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【トピック】
2100万円支払いか 解放交渉で海運業界有力筋

 【ジャカルタ22日共同】マラッカ海賊事件で人質解放交渉を側面支援したアジア海運業界の有力筋は22日、共同通信に対し「交渉の詳しい最終結果は聞いていないが、身代金は20万ドル(約2100万円)前後で合意し、海賊側に支払って解放が実現したようだ」と述べた。
 25万ドル(犯人側)−10万ドル(近藤海事側)の攻防だったとされる交渉が20万ドル前後で決着した背景として、同筋は「高額の身代金を支払えば今後、日本人船員が狙われやすくなるため船主側は大幅引き下げを求めたが、最終的には人命尊重を重視して決断したようだ」と語った。
(共同通信)

船長らを「お客様扱い」解放時に600ドルくれる

 【ペナン(マレーシア北西部)=中谷和義】近藤海事(北九州市若松区)のタグボート「韋駄天」が海賊の襲撃を受けた事件で、近藤海事の関係者は、海賊が井上信男船長(56)らを解放する際、1人あたり200ドル、計600ドルを手渡していたことなどを明らかにした。
 それによると、海賊は井上船長らを拘束中、漁船で一番寝やすい場所を提供するなど「お客様扱い」で、猿ぐつわや目隠しなどで自由を奪うことはなかった。
 実際に接した海賊は主犯の「手先または実戦部隊」で「友好的というか年寄りをいたわる感じ」だった。解放直前には「帰るまでに必要な物をそろえられるよう」1人あたり200ドルを井上船長らに手渡した。
 一方、砂浜から船に乗る際には「足跡を残すな」と命じ、治安当局による追跡を警戒していたという。
 井上船長らは拘束中、沼地のようなところを長時間歩かされた。サンダルだと足を取られるため、ほとんどはだしで歩いた。またシャワーを浴びられないのがつらく、フィリピン人で熱帯に慣れたサダン機関士がスコールで器用に体を洗っているのを見て「うらやましい」と感じたという。
 解放された井上船長、黒田俊司機関長(50)、フィリピン人のエドガルド・サガン機関士(41)は22日午前、マレーシア海上警察の事情聴取を受けた。早ければ同日夜にも帰国の途につく。
(読売新聞) - 3月22日

★保護の船長ら帰国へ 日本標的、増加の懸念 「犯人は5人、要求なし」

 【ペナン(マレーシア)=藤本欣也】マラッカ海峡のペナン島沖で「近藤海事」(北九州市)所属のタグボート「韋駄天(いだてん)」が海賊に襲撃された事件で、二十日に解放された井上信男船長(56)と黒田俊司機関長(50)、フィリピン人のエドガルド・サダン三等機関士(41)の三人は二十一日、ペナン島で記者会見した。犯人は五人で、船長らはジャングルの中を転々とするなど移動を繰り返したという。
 井上船長らは二十日午後、マレーシア国境に近いタイ南部サトゥーンの沖合で漁民の通報を受けたタイ海上警察に保護され、二十一日午前に近藤観司同社社長とサトゥーン市内で対面。警察の事情聴取に応じた後、ペナン島に移動した。
 井上船長は「拉致したのは五人で、かなり訓練された兵隊のようだった」と語った。インドネシア・アチェ州の独立派武装組織の関与が指摘されている。
 ジャングルを転々とし、何度も船を乗り換えたものの、三人とも健康状態はおおむね良好で、「暴力は受けなかった」(井上船長)という。
 近藤社長は犯人からの要求について「ありません」と述べた。一方で「水面下の方の力があったからこそ、こうしてうれしい報告をさせていただいている」とも語り、解放交渉が行われた可能性を示唆した。
 井上船長と黒田機関長は早ければ二十二日にも帰国の途につく見通し。
     ◇
 ■早期解放 真相はやぶの中
 【ペナン=藤本欣也】マラッカ海峡で韋駄天が海賊に襲撃され、船長ら三人が拉致された事件は、発生から六日間という、海賊事件の中では比較的早いスピード解決となった。マラッカ海峡は日本経済にとっても中東産原油の八割以上が通過するシーレーン(海上交通路)の要衝で、日本の大型船舶もひっきりなしに往来しており、今回の事件がさらなる事件を誘発する可能性も懸念されている。
 韋駄天が所属する近藤海事の近藤観司社長は二十一日の会見で、「(海賊事件で)一週間で解放されたのはうまくいった方と言えるのではないか」と述べ、「水面下で懸命にやってくれた皆さんに感謝している」と頭を下げた。
 一般に、海賊と船主の間でどのような交渉が行われたのかが明らかになることは、まずない。身代金が支払われたことが明白になれば、同じ船主はもちろん、同じ国に船籍を置く船が再び標的にされかねないためだ。こうした事情をついて海賊がのさばっているともいえる。
 近藤社長は二十一日の会見で、海賊からの要求について「一切ありません」と公式には発言している。その一方で「これからのことにも関係するので…」と言葉を濁した。また、井上船長らは、タイの捜査当局に「身代金交渉が失敗したため解放された」と話しているという。真相はやぶの中だが、「身代金授受の有無にかかわらず、人質解放は“ビジネス成功”のシグナルとみなされても仕方がない」(船舶関係者)というのが現実だ。
 こうしたことから、日本船が初めて人質目的で襲撃された今回の「韋駄天」事件を契機に、海賊が日本船舶を標的にするケースが増えていく可能性は否定できない。
 現在、マラッカ海峡の保安維持にはマレーシアやインドネシアなど沿岸周辺国が対策を講じているが、海峡利用国も何らかの支援を行うべきだとの考えが広まりつつある。
 日本の海上保安庁も、シンガポール沿岸警備隊などと合同の海賊対策訓練を実施している。日本はこれまでのレベルにとどまらず、今回の事件を機にさらなる支援強化を迫られることになりそうだ。
(産経新聞)

<海賊>船長が事件メモ公開 拘束7日間や犯人G像が判明

 【ペナン大澤文護】海賊に拉致され、解放された「韋駄天」の井上信男船長、黒田俊司機関長(50)、フィリピン人のエドガルド・サダン機関士(41)は21日午後7時(日本時間同8時)すぎ、ペナン市内で記者会見するとともに、井上船長が事件発生時からの出来事を解放直後に記したメモを公開した。証言やメモの記載内容から拘束されていた7日間や犯人グループ像が明らかになった。
 井上船長らによると、実行犯は5人グループだった。海賊は韋駄天を襲った時、激しい銃撃を加えてきたという。井上船長と黒田機関長は、この時が一番怖かったと口をそろえた。
 3人は「船を7隻ほど乗り継ぎ、たぶんインドネシアと思われる場所」に連れて行かれた。真夜中にジャングルの中を歩いたりしながら、毎日移動を続けていた。
 犯人の印象について、井上船長は「かなり訓練を受けた兵隊のようで、『パプア人』だと名乗っていた。統率がとれ、危害を加えるような様子はみせなかった」と話す。「ジェスチャーで『(たばこを)くれ』と言うと、くれることもあった」という。黒田機関長も「(海賊の)若い連中が比較的、面倒をよく見てくれた」と語った。
 ジャングルでは、海賊たちと同じ魚とご飯の食事を与えられていた。18日午後6時ごろ、「最初に上陸したと思われるのと同じ砂浜に来て、船に乗った」という。
 5隻の船を乗り継いだ。海賊と別れ、最後に乗せられたのは小さなタイの漁船。20日の朝になって「マレーシアに行きたい」と言ったが、通じなかった。結局、20日夕、タイ海上警察の艦艇に救出されたという。
 黒田機関長は「なぜ現代に、彼らのような海賊が暗躍するのか」と、怒りをぶちまけた。
 3人がタイ当局の事情聴取に説明した内容によると、海賊は、ジャングル内の小屋で、竹で編んだ棚状のベッドを井上船長らに使わせたり、蚊取り線香をたく配慮もしていた。食事には、ミネラルウオーターやビスケットの差し入れもあったという。
 会見に同席した近藤海事の近藤観司社長は「こうした事件が1週間で解決できたのは、うまくいったと言えるのではないか。3人が『このまま仕事を続けても良い』という気持ちを見せてくれたのがうれしかった」と述べ、井上船長らの頑張りをたたえた。
(毎日新聞) - 3月22日

★「恐怖感じなかった」 マラッカ海賊事件

 【バタワース(マレーシア北西部)21日共同】マレーシア・ペナン島沖のマラッカ海峡で海賊に連れ去られ、6日ぶりに解放されたタグボート「韋駄天(いだてん)」の井上信男船長(56)=東京都八王子市=と黒田俊司機関長(50)=北九州市戸畑区=ら3人と、韋駄天が所属する近藤海事(北九州市)の近藤観司社長が21日、保護されたマレーシア国境に近いタイ南部サトゥーンからペナン島に移動して記者会見し、井上船長は「ジャングルの中を転々としていた。暴力は受けず、恐怖は感じなかった」と明らかにした。
 近藤社長は、身代金など犯人からの要求について「公式的にはない」と語る一方で「水面下の方の力があったから(事件が)解決できた」と述べ、解放交渉が行われたことを示唆した。
 3人の健康状態は良好で、早ければ22日にも帰国の途に就く見通し。犯行グループは特定されておらず、事件の真相解明には時間がかかりそうだ。





左から
黒田俊司機関長(50)
井上信男船長(56)
エドガルド・サガン機関士(41)
近藤海事の近藤観司社長


「韋駄天」事件の神浦氏見解

[コメント]これくらい筋書きが読める誘拐事件は他になかったと思う。まず船長と機関長が船内の金庫を荒らされることなく誘拐された。海賊が持ち去ったのは人質以外に、韋駄天にあった船舶書類と衛星携帯電話である。これで海賊の目的は「誘拐ビジネスと判明した。人質に危害が加えられる可能性は低い。次に誘拐保険の会社が海賊と身代金交渉を行う。当初、一部のマスコミが海賊が身代金を要求した額は30〜40万ドルと流した。この情報も誘拐保険の会社が密かに流した可能性が高い。身代金を20万ドルに値切るためである。そして誘拐保険の会社が値切って、結局、20万ドルにさせたと一部で報道させた。保険会社は身代金の情報を出さないことも、漏れたように情報を出すことも、自分たちが考えた通りに行っている。日本人一人が10万ドル(1050万円)である。まさにマラッカ海峡で言われている、「先進国の船なら一人10万ドル」という誘拐身代金の額と一致する。支払った身代金の額を、絶対に隠せないことは保険会社もわかっていて芝居をした。

 これを読めない海運関係者はいないと思う。今回はそれくらい筋書き通りの誘拐事件だったのだ。しかし、これほど簡単に数十万ドルが手にはいるなら、マラッカ海峡の海賊たちは誘拐ビジネスに進出することは間違いない。いくら船会社が身代金の支払い方法を話さなくとも、海賊たちのネットワークで情報が伝わっていく。

 そこで犯人だが、現地に詳しい警察や軍関係者の可能性が高い。日本で警察官や自衛官といえば、社会的信頼が高い職業だが、ほとんどの後進国では信頼された職業ではない。私は彼らを昼間は警官や軍人だが、夜は泥棒や強盗をする人と思っている。むろん彼らにも言い分がある。警官や軍人の給料が生活できるほど払われていないのだ。足りない分は自分で稼げというわけである。
 そこで気の弱い警官や軍人はヤクザのように所場代を集める。しかし度胸のあるものは大金を狙って海賊を装い、誘拐ビジネスに手を出すのである。
 これからマラッカ海峡の誘拐ビジネスは増える。そこで日本人一人が身代金10万ドルという額が高いか安いかという議論になる。これは誘拐保険会社にとって安いのである。これを比較するものに、最近、イラクやアフガンで大流行の民間軍事会社の給料である。アメリカやイギリスの特殊部隊にいた者が、民間軍事会社にリクルートされ、要人警護や重要施設の防護を行う。彼らの日給は最低でも1000ドル(10、5万円)が支払われる。1ヶ月の月給に換算すると3万ドルである。これが最低の金額なのである。もし階級が指揮官級や教官レベルになると、給料は2〜3倍になるという。日額30万円が支払われるのである。日本人人質一人が1000万円なら、民間軍事会社の現地責任者(指揮官)一人の月給程度の金額でしかない。保険会社は民間軍事会社の経費と海賊の身代金を比べているのだ。
 しかしインドネシアの海賊にとって、1000万円という金額は日本人が1億円と聞く金額に似た響きを感じるだろう。そのように考えていくと、日本と東南アジアの貧富の差が、海賊事件の根底にあることも指摘できるのである。

【私的めもらんだむ】
 大筋では神浦氏の見解になるのだろうが、どうも腑に落ちない点がある。かなり訓練された兵隊のよう、暴力は受けなかった、統率がとれ、水面下の方の力があった・・・云々の証言は、何か別の方向性を指し示しているように思えてならない。これら統制のとれた組織という方向性は、どうも国がらみの密約を暗示しているかのようだ。憶測にすぎないけれど、そうした可能性は考えられないだろうか?と・・・

1時
 近藤社長は身代金の交渉について「一切なかった」としていたが、身代金2100万が支払われたとするニュースが伝えられている。それが事実なら近藤社長の云う「水面下の力」のことであろうが、それが何を意味しているかが問題になる。近藤社長単独で交渉したわけではないとすると、その仲介者は何者なのか?これまでの経緯から日本の外務省などが動いたことも考えられる。そうなると、まさしくインドネシアと日本の政府がらみの折衝ということになるのだが、もう一つの可能性は業界筋の仲介ということもある。特に笹川陽平氏が理事長の「日本財団」は、海賊に関する情報を逐一流している。【参考-日本財団図書館】 私はこの笹川の線が最も可能性が高いと睨んでいる。近藤社長はその辺をよく承知して泣きついた・・・のではないか?

【視聴予定】
19時
30 NHKスペシャル「世界遺産・秘めた力災害列島・日本より」 なぜ厳島本殿は被害に遭わないか▽地震で倒れない五重塔に科学のメス▽時を超えた日本人の英知 

21時
15 その時歴史が動いた 秘録・幻の明治新政府・将軍が新政府へ?維新を変えた最終抗争ほか


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