2002/8/31-日本の原発動向
<東電原発>会長引責辞任へ 週明けに時期など相談

 原発の点検記録虚偽記載問題で引責辞任が不可避になった東京電力の荒木浩会長は31日、週明けに、社長、会長経験者である平岩外四相談役、那須翔相談役と相談のうえ、辞任の時期などを含めて、最終決断することを明らかにした。企業倫理を担当する日本経団連の企業行動委員会の委員長職は、早い時点での辞任を明言した。(毎日新聞)
点検・補修に100人関与=原発の逆風下、組織ぐるみ隠ぺい工作か−東電

 東京電力の原発トラブル隠し問題で、記録に虚偽記載があったと疑われる福島第一、同第二、柏崎刈羽の炉心機器の点検・補修にかかわった同社職員は延べ100人に上ることが31日、分かった。東電は社内調査で、これらの職員が虚偽記載に関与したかどうかや関与の程度を調べる。また、経済産業省原子力安全・保安院も9月2日からの立ち入り検査で事情を聴き、組織的ぐるみの工作がどのように行われたかを解明する。
 東電は炉心隔壁(シュラウド)などの点検・修繕の業務について、3年ほど前まではすべて米ゼネラル・エレクトリック・インターナショナル社(GEII)日本支社に委託。作業は親会社のGEから出向した技術者が当たっていた。情報提供者はそのGE技術者だったが、告発の手紙には原データにはひび割れが記してあったのに、東電の記録には記載されていないと指摘していた。
 作業現場で記録に書き込む際は、東電職員が監督し、作業員一人だけでできる仕組みにはなっていない。また、虚偽記載は作業グループ内に知れ渡ることから、保安院は黙認も含めて組織的な関与があったと疑いが強いと見ている。
 なぜ虚偽記載を行ったのかについて、原子力安全委員会の松浦祥次郎委員長は「このくらいのトラブルは安全性に問題ないと思ったのかもしれないが、正直に書けば問題ないだろうに」と疑問を呈する。
 1986年4月に起きたチェルノブイリ原発事故で、原発に対する社会の目が厳しくなった時代背景を受けて、「80年代後半からこうした機器のトラブルを電力技術者が外に出しにくくなるプレッシャーを感じたのではないか」と見る専門家もおり、保安院は動機面での解明も進める。 (時事通信)
東電トラブル隠し 「原発県への背信行為」−−双葉郡でも国に「不信感」 /福島

 ◇釈明や謝罪に終始
 東京電力の原子力発電所の点検記録虚偽記載問題で、原子力安全・保安院や東電は30日、県や立地地域への釈明や謝罪に追われた。「安全」が最優先であるべき原発での立地県への背信行為。国策であるプルサーマル計画や第1原発増設の推進に協力してきた立地地域の双葉郡にも強い不信感を植え付けた。県は「問題の本質は国の『体質』だ」として、保安院などへの批判をさらに強めている。【東電虚偽記載問題取材班】
 ●国への憤り
 「問題をわい小化すべきじゃない」。佐藤栄佐久知事は30日午後、不正の発覚を受けて、プルサーマル計画への「事前了解」見直しの可能性をただした記者団の質問をはねつけた。
 県は、不正問題の本質は東電よりも、内部告発を知りながら公表しなかった経済産業省原子力安全・保安院の対応にあるとの見方を強調。知事は「情報を改ざんしていたと分かって2年間も放置し、それで『安全です』と。許せない。本当に安全を考えているのか」と憤りを隠さない。
 ●保安院の釈明
 県の内堀雅雄生活環境部長は、同日事情説明に県庁を訪れた原子力安全・保安院の片山正一郎審議官と会い、00年7月に内部告発を知りながら公表しなかった同院の対応に抗議し、責任を追及する姿勢を明確に示した。これに対し、片山審議官は具体的な回答を示さず「調査に努力する」と繰り返した。
 片山氏は会談後、記者団に「誠心誠意説明するのが義務だが(県の批判は)その義務を果たせない厳しい雰囲気を感じていた。会談の実現は本当にありがたかった」と述べた。同院が2年間問題を公表しなかったことへの批判には「告発の事実確認に時間がかかった」「東電が協力したのはこの1カ月になってからだった」などと釈明を繰り返すだけ。
 同院は2日にも福島第1、第2原発に立ち入り調査を実施し、9月中に中間報告をまとめて県などに説明する方針だ。
 ●県議会も抗議
 櫛田一男副議長は同日午前、東電の佐野清一福島事務所長を呼び、植田英一議長名の抗議文を提出。佐野所長の謝罪に対し、櫛田副議長は「いろんなトラブルの度に同じ答弁だ」と不快感を示し「雪印、日本ハムに次いで東電(も不祥事)。みんな大ウソつきとのイメージが国民に広まった」と厳しく批判した。
 県議会は同日、対応を協議するため、臨時の各派代表者会議を9月2日に招集することを決めた。県議会として抗議と事実確認を求めるため、エネルギー政策議員協議会などの開催を検討する。
 また、共産、公明、社民党は同日までに抗議文を提出。自民党が31日、党原発対策本部の役員会で東電から事情聴取するほか、社民党が9月3日に現地視察するなど、各党とも事態を重く受け止めている。
 ●地元にも衝撃
 「あぜんとしましたね。なぜこんなことになってしまうのか。十数年間不正を積み重ねてきたということか」。双葉町の岩本忠夫町長は、驚きと憤りをあらわにした。
 岩本町長はそもそも福島第1原発(大熊、双葉両町)のプルサーマル計画や7、8号機の増設計画については推進の立場。「協力してきたのは国、東電への信頼関係があったから。それがプツンと切れてしまう」と影響の大きさを懸念する。同町は、原発立地4町で週明けにも東電に抗議文書を提出する方針だ。
 また、福島第2原発が立地する楢葉町議会は同日、全員協議会を開き、対応を協議。事情説明に訪れた東電の伏見健司・立地地域本部副本部長は「地元との信頼関係を根底から覆しかねない深刻な事態」と謝罪したが、町議からは「知っていて隠していたのは悪質だ」などと批判が相次いだ。これに対し、伏見氏は「00年7月に『申告』があったが、東電がすべてを知ったのは今年3月。調査には時間がかかる」などと釈明した。
 同副本部長は同日立地4町を回り、事情説明と謝罪に追われた。(毎日新聞)
<東電原発>自主点検の資料残らず 80〜90年代

 東京電力の原発点検記録虚偽記載問題で、不正が行われた80〜90年代当時の自主点検に関する資料が、東電に残っていないことが、経産省の調べで分かった。電気事業法の関連法令では、資料の保管義務は1年で、違反には当たらないが、虚偽記載の疑いのある29例は、原子炉部品のひび割れなど重要なものも含まれている。(毎日新聞)

東京電力の原発トラブル隠し問題を受けて四国電力は三十日、「原子力発電への信頼を損なうもので非常に残念」との見解を示した上で、「当社に不正があるとは考えにくい」と強調した。今後は保安院の指示に従い、伊方原発の点検作業が適切に実施されていたかを調査するとともに、不正防止などの社内体制を再度確認していく。

 同社によると、これまでの原発管理・点検は、愛媛県や伊方町と締結している安全協定に基づき、運転状況や放射能の監視測定結果などを公表。さらに「どんなささいな不具合もすべて報告してきた」という。

 今後の対応は「指示に従い、迅速に対処していく」と話している。

 伊方原発では、東電と同型の原子炉は設置されていない。