03/07/18 (金)
■今日の映像資料 
ウラン購入偽造文書めぐりFBIが捜査開始
 イラクのウラン購入計画を裏付けるとされていた偽造文書について、米連邦捜査局(FBI)が捜査を始めた。16日、CNNなどが報じた。その文書が米中央情報局(CIA)の本部に届いたのは、ウラン購入計画を非難する大統領演説の後だったという。
 文書は、イラクとニジェールの政府関係者がウラン取引についてやり取りした手紙の体裁だ。誰が何の目的で偽造したのかを調べるため、FBIはCIAや国務省の関係者から事情聴取を始めた。ただ、ホワイトハウスの情報操作疑惑は捜査の対象ではないとされる。CNNによると、文書は01年後半にイタリアの情報当局が入手し、昨年10月、ローマの米大使館に渡った。この後、国務省を通じて米国の各情報機関に配布され、CIA本部には今年2月に届けられたという。ブッシュ大統領は今年1月28日の一般教書演説で、ウラン購入計画に触れた。この時点でホワイトハウスは、演説の裏付けとなる、この文書を手にしていなかった可能性が出てきた。一方、ワシントン・ポスト紙は16日、1月の時点でブッシュ政権はウラン購入計画のほかにはイラクの核開発を裏付ける有力情報を持っていなかったと報じた。両報道が事実ならば、ブッシュ政権はイラクの核開発の脅威を訴えるために、証拠文書もないまま、ウラン購入計画を大統領演説に盛り込んだことになる。

米上院特別委、CIA長官から聴取 情報操作疑惑
CIAのジョージ・テネット(George Tenet )部長

 イラクのウラン購入計画をめぐる情報操作疑惑で、米上院情報特別委員会は16日、疑惑発覚後初めて、中央情報局(CIA)のテネット長官に非公開で事情を聴いた。聴取は4時間半に及び、偽造証拠に基づく同計画がなぜブッシュ大統領の演説に盛り込まれたのか問いただされた模様だ。
 特別委は先月から、イラクの大量破壊兵器(WMD)に関する情報をブッシュ政権が適切に扱ったかどうかを非公開で調べている。この日のテネット長官への聴取は当初から予定されていた。ただ、今月に入って、「イラクがアフリカからウラン購入を試みた」という偽造証拠に基づく16語が大統領の一般教書演説(1月)に盛り込まれた問題が浮上。テネット長官は先週、「すべての責任は自分にある」との声明を出したばかりだ。委員らの話や米メディアの報道によると、CIAの責任で一件落着としたい共和党側は、CIAが16語を削除できなかった理由を中心に聴取。ブッシュ政権の責任問題も追及したい民主党側は、ホワイトハウス側の対応などを問いただした。

 テネット長官は1997年7月11日に、ドイッチ長官の後任としてCIA長官に就任している。1999年のNATO軍によるユーゴ攻撃では、その作戦の立案者とも云われている。今回の情報操作疑惑で全ての責任を負うとはまことに殊勝なことである。米上院情報特別委員会での写真を見ただけでも物怖じしない性格(冷徹さも含めて)が伝わってくる。こうした人種は間違っても私のようにゴメンナサイとは謝らないタイプであることはすぐ分かる。第一不気味だ。ブッシュ親子を慕うCIAファミリーなればこそ、火の粉すら小ブッシュに降りかかることはないと思われる。
 これまで私はアメリカ政府のイラクへの不正融資を調べてきた。【参照】隠し口座で巨額の資金管理=80年代からイラク大統領 (今年4月18日の日誌) この時にCIAはどう動いたか?(暗躍したか?と云うべきかも知れない) 1989年4月に提出されたアメリカ・エネルギー省の「核拡散レポート」は皮肉にも今を暗示させて、全くひどいシロモノであった。ここでは「イラクがすでに原子爆弾製造計画に着手している」と断言している。そしてCIAもこれに追従、6月には「計画ではアメリカの技術が使われる」として危機を煽った報告がなされた。CIAは不正融資追求の矛先を摩り替えようとしたのである。そこで彼らは以前から核兵器製造疑惑のあるパキスタンに狙いを定めると「パキスタンはダミー会社を通じて核兵器の技術をイラクに流している」とした。ここからパキスタンとアメリカの関係は冷え込んでいく。これでイラクへの不正融資疑惑は沈静化したかのように思えたが、1989年10月、沈静化どころかそれらが全く杞憂になる驚くべき方向転換が起きる。イラクとの貿易活動を全面的に支持する国家安全保障命令26号を親ブッシュが成立させてしまうのだ。これでイラクは武装継続の承認をアメリカから得たものと思ったのも無理もなかった。ブッシュの狙いもそこにあった。こうしてブッシュは湾岸戦争の口実を作るための準備を推し進めていった。
 その息子が今、イラク戦争での情報操作の疑いをかけられている。皮肉なものだ。運命的ですらある。あの時、親ブッシュが矛先を変えたようなことが、ここでも起きる予感がしている。権力の魔性はブッシュ親子に取りつくようにして、この先、累々たる血の連綿をみるようで身震いする思いである。彼らは戦争を正当化して恥じない悪の権化のようだ。
香港政府の董建華行政長官(Tung Chee-hwa)
国家安全条例に反対する約2万人の香港市民
左から葉劉淑儀(レジーナ・イップ Regina Ip)保安局長(52)、梁錦松(アントニー・リョン Antony Leung)財政長官(51)
香港で3度目の民主化要求デモ
  [香港 13日 ロイター] 香港で今月に入って3度目の大規模集会があり、2万人以上が参加、「我々はより良い政府に値する」として、董建華・行政長官の辞任と自ら指導者を選ぶ権利を求めた。香港は、1997年に英国から中国に返還されて以来、最大の政治危機を迎えている。デモ参加者は、うだるような暑さのなかで日傘を差し、中心部のビジネス街に静かに集結し、「市民に権力を返せ」「董建華は辞任しろ」などと口々に叫んだ。約30の宗教団体や市民運動グループに支援された集会では、民意を反映した選挙制度を実施するよう求めた。2007年と08年に、それぞれ民選の首長選挙、議会選挙を実施するよう訴えている。(ロイター)

 このデモは、香港政府が打ち出した国家安全条例の三本柱(政府転覆、国家反乱、国家機密窃取)への香港市民の意思表示でもあろう。香港基本法23条では、それらの違反者への罰則規定を義務付けている。これに香港市民は自由を拘束するものだと反対しているわけだ。今月1日の50万人デモをきっかけに、これから香港は中国政府の基盤を揺るがしかねない大きなうねりの中核となっていくことだろう。折りしも香港政府内部でも条例に関わっていた中心的な閣僚が、汚職絡みも加わって、相次いで辞任する騒ぎになっている。

2閣僚が相次ぎ辞任=董政権、立て直し加速へ−香港
 【香港16日時事】香港政府の董建華行政長官は16日、葉劉淑儀・保安局長、梁錦松・財政官(いずれも閣僚)の辞表を受理したと発表した。国家安全法制定問題や汚職疑惑が理由とみられるが、閣僚2人の辞任を受け董政権では、内閣改造などの立て直しが加速しそうだ。同保安局長は同法の制定作業を指揮。「個人的な理由」での辞任としているが、国家安全法案は市民の反対で採決が延期、棚上げ状態となったことから、責任を取ったものとみられる。一方、香港政府のナンバー3に当たる同財政官は、税財政を取り仕切る立場にありながら、新車登録税の税率引き上げ発表前に高級車を購入したことが発覚。汚職取締委員会による調査報告が15日に政府に提出されたばかりだった。 (時事通信)

 1日の50万人デモを契機に、香港政府は5日に条例案の一部を修正、7日には採決の延期を表明していた。条例の採決を急いでいるのは香港政府へ指示を出している中国政府であり、このことは中国を主体とした属国としての香港を取り込むことに他ならない。董建華が行政長官でいられるのは、かつての江沢民主席に「主席の続投を望む」と云ったことのオベンチャラ効果の再選にすぎない。香港の人々が自ら香港を治める「港人治港」という言葉も、中国寄りで占められている香港政府閣僚の北京詣でによって、多くの香港市民は屈辱を感じていたはずだ。いまや中国政府は香港での民主化要求デモが、念願の「一国二制度」を揺るがしかねないばかりではなく、それらが中国本へと波及しかねないことで戦々恐々としていることだろう。

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