を受け取っていた疑いの強いことが31日明らかになった。課長補佐は警視庁捜査2課の任意の事情聴取に対しこうした事実を認めており、同課は贈収賄容疑で詰めの捜査を急ぐ。
調べによると、課長補佐は衆院科学技術調査室(現・文部科学調査室)に出向中の98年ごろから、職務上知り得た情報を基に、知り合いの情報処理会社に同社の商品を購入しそうな有力販売先を紹介。見返りに現金約1000万円を受け取った疑い。 (時事通信)
原爆体験を語りつぐつどい 投下直後の広島で救援活動した加藤さんの話聴く/島根
原子爆弾の被害の悲惨さと平和の尊さを考える「原爆体験を語りつぐつどい」が、松江市岡本町の秋鹿公民館で開かれ、投下直後に広島で救援活動をした松江市在住の加藤花子さん(75)が体験を語った。
山口を拠点に全国で公演活動を続ける劇団はぐるま座が、8月に原爆をテーマにした劇を上演する際に、市立秋鹿小の6年生児童が、原爆をテーマにした詩を朗読することになり、その公開練習に合わせて子どもたちも参加した。
見習い看護婦だった加藤さんは投下直後に広島入りし被ばく。必死で水を求める市民や、熱線で骨組みだけになった市電など、街の惨状を話した。
「『お母さん助けて』といううめき声を上げていた人々の姿が忘れられず、今も(原爆が)憎くて憎くて仕方ありません」という加藤さんの話に、児童らは真剣なまなざしで耳を傾けていた。
◆原爆テーマにはぐるま座公演
公演は、8月8日午後6時半、松江市の県民会館のほか、2日益田市▽4日湖陵町▽5日木次町▽7日出雲市▽9日安来市▽11日加茂町▽16日羽須美村▽17日横田町▽18日浜田市▽19日平田市でも行う。問い合わせは、はぐるま座島根事務所(0853・21・6623)。 【高田房二郎】(毎日新聞)
原子力保安院の課長補佐を収賄容疑で捜査へ
経済産業省の外局である原子力安全・保安院の課長補佐(45)が、借金約1300万円を、茨城県つくば市の環境機器メーカーの社長(52)に肩代わりしてもらっていたことがわかった。肩代わりは今年春まで約2年半続き、この間、課長補佐は、原子力発電所に絡むビジネスへの参入を目指す社長に、原発施設の廃水処理をめぐる研究を進めるよう助言したり関係者を紹介するなどしていた。警視庁捜査2課は、借金の肩代わりがわいろにあたると判断し、近く、贈収賄容疑で強制捜査に乗り出す方針。
この課長補佐は、同保安院新型炉等規制課で審査班長を務め、新型転換炉「ふげん」の設計、工事の認可などを担当している。
関係者によると、課長補佐と社長は、課長補佐が衆議院科学技術調査室に出向していた1998年ごろ、共通の知人を通じて知り合った。課長補佐はこのころ飲食代などで借金を負っていたため、返済にあてる資金として社長に融資を申し入れた。
社長はこれを受け入れ、99年夏ごろから今年春までに、「借用書」を受け取ったうえで、毎月数十万円を振り込み送金するなどの方法で計1300万円を課長補佐に融資した。課長補佐は利子分の百数十万円だけは返済しているものの大半は未返済で、捜査2課は実質的には資金提供だったとみている。
一方、課長補佐は、知り合った当時から、社長が原子力発電所に絡んで事業を展開することを望んでいたことを知っていた。このため課長補佐は昨年春ごろ、原子力発電所の廃水処理対策が省内で課題となっていることを明かした上で、この対策法を研究するよう社長に助言していた。
課長補佐は81年に科学技術庁(現・文部科学省)に国家公務員2種職員として入庁。98年7月から一昨年12月までは、衆議院科学技術調査室に出向し、昨年1月から現職。(読売新聞)
高ベータ・ガンマ施設の調査、10月に−−日本原燃 /青森
日本原燃(本社・青森市)が六ケ所村の濃縮・埋設事業所敷地内に計画している高ベータ・ガンマ廃棄物埋設施設について、同社の佐々木正社長は30日の記者会見で、10月にも建設に向けて本格調査したい考えを明らかにした。調査は3年程度かかる見通しだ。
高ベータ・ガンマ廃棄物は原子炉の解体で生じた炉内廃棄物などで、通常の低レベル廃棄物よりやや放射能濃度が高い。六ケ所村議会では「低レベル廃棄物に分類していいのか」という疑問の声もあるが、原燃は昨年7月から1年間かけて予備調査を実施し、「設置に問題となるようなデータはなかった」との結果を出している。
佐々木社長は今月下旬に電気事業連合会から文書で本格調査を開始するよう要請があったことも明かした。【亀井宏昭】(毎日新聞)
<贈収賄>原子力安全・保安院職員に現金 つくば市内の産廃業者
経済産業省原子力安全・保安院の課長補佐(45)が98年5月ごろから約4年間、茨城県つくば市の産業廃棄物処理会社の元役員(51)ら2人から約2300万円の資金提供を受けていたことが31日、関係者の話で分かった。提供された金は、補佐の借金返済に充てられたという。警視庁捜査2課もこの事実を把握しており、贈収賄事件の強制捜査を視野に、近く関係者の取り調べに乗り出す構えだ。
資金提供を受けていたのは、原子力安全・保安院新型炉等規制課課長補佐の男性。同課は、核燃料サイクル開発機構の新型転換炉「ふげん」と高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の安全審査を行っている。
関係者によると補佐は、資源エネルギー庁公益事業部原子力発電安全企画審査課の安全審査官だった98年5月ごろから、つくば市の産業廃棄物処理会社の元役員(39)から約1000万円、別の元役員(51)から約1300万円の計約2300万円を受け取ったとされる。元役員2人は、それぞれ時期をずらして資金を提供していたという。
2人が資金提供をした時期、同社は原子力施設建設に伴う産業廃棄物処理などへの参入を図っていたといい、補佐の関係機関への橋渡しなどの影響力を期待していたとみられる。
これまでの調べに対し、補佐は「資金提供を受けていたのは事実だが、職務に関して不正なことはしていない」などと供述しているとされる。元役員らも「友人に対する援助だった」などと話しているという。
補佐は81年、旧科学技術庁に入庁。96年5月から資源エネルギー庁に出向した後、98年7月、衆議院科学技術調査室調査員に転じ、01年から、経産省原子力安全・保安院に出向していた。
国の原子力行政を担う中枢機関を舞台に、贈収賄疑惑が浮上した。約2300万円の資金提供を受けていた原子力安全・保安院課長補佐(45)は、長く原子力畑を歩み、原子力関連施設の安全審査を担当していた。不況下にもかかわらず、参入すればほぼ安定した業績を上げられると言われる原子力産業。新規参入を目指す業者が、課長補佐の「口利き」に期待して、借金の立て替えまでしていた背景に何があったのか。
業界団体の「日本原子力産業会議」情報調査本部などによると、原子力業界の市場規模は約2兆円。売り上げのある会社は、火力・水力発電所などのプラントを建設する大手メーカーをはじめ、下請けの部品、メンテナンス、燃料業者まで含めれば約500社あり、東芝や日立など大手メーカーが売り上げの大半を占める。
実際、補修に必要な細かな部品の納入に至るまで、本体工事を受注したメーカーの系列業者で占められる「グループ分け」が徹底されており、原子力関連施設への新規参入は「通常は非常に難しいはず」(NPO法人「原子力資料情報室」伴英幸事務局長)という。ところが、業者が狙ったのは、原発関連施設でも環境浄化事業や産業廃棄物処理という「すき間」的な分野だった。
同産業会議の中尾克巳主任も「原発建設が今後はそれほど見込めない中で、これからの成長分野は稼働中のものと運転中止した発電所の保守・メンテナンスと産廃処理部門だろう」と認める。
また、ある原発関連産業関係者は「安定収入が得られる構造を当て込んで、新規参入を目指そうとする業者が6、7年前から多い。原発産業はすそ野が広く、新規参入を狙う業者は地方議員などに働きかけるなどして、大手が参入しない『すき間産業』を狙っている」と明かした。
電力業界の自由化に伴い、部品の調達コストを削減するため、ここ数年、電力会社は部品の納入業者に海外の業者を含めるなど枠を広げる傾向がみられるという。伴事務局長は「こうした諸々の状況が、今回の贈収賄疑惑の背景にあるのでは」と指摘する。
原子力安全・保安院
通産省が所管していた商業用原発と科学技術庁所管の開発段階の原子炉などの安全規制部門を一元的に担当するセクション。01年の中央省庁再編に伴い、新設された。原子力関連施設の安全審査や指導を担当し、事故の際の情報収集を行い、政府の原子力災害対策本部と連携し、避難誘導などを行う。(毎日新聞)
原発立地特措法 9月の地域指定困難/県と地元 調整遅れ/振興計画策定に影響も
原子力発電所立地地域振興に関する特別措置法(特措法)の地域指定をめぐって、県と原発立地地域の調整がつかず、県が目指す9月の原子力立地会議での指定が厳しい状況となってきた。実質的な国の事前審査となる省庁ヒアリングに、本県は指定地域が固まっていないため参加できなかった。広域的な指定を掲げる県と双葉郡を主張する原発立地地域の間の意識のズレは大きく、このままでは振興計画づくりへの影響も懸念される。
県は2月定例県議会の代表質問で「14年秋に予定されている原子力立地会議での地域指定を目指す」と表明。6月中旬には、浜通りと都路村をエリアとする方向で検討していることを原発立地町の首長らに伝えた。これに対して、双葉地方町村会などは「双葉地方」に地域を限定するよう要望している。
特措法を所管する経済産業省資源エネルギー庁は次の原子力立地会議を9月に予定している。県は、地元との調整が進んでいないため、資源エネルギー庁には広域的な指定の考え方を伝えるだけにとどめ、詳細な説明は行っていない。今月26日には、9月の地域指定を目指す大阪府と石川、静岡、佐賀の3県による関係省庁へのヒアリングが行われたが、本県は参加できなかった。
ヒアリングは、指定を目指す自治体が想定するエリアが特措法の要件となる自然的、社会的、経済的な一体性があることをアピールする場。ヒアリングで了解が得られれば実質的には対象地域がほぼ固まるという。
ヒヤリングに参加できなかったことについて県は「地元の調整が残っている。地域指定に向けた作業が遅れていることは否めない」(企画調整部)としながらも「9月に地域指定が得られるよう努力する」(同)との姿勢を崩していない。
しかし、広域エリアを掲げる県に対して双葉郡のある首長は「双葉地方をエリアとして秋に指定を受けてほしい」と、あくまで双葉地方を主張。一方、地元選出国会議員の中には議員立法として成立した特措法を十分に活用すべきとの意見もあり、調整をさらに難しくしているとみられる。
原子力立地会議に申請する前提となる地元との調整は見通しがついておらず、1、2カ月後に迫った原子力立地会議までに折り合いをつけるのは厳しい状況になっている。
原子力立地会議は通常、春と秋の2回開催されるため、今回の指定を見送ると地域指定は半年遅れとなる可能性が高い。地域指定が遅れることになれば、その後の振興計画の策定にも影響を及ぼし、特措法の補助金のかさ上げなどの地域振興策の足踏みにもつながる。