二十二日午後三時ごろ、広島市安芸区矢野西四丁目の空き地で、近くに住む自衛官、木下建一さん(38)の長女、あいりちゃん(7つ)=市立矢野西小一年=が意識のない状態で、段ボール箱の中に入っているのを住民が見つけ一一〇番通報した。あいりちゃんは病院に運ばれたが午後四時ごろ、死亡が確認された。あいりちゃんは下校途中だったとみられるが、現場が通学路からそれていることや、箱のふたが外から粘着テープで閉じられていたことなどから、県警捜査一課は殺人・死体遺棄事件と断定。海田署に捜査本部を設置した。遺体状況から、死因は窒息死とみられる。
調べによると、あいりちゃんは名札が付いた制服姿で手足を折り曲げるようにして段ボール箱の中に入っていた。目だった外傷などはなかった。背負っていたランドセルは現場近くで発見された。
段ボール箱は、通学路から外れた道路沿いの空き地の石段の上に置かれていたといい、近所の住民が偶然、段ボール箱の中身をみて、ぐったりした状態のあいりちゃんを見つけた。
目撃者などによると、段ボール箱はガス器具の箱で、ミカン箱より少し大きかった。午後一時半ごろにはなかったという。
また、午後二時ごろに現場近くのJR呉線踏切を、幹線道路に向かい、強引に渡る灰色のワゴン車が目撃されており、関連を調べている。
同小ではこの日、新入生の健康診断のため、給食のあと、午後零時半に全児童が一斉に下校。集団での登下校は行われておらず、あいりちゃんは下校途中に、ほかの児童らから離れるなどして一人で家に向かっていたとみられる。
あいりちゃんの自宅はJR呉線を挟んで学校から西約一・三キロにあり、現場の空き地はほぼ中間あたり。帰宅が遅いことを心配した母親らが通学路などを捜していたという。
あいりちゃんは両親と弟の四人家族。現場は広島市東部のJR矢野駅南西約五百メートルの閑静な住宅街の一角。
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≪通学路に死角 言葉失う住民≫
下校途中に何があったのか−。広島市安芸区矢野西四丁目の空き地で見つかった段ボール箱には変わり果てた女児の遺体があった。「こんなところでどうして…」と付近の住民は一様に言葉を失った。
死亡していたあいりちゃんは、段ボール箱が見つかった現場から約六百メートル北西の安芸宿舎(公務員住宅)に住んでいた。父の建一さんは同県海田町にある陸上自衛隊第十三旅団後方支援隊所属の一等陸尉。
建一さんが東京都内に勤務していた関係で、今年八月、千葉県から広島市に引っ越してきたばかりだった。
木下さん一家が住むのは、鉄筋コンクリート建ての建物が九棟並ぶ団地で、県道を挟んで工場が林立する地区。
段ボール箱が見つかった現場付近では県道を隔てた官舎に引っ越してきた木下さん一家を知る人は少なく、死角を突かれた形となった。
あいりちゃんの遺体が見つかった空き地は車一台がやっと通れるような細い道。プレハブの物置があり、そばにあいりちゃんが入っていた段ボール箱があったという。
小学一年の娘(7つ)と保育園の息子(4つ)を連れていた近所の主婦(33)は「今までは同じような事件が起きても、人ごとと思っていたのに」と不安そうだった。
あいりちゃんが通う矢野西小学校は正門が閉め切られ、関係者以外の立ち入りが禁止された。
同小では、PTAや児童に配る「学校だより」で広島市安芸区に隣接する南区や海田町などで車で児童に声をかける不審者情報があるとして、注意を呼びかけている矢先だった。
竹中幸子校長は二十二日夜に会見し「元気に家に戻すことができず、申し訳ない」と言葉を詰まらせながら話した。
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≪過度取材自粛 父親らが要望≫
事件発生を受け、被害者の父、木下建一さんは親族とともに二十二日、報道各社に対し、「私たち家族、親戚(しんせき)や、ご近所の方々、学校、幼稚園等へのインタビューや撮影をご遠慮お願いしたい」などと、過度の取材を自粛するよう求める書面を出した。
木下さんは、「敷地内への立ち入りをお控えいただければと切に思います」などと要望している。
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≪最近の主な小学生殺害事件(年齢は当時)≫
平成9年3−5月
神戸市で小学4年の女児(10)が殺害、小学6年男児(11)が殺害され遺体の一部が中学校正門前で見つかる。6月、中学3年の少年を逮捕(連続児童殺傷事件)
11年12月
京都市の小学校校庭で遊んでいた同小2年の男児(7)に若い男が包丁で切りつけ死亡させ、犯行声明を残した。京都府警は翌年2月、無職男を割り出したが、任意同行中に逃亡、飛び降り自殺した
13年6月
大阪府池田市の大阪教育大付属池田小に宅間守元死刑囚が包丁を持って侵入し、小2女児7人と小1男児1人の計8人を殺害、現行犯逮捕された
16年6月
長崎県佐世保市の小学校で6年女児(12)が同級生の女児にカッターナイフで切られ死亡、女児は補導
16年9月
栃木県小山市の4歳と3歳の兄弟が不明になり、無職の下山明宏被告を逮捕。同市内の川で遺体を発見
16年11月
奈良市の小1女児(7)が下校途中に行方不明となり、翌日遺体で発見。携帯電話のメールで犯行声明が送られた。元新聞販売店員、小林薫被告を逮捕
(産経新聞) |