2002/7/30-日本の原発動向
川内原発周辺の放射量、県HPにリアルタイムで公開 /鹿児島
県は、九州電力川内原子力発電所(川内市)周辺で実施している環境放射線の測定データについて、県のホームページで即時公開を始めた。
県は、川内原発の運転開始前の81年から、川内原発の約10キロ以内を中心に空間放射線量を測定している。現在、九州電力の測定地点とあわせ、計28の測定地点から、2分ごとに、データが川内市の県川内環境監視センターなどに送られ、24時間監視している。
ホームページではこの測定データと、同様に24時間監視している原発の排気筒モニター(4カ所)と放水口モニター(1カ所)の放射線量のデータを、リアルタイムで見られる。また、各測定地点ごとに、過去24時間の測定値の変動を示すグラフも見られる。
また、県はこのほど、川内原発周辺で、02年1〜3月に実施した環境放射線調査と、01年1月〜02年3月に実施した温排水影響調査の結果を発表した。いずれも「過去の調査結果と同じ程度で、異常は認められなかった」としている。【須藤孝】(毎日新聞)
[原爆症集団申請・被爆者の訴え]/下 ずさんな認定作業 /熊本
◇「問いたい、国の姿勢」−−数分間の審査で結論
長崎で被爆した木下安行さん(74)=熊本市美登里町=は、爆心地から1・1キロの兵器工場で被爆した近距離被爆者(2キロ以内)だが、原爆症認定申請は却下された。
「却下の理由の記載がなく、どういう審査をして、なぜ却下されたのか分からない。納得がいかなかった」
徴用で熊本から長崎に来ていた。1945年8月9日、空襲警報が解除され、工場で仕事を再開して間もなく、ごう音が響いた。思わず床にふせた体に高い天井からガラス片が降ってきた。今でも背中と上腕に約50カ所の傷跡が残る。
意識が戻った時には諌早の病院にいたため、当時の被害状況は覚えていない。ただ、原爆投下直後を写した写真集を見ると、工場のあった町は焼け跡と化していた。工場の外にいた従業員は焼け死んだとも聞いた。
胃に何度かポリープができ、摘出手術を繰り返していたが、一昨年に胃がんと診断され、胃を摘出した。同年8月に原爆症認定を申請した。1年たって、却下処分の通知が届いた。
木下さんはすぐに異議を申し立てた。納得いかないことに加え、爆心地からの距離が被爆者健康手帳で「2キロ」となっていたためだ。当時、同じ寮にいた人を証人としてやっと先日、距離を訂正できた。
木下さんは「妻はすでに亡く、1人で病気を抱えて生きていくのはやはり不安で」と申請の理由を語る。一方、認定制度については「今さら別に言うことは……」と口は重い。最初の申請から2年が過ぎ、異議の答えもまだ出ない。認定を願いながら、あきらめに似た気持ちも交錯する。
長崎原爆松谷訴訟や京都原爆症訴訟など、原爆症認定をめぐる訴訟では、放射線被害を十分に反映していない国の認定基準を不当とし、1人あたり数分間の審査で結論を出していた認定作業のずさんさも引き出された。
一方、原爆放射線と症状との因果関係の立証について、地裁、高裁判決は「被爆が原因の可能性が相対的に高いことを証明すれば足りる」などと被爆者の立証責任を軽減する判断を出したが、最高裁は「高度のがい然性が必要」と、高い立証責任を求めている。
県原爆被害者団体協議会事務局長の中山高光さん(73)=熊本市桜木=は「被爆から57年も過ぎた今、証明しろというのは無理だ」と言う。
放射線の影響が疑われる症状や障害がありながら、認定の枠外に置かれてきた「潜在的原爆症」の存在。原爆放射線の人体への影響が十分に解明されていない中で、疑わしきは切り捨ててしまうのか。認定制度の改善を求める訴えはここに凝縮される。
中山さんは米国の放射線被ばく退役軍人補償法を挙げて、日本の原爆症認定制度の冷淡さを指摘する。同法では10種類の疾病を対象に、因果関係の証拠がなくても一定の条件を満たせば、放射線に被ばくした退役軍人が補償を受けられる。原爆投下後に広島、長崎に駐留した退役軍人も含まれている。
米軍が広島、長崎に到着したのは原爆投下から1カ月後。それでも放射線に被ばくしたのは、初期放射線だけでなく残留放射線の恐ろしさを証明している、と中山さんは言う。「国は放射線の影響の一部だけをみて被爆者を切り捨ててきた。原爆を投下した国より(救済が)劣るなんて、そんな話があるか」
7月9日、県への原爆症集団申請で、申請者のうち岩田清さん(78)=八代市古閑中町=と、上村末彦さん(76)=同市海士江町=の2人が直接申請した。ともに認定の厳しさから大腸がんなどを抱えながら申請をあきらめてきた。
上村さんは「被爆者は犠牲者だ。国はもっと私たちの気持ちをくみ取って、真剣に取り組んでほしい」と訴えた。岩田さんは「みんなで訴えれば何とかなるのではないかと思い、今回の申請に加わった」と話した。
被爆者援護法(旧原爆医療法)は、国家補償的な性格を持つ。だが、原爆症の認定が被爆者の1%にも満たない厳しい運用では、その法の精神が生かされていないとも言える。
中山さんは「原爆は放射線だけではない。熱線や爆風でも多くの人が亡くなった。だが、死者への補償も何もない。運動を通して、原爆投下は甚大な人権侵害と改めて社会に訴え、国の姿勢を問いたい」と言う。
「疑わしきは認定される制度に」。集団申請運動の訴えは原爆症認定制度に表れている「被爆者行政の貧しさ」そのものを問うている。【姜弘修】(毎日新聞)
筑紫野市・産廃処分場の排水からウラン「自然界由来のもの」−−県が見解 /福岡
筑紫野市平等寺の産業廃棄物処理業「産興」(本社・博多区)の処分場の排水などからウランが検出された問題を受け、追加調査をしていた県は29日「ウランは自然界由来のもの」とする見解を発表した。
県環境部は今月16日、処分場からの浸透水や周辺の計7地点で採取した水を分析。このうち、処分場西側の敷地境界で1リットル当たり0・0036ミリグラムのウランを検出したのを最高に、3地点で水道原水の暫定指針値(同0・002ミリグラム)を上回るウランを検出した。
ウランには、自然界で大部分を占めるウラン238や、濃縮核燃料に使われるウラン235などの放射性同位体がある。調査地点でのウラン238と235の比率が自然界のものと、ほぼ一致したことなどから「原子炉などで使われる濃縮ウランは汚染原因ではない」と判断した。自然界のウランは、花こう岩中に多く含まれており、現地も花こう岩土壌。
これに対し、筑紫野市、太宰府市、小郡市など周辺自治体の首長らが29日、武田文男副知事を訪れ、産興の産業廃棄物処分場の安全性を求める要望書を提出し、処分場内のボーリングで出来た穴の水質調査するよう訴えた。武田副知事は「前向きに検討したい」と答えた。
一方、筑紫野市議会や市区長会などでつくる「県営山神ダム上流域産業廃棄物処理場対策連絡協」(産廃連、武石清一会長)が同日、産興の処分場内を初めて視察した。意見交換で武石会長は「新たに(排水路から)ウランが検出され驚いている。市もモニタリング調査を継続する方針だが、企業としても改善を」と訴えた。
同社は今年6月に環境管理の国際規格「ISO14001」の認証を受けたことや、選別による「脱焼却・脱埋め立て」を目指していく方針を説明した。【祝部幹雄、加藤学、徳永敬】(毎日新聞)
浜岡原発・水漏れ事故 中電の点検を評価−−保安院が浜岡町に報告 /静岡
中部電力が浜岡原発2号機の水漏れ事故を教訓とした点検内容を公表したのを受け、経済産業省原子力安全・保安院は29日、県と浜岡町を訪れ、中電の対策は「妥当である」との見解を説明。中電が漏えいが起きた溶接部と類似の121カ所に加え、9400カ所の点検を同様に行う方針を出したことについて、広瀬研吉・審議官らは「首肯し得るもの」と評価。問題個所の点検が行われた4月23日以降の運転履歴についても、「特段問題は見いだせない」と追認した。
これらに対し、浜岡町側からは「事故の再発がないよう完ぺきな点検を指導してほしい」(石原茂雄・浜岡町議長)、「老朽化していく中で点検内容を濃くすべきだ」(松本猛・町原子力委員長)などの意見が出た。本間義明町長も「後で何か起きれば批判を受け、原子力行政にも影響が出る。今回の定期点検では徹底して悪いところを直すよう指導監督をお願いしたい」と要望した。(毎日新聞)
昨年度の県税収入1139億円 IT中心に法人2税伸び /福井
県は29日、昨年度の県税収入が約1139億円だった、と発表した。前年度より20億円(1・8%)増え、2年連続の増収。前年度の業績を基にする法人2税が、好調だったIT関連分野を中心に増加したのが主な要因としている。
総税収に占める割合の税目別上位は、(1)法人事業税338億7000万円(29・7%)(2)個人県民税142億円(12・5%)(3)自動車税138億1000万円(12・1%)。前年度比の増収をみると、法人県民税が14・1%(7億円)増、法人事業税が12・9%(39億円)増と、高い伸び率を示している。
さらに昨年度は、高金利時代の郵便定額貯金の多くが10年の満期を迎えた。この払い戻しに伴い、利子の5%が県税収入となる県民税利子割も5・3%(5億円)増えて107億1000万円となり、総税収の9・4%を占めた。
一方、前年度比で減収が目立つのは、原発の核燃料税の22・5%(10億円)減。新燃料に交換する定期検査の時期が、昨年度中にかかる原発が前年度より少なかったためという。また、軽油引取税がトラック物流の低迷などで販売量が減ったため、8・8%(9億円)の減。自動車取得税や地方消費税譲渡割も減収しており、新車の買い控えや個人消費の減退など景気低迷の影響がうかがえる。
原発関連税収は、法人2税102億円▽核燃料税35億円▽その他3億円――の計140億円で、ほぼ前年度並みだった。 【八重樫裕一】(毎日新聞)