---03/04/11 (金) ---
 ロイター通信記者の被弾事件で、掲示板の方に軍事アナリスト神浦氏の見解が紹介されていたので、事件を再検証してみた。【参照=米軍 アラブ系テレビメディア攻撃 ロイター通信を砲撃 認めるWha,s New!】 確かにその通りで、冷静な軍事専門家の分析は評価に値するものだと思った。私はホテルに向けられた砲撃写真をもって確定的証拠と思い込んでいたが、およそ2キロの隔たりと弾道計算を加味すれば、標準への着弾確立は甚だ低くなる。米軍の主力戦車M1A1エイブラムスの主砲の有効射程距離は3500メートルで、それからして2キロも離れた命中確立は限りなく少なくなる。しかも主砲120ミリ砲弾がホテルのベランダに当たっていれば、現場の人間はもとよりその周辺は粉々に砕け散ってしまう。それゆえ私は戦車補助武装の主砲同軸機関銃によるものではないか、と考えたわけだ。しかし、実際に着弾したのは20ミリか25ミリの機関砲ということで、エイブラムス主砲同軸機関銃7.62ミリ弾は当て嵌まらない。エイブラムス戦車にはもう一つ砲塔上面対空機関銃が装備されているが、これも7.62ミリと12.7ミリで当て嵌まらない。
 上浦氏はさらに25ミリ弾を装備したM−2ブラットレー戦闘装甲車が付近を徘徊していたとして、その可能性も指摘しているが、15階現場の着弾角度からして有り得ないと判断している。仮にブラットレー戦闘装甲車が撃ったとしても、視界からはホテルの壁しか見えず、標的そのものが壁に隠れてしまう。そうすると、やはり上浦氏のいう海兵隊のAH−1コブラと陸軍のアパッチのヘリによるものと断定されるようだ。上空ヘリなら15階目標は難なく視界に入り、現場に着弾したガラスの弾痕からも角度計算すれば容易に確定されるだろう。その一つは床付近のガラスに着弾しており、地上の射撃からは角度的にも無理がある。隣の部屋に滞在していた日本の田中氏も被弾直前まで上空を飛行するアパッチ・ヘリを撮影していた。
 また神浦氏はテレビカメラを携帯式の対戦車ミサイルと誤認した可能性を指摘しているが、同時にホテルが通信関係者が詰めているといった米軍内部の情報指揮系統の不備もあげている。しかし、これはおかしい。パレスチナ・ビルがバグダッドにおける唯一のメディア通信基地であることぐらい知っているはずだ。したがって、その上空を飛行する米軍ヘリが誤射すること自体考えにくいのだ。むしろイラク軍の狙撃対象としてのビルを警備するぐらいの役目を担うのが当然だと思うのだが、神浦氏のいう誤認説では、米軍ヘリは通信関係者が携帯式の対戦車ミサイルをもっていると想定して周囲を飛行していたことになる。また彼は米軍のアラブ系メディアの攻撃に「これは誤爆や誤砲ではなく、なにか意図的なものを感じます」としながらも「しかしそれを説明することはできません。あまりにも馬鹿馬鹿しいか、凶暴的なことを感じるからです。いくらなんでも、アメリカ軍がそんなことを意図的にやるとは思えません」と結んでいる。残念なことにアメリカ軍はまさしく、その、あまりにも馬鹿馬鹿しい凶暴なことを意図的にやっているのであって、ここにおいて先ほどの通信社被弾事件でみせた冷静な分析能力が、こと米軍の捏造意図的な誤射に関しては思い込みによる限界を露呈する。
 
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