2002/7/16-日本の原発動向
筑紫野市産廃処分場 排水、侵出水からウラン 指針値の最大2.4倍検出 /福岡

 筑紫野市平等寺の産業廃棄物処理業「産興」(本社・博多区)の処分場の排水や浸出水から、水道原水(ダム内)の暫定指針値の最大2・4倍に当たるウランが検出された。約1キロ下流にある山神ダムを管理する山神水道企業団の調査で、企業団は「ダム内では検出されておらず、現時点で水道への心配は全くない」と説明している。企業団を構成する筑紫野、太宰府、小郡3市は処分場の埋め立て物が関係している可能性もあるとみて、県に原因調査を要望する。
 厚生労働省は水質基準とは別に、原水の監視項目としてウランの指針値(0・002ミリグラム/リットル)を設けている。調査は5月29日、処分場の外周7地点で初めて実施。うち処分場内の調整池から出てくる排水路など3地点から0・0032〜0・0047ミリグラム/リットルのウランが検出された。さらに6月20日、この3地点のうち2地点で指針値を超え、1地点では0・0048ミリグラム/リットルだった。
 ウランは自然界にも存在し、発生原因は特定できていないが、筑紫野市は「処分場から出ているのは事実で、何らかの埋め立て物が原因ではないか」とみている。
 核燃料リサイクル機構によると、ウランは花こう岩にも含まれており、海水に水道原水の指針値を上回る、平均で0・003ミリグラム/リットル含まれている。県は「この産廃処分場の地山は花こう岩質で、自然含有によるものと推定している。摂取影響については飲料水段階では基準を下回っており問題はない。ただし、住民の不安もあるようなので水質調査はしたい」と話している。
 厚生労働省水質管理室は「土壌由来なのか、産廃に含まれたものなのか分からず、定期的な水質監視は必要だ」と指摘している。
 処分場は安定型で、プラスチックやゴムなどいわゆる「安定5品目」が許可対象。森祐行・九州大大学院教授(地球資源システム工学専攻)は「自然界のものとか、そうでないとかの論争の前に、安定型の浸出水からウランが検出されたという事実を受け止めるべきだ」と話している。
 同処分場は99年10月、硫化水素ガス中毒による作業員の死亡事故が発生。県の事故調査委員会が改善策を含めて調査を継続している。【徳永敬、加藤学】(毎日新聞)
島根原発2号機「安全性は高水準」 国に定期レビュー提出−−中国電力 /島根

 中国電力は、島根原発2号機(鹿島町片句、沸騰水型、82万キロワット)の定期安全レビュー報告書をまとめ、経済産業省に提出した。国内外発電所の事故や故障から得た教訓を反映してアクシデントマネジメント対策を取るなど、「安全性・信頼性が高い水準にあることを確認した」としている。報告書は国が評価結果をまとめ、公表する。
 定期安全レビューは、国の要請を受け、92年から約10年ごとをめどに自主保安活動の一環として実施しており、運転開始14年目の2号機では初めて。(1)運転経験の包括的評価(2)最新の技術的知見の反映(3)確率的安全評価――の観点から発電所が自主評価した。
 自動化機器の導入など放射線量低減対策を実施し、周辺の影響がなく、また国内外の事故例から予防措置を実施するなど類似事象の発生防止を図っていることなどを確認。アクシデントマネジメント整備後は炉心損傷頻度は9割以上低減しているとしている。 【濱田元子】(毎日新聞)
ウラン残土仮執行停止 原告側「理解できない」 知事「引き続き住民を支援」/鳥取

 ウラン残土撤去のための仮執行の停止を命じた鳥取地裁の決定。先月25日の判決からわずか3週間弱で同じ裁判所が正反対の判断を行ったことに対し、原告側からは「理解できない」など不信の声がうずまいた。
 決定は核燃料サイクル開発機構が担保として1億円を供託することを命じているが、原告代理人の寺垣琢生弁護士は「お金での解決ができないので訴訟を起こしている。承服できない」と納得のいかない表情。東郷町の山本庸生町長は「非常に残念。核燃は控訴審で誠意ある対応を」とコメントした。
 仮執行の行方について原告関係者は危機感を持って見守っていた。撤去と仮執行も認めた6月25日の地裁判決(内藤紘二裁判長)後に内藤裁判長が退官。県議会や県警の文書の全面公開を県に命じる全国初の判決(議会=99年2月、県警=02年4月)など先進的な判決で知られた裁判長で、ウラン残土訴訟でも原告側が難しいと見込んでいた仮執行を認めた。それだけに、後任者の判断が関心事となっていた。
 振り出しに戻ったに等しい司法判断に片山善博知事は「非常に残念。控訴審で争うこととなるが、県としては引き続き全面的に原告住民を支援する」とコメントを発表した。 【田中成之】(毎日新聞)
<原子力>二法人統合の基本方針を定める 文部科学省準備会議

 日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の統合を協議する文部科学省の「原子力二法人統合準備会議」は16日、新たな組織づくりに関する基本方針を定めた報告書をまとめた。基本理念として、世界をリードする総合的研究開発機関という地位の確立▽安全研究の着実な推進▽効率的な経営・運営体制の構築―などを挙げた。(毎日新聞)
貯蔵プール漏水で、特異性の解明要望−−放射線評価委 /青森

 原子燃料サイクル施設環境放射線等監視評価会議評価委員会(議長、佐伯誠道・元放射線医学総合研究所支所長)が15日、青森市であり、日本原燃から六ケ所再処理工場の使用済み核燃料貯蔵プール漏水個所特定調査結果が報告された。貯蔵プールの漏水は全国でも初めての例で、委員からは「原因に特異性がないのかも考慮に入れて調べてほしい」という要望があった。
 日本では六ケ所再処理工場と同様に、使用済み核燃料を湿式の貯蔵プールで保管している原発が多い。委員らは、漏水原因次第では各原発の貯蔵方法にも影響を与える可能性もあることから、「今回の事例が特異なのか、一般的なものかをはっきりさせてほしい」などの意見が出た。【湯浅聖一】(毎日新聞)