04/01/18 (日)
0〜7℃、北よりの微風
植物の記憶能力を囚人に託して描いた作家ソロウキン
今年の花粉この10年で最少、冷夏の影響 気象協会予測
 冷夏の影響で今年の花粉飛散量はこの10年で最も少なそう――。日本気象協会が16日発表した今年のスギ、ヒノキ、シラカバ花粉の飛散予測によると、九州南部(宮崎、鹿児島)を除く各地でこの10年間で最も少ない。九州南部は例年並みの見通しという。
 協会によると、花粉量は前年夏の気候条件に大きく影響される。猛暑で日差しが強ければ花芽が成長して多くなり、冷夏で日照不足だと少なくなる。
 地域別では東北北部や関東、北陸、東海、近畿などはとくに少なく、例年の1割以下の可能性もある。
 スギ花粉の飛び始めはほぼ例年並みで、九州は2月上旬ごろ、南関東から中国・四国は2月上旬〜中旬ごろ。北陸から北関東では2月中旬〜下旬ごろで、東北南部は2月下旬〜3月上旬ごろ、東北北部は3月中旬以降だという。

 10日に書いた鈴木二三子さんの警告といい、今年の気象異変は避けられないようだ。いま植物たちは明らかに悲鳴をあげている。それはおそらく今年の来たるべき気象異変を暗示したものであり、ために花粉量を制御して防御体制に入ったように見える。つまりは今年は子孫繁栄という生物本能を断念した、というわけだ。「何のことはない、前年の冷夏の結果、今年は花粉が少なくなったという物理現象にすぎない」と世の知識人たちは云うかも知れない。別に驚くべきことではない、と云わんばかりの専門家の権威に「植物は前年の冷夏に反応した結果、今年は植物みずから花粉を少なくした」と言い換えるべきと注進したい。植物たちは物理的には受動的に見えるが、現象としては能動的な徴候を示しているのだから・・・つまり、例年より花粉を少なくしているという点で、それはとりもなおさず植物の知覚能力を証明していることにもなる。それらはすでにカラマーノフやボース卿などの先駆者が実験してみせた通りである。
 今から約35年前、当時のロシアの人気作家ウラジミール・ソロウキンは、こうした植物の知覚に「植物は記憶能力すらある」と看破しつつ、その著書「草」の中で植物の奇跡をイメージする。
「ある日、独房の囚人は看守の差し入れた本のページに一粒の種子を見つけた。囚人はその種子が広大無辺の世界を象徴するものと想像しながら、たった一ヶ所陽射しのある場所に種子を蒔き、水の代わりに涙を注いではやがて開花する植物の展開に奇跡を待つ」
 ソロウキンはこれこそ人々が忘れていた植物の驚異であり真の奇跡なのだとする。奇跡は聖書の中ではなく、身近な隣人であるところの植物にこそあるのだと。囚人にとっての救いは、闇に射す一条の光、それが涙で開花しようとする植物にほかならないことを・・・こうしたソロウキンのイメージは、興奮して実験結果を語ったソビエト科学アカデミー会員に端を発していた。
「驚いてはいけません!ゼラニウムの実験は植物の記憶能力を指し示したのです。私たちはゼラニウムの葉に針で突き刺したり、焼いたりして拷問を加えました。すると拷問を加えた人物が近付くやいなや、記録計が狂乱しはじめたのです。彼ら植物は神経質になったなんてものじゃなく、恐れ、怖がったのです」
 知覚記憶するばかりではなく恐怖する植物?!信じがたいことだが、実験結果はまさにそれを証明したということになる。してみれば、いま起こっている植物たちの異変も、それこそ植物たちが来たる気象大異変を予知して恐怖していることにはなるまいか?ソロウキンは云う。
「我々は草を踏みにじって泥まみれにし、ブルドーザーやキャタピラーの踏み面で地面を裸にし、コンクリートや熱いアスファルトで地面を覆う。工業機械から出る悪魔のような廃棄物を始末する際、我々は原油、ごみ、いろいろな酸やアルカリ、その他の有毒物を地面に投棄する。だが、あのたくさんの草は何処に生えているのか?私には果てしのない草なき荒野に立つ人間の姿が目に浮かぶ。人間には広大無辺と見えなくとも、広大無辺の破局の所産たる草なき荒野に立つ人間の姿が目に浮かぶ」




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