米英軍、バグダッドの大統領宮殿2カ所占拠 反撃限定的
米英軍は7日早朝(日本時間同日午後)、イラクの首都バグダッドの中心部へ侵攻し、フセイン体制の象徴だった大統領宮殿2カ所を占拠した。情報省と、イラク要人が利用するラシッドホテルも一時包囲した。米英軍はイラクの反撃は限定的だとしたが、数カ所で激しい戦闘となり、米側にも死傷者が出た。
作戦は米陸軍第3歩兵師団第2旅団が主軸を担い、戦車70両、戦闘車両60両を連ね南西方向からバグダッド市内に入った。米海兵隊も市の東部に侵攻した。バグダッド中心部の大統領宮殿2カ所を急襲、占拠した。いずれもチグリス川の西岸にあり、大統領施設の中でも最も重要な宮殿とされる。近くにある情報省と、政府の公式会見などにも頻繁に使われたラシッドホテルも一時包囲したが、その後包囲は解かれた模様だ。
米FOXニュースによると、第2旅団は大統領宮殿に星条旗と、師団の本拠がある米ジョージア州の大学校旗を持ち込み、校旗を宮殿に掲げた。ロイター通信によると、イラク軍は首都の東西を結ぶチグリス川の橋に防衛線を張り、首都東部への侵攻を阻止しようとしている。バグダッド東部での激しい戦闘で少なくとも米兵2人が死亡。また、AFP通信によると、バグダッド南端の米軍指揮所が砲撃され、米兵2人と従軍記者2人が死亡した。イラク側にも多数の死者が出た模様だが、全容はわかっていない。レバノンの衛星テレビ局LBC放送は、大統領宮殿近くで銃を捨てて逃げ、川に飛び込むイラク兵とみられる映像を映した。
イラクのサハフ情報相は同日、記者会見し、「私は情報省にいた。米英軍の影もなかった」と語り、大統領宮殿の占拠を全面否定した。同時に、イラク国民に徹底抗戦を改めて呼びかけた。米国防総省当局者は英BBCに対し「これは我々の力を示す作戦だ」と話した。米中央軍前線司令部のブルックス准将は作戦の狙いについて明言を避けつつ、「部隊が首都中心部にとどまるかどうかは現場の指揮官の判断にゆだねる」と話した。ブルックス准将はまた、イラク軍について「全体的に弱体化しているが、指揮系統は完全に破壊されたわけではなく、依然として軍事的な脅威だ」とも話した。
第3歩兵師団と大統領警護隊による大統領宮殿占拠の攻防戦は、チグリス川を挟む向こう岸からのカメラでその一部始終が中継されていた。カメラの設置場所はパレスチナ・ホテルというが、中継された映像を見るかぎり、その南側にもう一台カメラが設置されていたようだ。当初、イラクのサハフ情報相はパレスチナ・ホテル付近でインタビューに応じていた。アメリカ側が宮殿に浸入したと発表したのに対し、サハフ情報相がそれを真っ向から否定した時のインタビューである。この時、サハフ氏は「情報省からここまで(バレスチナ・ホテル)歩いて来れるのに、宮殿に進行したというアメリカ軍は何処にも見当たらない」として、第3歩兵師団の宮殿占拠を根拠のない大嘘と断じている。サハフ氏がいたとされるパレスチナ・ホテルにはLBC放送がチグリス川に向けたカメラで宮殿入り口での攻防戦を撮っていた。写された映像のアングルから屋上に設置されたものと思われる。世界中の人々が米軍戦車の侵攻の様子を、チグリス川の岸沿いに逃げるイラク兵士を見ていた。そうした中継映像を見る限り、誰もがイラク軍の劣勢は否めないと思ったことだろう。私には、大統領宮殿においては劣勢もなにも、攻防戦の形態すら示していないように見えた。ときおり上がる土煙と炎でさえ、米軍の自作自演ではないかと見間違えるほど、子供の戦争ごっこのようで緊迫感は感じられなかった。そのうち「第3歩兵師団が大統領宮殿を完全占拠した」とのニュースが流れ、再びサハフ氏が登場、全面否定する。この時のインタビューはイラク情報省の屋上で行われたとマスコミに説明された。するとサハフ氏はパレスチナ・ビル付近から情報省までインタビュー場所を移動したということになる。テレビにゲスト出演していた日本の軍事アナリストは云った。「この非常事態にのこのこ歩いて行けるわけがない」【参照=バクダッド大統領宮殿略図&映像】 何らイラク軍の抵抗なく、大統領宮殿に進行し瞬く間に占拠してしまう米軍、何から何まで奇妙でおかしなことばかりだった。そこに大統領宮殿は10日前に放棄されていた、とのニュースが流れる。
「大統領宮殿は10日前に放棄」とアーネット記者報道
【台北=若山樹一郎】イラク国営テレビに出演して先月末に米NBCテレビを解雇されたピーター・アーネット記者が7日夕、台湾の有線テレビ「TVBS」のバグダッド特派員として同テレビに出演し、「米軍部隊が制圧したバグダッド市内の大統領宮殿と政府施設は、イラク側が10日前に放棄していたものだ」と述べた。同記者はまた、「米軍の包囲は市東部には及んでいない。主要道路は抑えているが、市外へ通じる道は数百本あり、市民や政府当局者は自由に出入りしている」と解説した。TVBS社は、同記者がNBCを解雇された後、特派員契約を結んだという
これが本当だとすれば、フセイン大統領ならびにその側近首脳たちは最初から大統領宮殿での攻防は諦めていたことになる。そのフセイン大統領の安否は今もってつかめていない。サダム・フセインへの暗殺も辞さないとして、イラク戦争の大義をフセイン政権の転覆という一点に絞り、民間への誤爆を極力避けイラク国民の解放を主張してきたペンタゴンは、ブッシュの確約はどうなるのだ?!事態は全く逆の結果となっているではないか。その逆の結果こそ、アメリカ政府は最初から予想かつ望んでいたことではないのか?自国の国益のためには多少の犠牲者が出ることは仕方がないとして、結果的に多少では有り得ない多くの犠牲者を出してしまったことへの責任は誰がとるのか。大金持ちだというラムズフェルド国防長官に、戦争における犠牲者は単なる捨て駒にしか思えないようだ。
17時現在、新大統領宮殿の写真を見ていたら、今日放映されたウルの神殿に似ていることに気付く。大統領宮殿は一万点にも及ぶというシュメール文明遺跡の中に建てられていたのだ。私が少し前につくった3DCGシュメール遺跡(想像)と比較しても、新大統領宮殿は明らかにそれらを意識して作られたと思われる。バビロンのライオン像などは大統領宮殿のすぐ傍にあるくらいだ。人類文明の発祥の地としてのイラク、いまだシュメール文明の謎は多く、その遺跡に摺り寄せるように建てられた大統領宮殿もまた謎を残している。ちなみに大統領宮殿と新大統領宮殿は別個に建てられ、現在米軍が占拠したとされるのは「新」の無い方である。ニュースでもバスラの大統領宮殿が紹介されたが、大統領宮殿といわれるものはバグダッドのほかバスラ、モズルなどイラク全土に九ヶ所存在する。
 |
 |
 |
 |
バビロンのライオン像左に大統領宮殿が見える |
左の拡大 |
|