★JI分派、比ミンダナオ島に秘密基地…テロ要員養成か
【ジャカルタ=黒瀬悦成】東南アジアのテロ組織ジェマア・イスラミア(JI)から分離したインドネシアのイスラム過激派が、フィリピン南部のミンダナオ島で、極秘裏に軍事訓練キャンプを設営し、テロ要員の養成を進めていることが分かった。
インドネシア治安筋は、ミンダナオ島について、「旧タリバン政権下のアフガニスタンのようなテロリスト培養基地と化している」と話している。
東南アジアの複数の治安関係者によると、訓練施設を運営するのは、インドネシアのスラウェシ島中部のポソ地方を活動拠点とする「ムジャヒディン・コンパク」と呼ばれる武闘派組織。同島やマルク諸島で、キリスト教徒とイスラム教徒の宗教抗争が本格化した1999年、性急な武装闘争路線を主張するJI構成員らを中心に結成された。
同関係者によると、コンパクの軍事キャンプが、ミンダナオに開設されたのは2001年。場所は、同島中部のタワス地方で、常時数十人が爆弾製造法や射撃などの軍事訓練を受けているという。同年12月、スラウェシなどでキリスト、イスラム両教徒が和平合意した後も、ポソ地方を中心に30件以上の爆弾テロやキリスト教徒の殺害事件に関与したとされる。
同島を選んだのは、「地元過激派と手を結べば、活動に専念できる環境がある」(治安筋)ためだ。治安当局の監視が緩く、海路での密航が容易な点も選択要因の一つとされる。
ミンダナオが、「テロリスト培養基地」の性格を帯び始めたのは90年代のことだ。48年から武装闘争を続ける「インドネシア・イスラム国家」(NII)が90年に自前の訓練キャンプを開設。続いて、JIが94年にキャンプ・フダイビヤを設立。さらに、スラウェシ島南部マカッサルを拠点とするJIの連携組織「ワハダ・イスラミア」が97年にキャンプを開いた。
これらの基地は、事実上の共闘関係を組んでいる。
NIIと「ワハダ」の施設は、比過激派モロ・イスラム解放戦線(MILF)が運営する軍事拠点「キャンプ・アブバカル」の中に位置していたため、2000年に比治安部隊がMILFに対し全面攻勢をかけた際、閉鎖に追い込まれた。
しかし、両組織は間もなく、新参者のコンパクの施設に合流して訓練を続け、インドネシアなどでのテロ遂行に備えている。
こうした事態を受け、米国際開発庁(USAID)は今年4月、ミンダナオ島中部の港町コタバト市周辺のバイパス道路整備計画について、「爆弾を仕掛ける訓練をしている連中の出入りに使われる」(リシャドニ駐比米大使)として援助凍結を決めた。同島での過激派対策の拙劣ぶりが目立つアロヨ政権に対する国際圧力も強まっている。
(読売新聞)
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