2002/8/30-日本の原発動向
東電が原発トラブル隠し 福島、柏崎刈羽で29件
東京電力の福島第1、福島第2、柏崎刈羽の3原発の13基で、1980年代後半から90年代にかけ、自主点検により見つかったひび割れなどのトラブルの検査結果や修理記録など29件に虚偽記載があったことが、経済産業省原子力安全・保安院の調査で29日、明らかになった。保安院が同日、発表した。
東電も事実関係を認め、南直哉社長は同日の記者会見で謝罪。福島第一原発、柏崎刈羽原発で計画していたプルサーマルの当面の実施断念を明らかにした。保安院は「安全上重大な問題に発展しかねない」として、東電に対し電気事業法に基づき、立ち入り検査を実施するとともに、他の電力会社に対しても総点検を指示する。
日本の電力供給の中心ともいえる東電で起きた不祥事だけに、原発の安全性に対する信頼性を失墜させるだけでなく、今後の日本のエネルギー事情に大きな影響を与えそうだ。
保安院によると、トラブルの内容は、原子炉圧力容器内で燃料集合体を覆う炉心隔壁(シュラウド)のひび割れや、炉心に冷却水を供給するジェットポンプの固定用部品のすき間、摩耗など。
5基については既に修理されているが、福島第1原発4、6号機、福島第2原発2、3、4号機、柏崎刈羽原発1、2、5号機の計8基の原子炉でひび割れなどが修理されずに残っている疑いがある。同院は「原子炉の安全性に直ちに重大な影響を与える可能性はない」としている。
自主点検は東電が3原発の原子炉を設計した米GE社の関連会社のGEII社に発注して行われた。
問題発覚のきっかけは、2000年7月に当時の通産省に寄せられた内部告発。保安院が調査したところ、東電は、従業員が自主点検作業記録に不実記載をした可能性があると認めた。
<強く強く抗議する/川手晃・福島県副知事の話>
安全性に対する信頼を裏切る行為で言語道断だ。こんなことでは原発立地県として、国の原子力政策に一切協力できないと言わざるを得ない。国は不正の情報を伏せながら、原発の安全性を強調し、東京電力も5月に調査委員会をつくりながら、6月にプルサーマル実施を申し出た。理解できない。プルサーマルなどを議論する以前の、根本的な体質の問題だ。特に原発の安全をつかさどる国に、強く強く抗議する。
<福島第1、第2原発>
東京電力が福島県双葉町など4町に建設。1971年運転開始の第1は6基、82年開始の第2は4基の沸騰水型軽水炉がある。94年6月に第1原発2号機、2001年7月には第2原発3号機で炉心隔壁(シュラウド)にひびが見つかった。
柏崎刈羽原発 東京電力が新潟県柏崎市と刈羽村で7基を稼働する原発。1985年、沸騰水型軽水炉の1号機が営業運転開始。6号機には世界で初めて改良型沸騰水型軽水炉を導入し、97年7月の7号機運転開始で、総出力821.2万キロワットの世界一の規模となった。今年8月、定期検査中の3号機で炉心隔壁(シュラウド)にひびが見つかった。
[河北新報 2002年08月30日](河北新報)
<東電原発>発端は内部告発 旧通産省が水面下で調査
「点検で部品に傷が見つかったのに、国に報告されていない……」。2年前、通産省(当時)に届いた内部告発文書が、不正発覚の発端だった。東京電力の原子力発電所で明らかになった点検記録の虚偽記載問題。29日夜、南直哉社長は「私自身、信じられなかった」と述べたが、2年以上も前に疑惑を知りながら、「大きな印象を持つほどの話ではないと聞いていた」と言う。部品が不良のまま運転を続けていた疑いもある。原発の地元や専門家は、強い不信の声を上げた。
00年7月のある日。原発の安全性を管轄していた通産省(現経済産業省)に、文書が郵送されてきた。福島第1原発1号機と同3号機について、実際の検査では炉心の部品に傷らしきものが見つかったにもかかわらず、国に報告がない――。そんな「告発」とともに、差出人の連絡先も記されていた。
担当職員はすぐに差出人に接触でき、さらに詳しい内容を聞き出すことができたという。告発者の協力を得て、水面下の調査が始まった。29日の会見で保安院は「情報提供(告発)者については、詳しい説明は差し控えたい。どこの社員か、といった身分も明かせない」と何度も繰り返した。
原子力の安全に関する「試み」が、告発の背景にあることも考えられる。書面が郵送された時期は、茨城県東海村の臨界事故(99年9月)をきっかけに原子炉等規制法の改正が行われ、不正を告発した社員に対し、解雇などの不当な扱いを禁止する条文が追加されてから半年後に当たる。
東海村臨界事故では、違法で危険な作業が長年続けられたにもかかわらず、行政側も不正に気付かないまま最悪の事故が引き起こされた。原子力関係者が「不正の告発は『密告』ではなく正義」という姿勢を打ち出したこの新しい制度に期待し、告発に至った可能性もある。
通産省は証言をもとに、本当の目的をぼかしながら東電側に事情説明を求めることを繰り返した。また独自に検査データも入手し、東電側の記録などと食い違いがないかなどを調査していった。ただ「不正があったとされる時期が80年代後半〜90年代前半と古く、確認作業は難航した」(保安院)という。 【金田健】(毎日新聞)
<J30>30日 原発虚偽記載で東電が下落
米国企業の先行きの収益懸念などから、売り先行の展開となった。注目された4〜6月期の経済成長率は市場の想定範囲内だったが、7月の鉱工業生産指数は予想を大きく下回り、株価の下落要因となった。J30は小幅ながら4日続落。原子力発電所の点検記録の虚偽記載問題で、東京電力が売りこまれて下落した。(毎日新聞)
「足元すくわれる」と危機感=東電問題で徹底調査指示−原子力安全委
東京電力の原発自主点検結果虚偽記載問題で、内閣府の原子力安全委員会が30日、臨時に開かれ、経済産業省の原子力安全・保安院から調査結果の報告を受けた。松浦祥次郎委員長は「3年前の臨界事故以降、安全確保の努力を続けてきたが、足元がすくわれる感じがした」と述べ、自主点検結果を最近のものまで再チェックし、関係者の役割分担や責任などを幅広く調査するよう、保安院に指示した。 (時事通信)
<東電原発>告発者は検査に関わった米国人技術者
東京電力の原子力発電所の点検記録虚偽記載問題で、通産省(当時)への告発者は検査を請け負ったゼネラル・エレクトリック・インターナショナル社(GEII)に派遣されていた親会社のゼネラル・エレクトリック社(GE)元社員だったことが分かった。 (毎日新聞)
<東電原発>東電正門に「うそつき」の張り紙 市民団体が抗議
東京電力の原子力発電所の点検記録虚偽記載問題で、市民団体のメンバーら約20人が30日、東京都千代田区の東電本社前に集まり、原子炉の操業停止などを求めた。集まった市民団体の人たちは、「原発オシマイ」「うそつき」などと書いた張り紙を正門の壁に張り、メガホンで抗議した。(毎日新聞)