03/03/14 (金)
犯罪組織の数人を逮捕
セルビア首相暗殺事件03/03/13-セルビア議会のメンバーがジンジッチ首相の死を悼み、花輪を捧げる
REUTER/Marko Djurica03/03/13-ベルグラードで、ジンジッチ首相の死にロウソクを燈して哀悼の意を捧げる市民と、それを守る武装した警官。
REUTER/Petar Kujundzic犯罪組織の数人を逮捕 セルビア首相暗殺事件
【ブリュッセル13日共同】ベオグラードからの報道によると、セルビア・モンテネグロを構成するセルビア共和国のコラチ副首相は13日、ジンジッチ首相暗殺事件に関与したとみられる犯罪組織の数人を逮捕、主犯格とみられる同組織の幹部が逃亡中だと発表した。逮捕されたのはセルビア最大規模の犯罪組織「ゼムン・クラン」メンバーだが、逮捕した人数や容疑などの詳細は不明。捜査当局は、同組織のメンバー約20人が事件に関与したとみている。副首相は「捜査当局が昨夜、容疑者数人を拘束したが、容疑者の大部分は潜伏している」とした上で、主犯格とみられるルコヴィッチ幹部が逃亡していると述べた。同氏はミロシェヴィッチ政権下で秘密警察幹部だった。ジンジッチ政権は、欧州連合(EU)加盟を目標に、人身売買や麻薬密輸など組織犯罪との対決姿勢を強めていた。(共同通信)
セルビア・マフィアの容疑と逮捕で事件は一件落着したかのようにみえる。しかし、この暗殺事件は政治色が濃厚ゆえに、実行犯とその背景にある黒幕の存在を考慮しなければならないだろう。バルカン半島のマフィアについては「ユーゴ空爆編」第9回-KLAマフィアから米政界に流れた《黒い金》&『ユーゴ空爆』編・第4回-マフィアに汚されたコソボの大地に詳しい。これによれば「ゴールデン・クレセントのケシはトルコで精製され、バルカン半島経由でヨーロッパに持ち込まれている。麻薬捜査関係者の間ではバルカン・ルートと呼ばれており、すでに1990年代前半よりコソボはヨーロッパに密輸されるへロインの一大中継点となっていた」とのことである。「ゼムン・クラン」もまたその渦中にあるものと思われるが、その呼称からゼムンの町を根城とするマフィアなのだろう。さらに主犯格ルコヴィッチがミロシェヴィッチ政権下の秘密警察幹部であったことは、ミロシェヴィッチ率いる旧ユーゴ政府とマフィアの関係を容易に推測させてくれる。これは推理小説家が飛びつきそうな興味深い背景ではある。ミロシェヴィッチとMI6との関係を絡めれば、その筋書きはさらに奥深い展開を示すことだろう。
またここではバルカン・ルートにイタリアを示唆した次のような記述がある。「1998年夏、ミラノのへロイン密輸組織の大ボス、アジム・ガジがイタリア警察に逮捕された。この男はコソボの首都プリシユティナ出身で、ヘロイン密売の莫大な利益を使って、KLA(コソボ解放軍)メンバーである彼の兄弟たちのためにマシンガン、ロケット・ランチヤー、手榴弾その他の武器を大量に供給していた事実が判明している」 イタリアのミラノにはモルヒネからヘロインをつくる精製所がある。その生成過程で使用する無水酢酸はそれと分かる悪臭を放ち、ためにシチリア出身のイタリア・マフィアたちはそれを克服するための密室に換気装置をほどこした精製所を、ミラノに三ヶ所設けていた。こうした精製所はミラノに限らず、ローマのベロナにもある。そのベロナでは1982年10月、市民2万人による抗議デモが展開しているが、すでにコルレオーネを根城にするマフィアのボス、レオルカ・バガレッラが逮捕されていた。ちなみにコルレオーネ町は映画「ゴッドファーザー」で有名になっている。当初バガレッラは逃亡したが、六ヵ月後に逮捕された。しかし・・・捜査の指揮をとっていたジュリアーノは1978年7月19日、16発の凶弾によって殉職している。彼の相棒はトム・ホリディというDEA(合衆国麻薬取締り局)で、国家警察パレルモ本部長代理ジョルジョ・ジュリアーノとは合同捜査に当たっていた。ホリディは本国からフレンチ・コネクションの捜査記録を入手していた。ここでいうフレンチ・コネクションとは同名の映画のような特定の密輸事件を指すのではなく、一連の密輸事件の全体をカバーするものである。彼らはこの資料によってトルコ人麻薬密造技術者イシュメット・コスチュの存在を突き止めているが、奇しくもコスチュは映画「フレンチ・コネクション」に登場するフランス人麻薬密輸業者ジャン・ジャーンと関わっていた。
【参照】イタリア・マフィア関連=1992年5月15日-16日-17日-19日-20日-21日
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