04/01/10 (土)
西よりの微風
里山の気象博士、鈴木二三子さん(NHK総合テレビより
里山の気象博士、鈴木二三子さんが警告する2004年気象異変

 福島県西会津に植物の育ち具合を見ただけで、その年の気象をピタリと言い当てる農家の主婦・鈴木二三子さん(58)がいる。彼女は幼い頃から、祖父が植物を眺めながら気象を予測する独り言を聞いて育った。梅の花の咲き具合がおかしいと「今年は雨の多い年になる」と独り言のように呟く祖父の、その的中率の大きさに興味を抱いてきたという。農業を本格的にやりはじめた20代、二三子さんは身の回りの自然を観察するようになる。今では近所の農家から訊きにくるまでになり、里山の気象博士として重宝がられている。彼女の観察のポイントは以下。
1-木の芽、葉の色と大きさ
2-地下水の温度と気温
3-それらのデータの記録と分析

 彼女は去年の天候不順も予測していた。教えてくれたのは春先に出るツクシ、いつもより極端に遅いその成長であった。これを冷夏の到来と予測した彼女は、それを逸早く農業に活かしたのだ。
 今年、会津は例年より雪の少ない冬を迎えている。去年、彼女はエゴマを収穫しているとき、エゴマに寄生するカマキリの卵の位置の異変に気付いた。いつもは地面から1メートル付近に寄生する卵が、その年は地面に近いところに付いていた。カマキリは雪のギリギリのところに巣をつくったのだ。【参考サイト】エゴマプロジェクト
 彼女は今、キバナチンチョウゲの異変にも注目している。葉の大きさが不ぞろいで花も小さいのだ。これに彼女は「葉の光合成で実を太らせる春の異変」を感じ取っている。さらに彼女は夏以降の異変も予測し、長雨・冷害もしくは旱魃による猛暑の気象大異変を心配している。これらの異変は植物たちが全て正確に教えてくれるわけではなく、彼女に云わせれば「植物も迷っている」ということになるらしいのだ。つまりは、その年の気象異変を察知した植物たちの、そのパニックが葉の形状または成長過程での異変として現れる、ということになろうか。【関連サイト】鈴木二三子さん執筆「気」のある食

 これまでにも私はそうした植物たちの特異能力に触れてきたが、大学の研究室においても様々な実験が繰り返されてきている。しかし、その実験は植物をセンサーに応用するといった限られた目的のためでしかない。例えば、赤や黄色などの光を照射して、植物がそれを認知する能力などである。だが、植物の能力はそれだけに留まらないもっと奥深くまた広範囲な能力を秘めている、というのが私の自論でもある。科学先駆者たちの植物能力への新鮮な驚きが研究結果として結実してきた成果を、世の権威がどれほど抑圧隠蔽してきたことか・・・我々をとりまく身近な隣人、植物たちのことを少しずつ書いていきたい。
 鈴木二三子さんの例だけではなく、日本の各地にはそうした自然を観察して予測を的中させている普通の人々がいる。ある郵便配達のおじさんはトンボを眺めながら、またある農家のおばさんは野辺に咲く野草を見詰めながら、的確にその年の異変を予測しては地域の人々を驚かせている。二宮金次郎はナスの味に異変を感じ、旱魃に強いヒエやアワをつくらせ、その結果、大旱魃の飢えに苦しむ人々を救ってきたという歴史もある。人間は自然を離れて生きることは出来ない。我々が毎日摂取している食物は全て自然の恵みである。その自然を汚すだけ汚しながら、いまや人類はそのために自滅しかねないまでに追い込まれつつある。それを察知できないくらい麻痺している今の人類に未来はない。
 西会津の農家のひとりの主婦が植物たちの悲鳴を聞き分けて、今年の気象異変を警告している今、私たちは謙虚にそれを受け止めて対処すべきではないか。命あるもの全てを愛しい隣人として・・・
【参考】堀和久著「二宮金次郎-我が道は至誠にあり」講談社より要約
 天保4年夏、例年より遅い梅雨明けに寒い日がつづく中、金次郎は所用先の宇都宮で食した旬茄子が秋茄子の味であることに気付く。急ぎ桜町領へ戻った金次郎は村役三方を陣屋に集め、田圃の稲を引き抜きヒエやアワの種を蒔くよう指示する。それは、木綿畑をつぶして蕎麦や大豆に代えさせ、神社や寺の空き地も耕して応急の畑にするといった徹底ぶりだった。一方で金次郎は手元金で雑穀や芋、干物を広く買い集める。
 そして秋・・・奥羽・関東一円は大凶作に見舞われ、米価は狂騰して餓死者が続出する。160戸828人にまで増えていた金次郎を支持する領民は、飢餓救済の号令を発する金次郎の元に嬉々として集ると、陣屋十畳間には瞬く間にいくつもの食糧の山ができた。こうした金次郎の働きによって近郷村々の多くの人命は救われたのである。



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