03/03/13 (木)
セルビア首相、撃たれ死亡
非常事態宣言の発令も検討
暗殺されたセルビア共和国ゾラン・ジンジッチ(Zoran Djindjic)首相
(AP Photo/Srdjan Ilic)暗殺現場の首相府前で現場検証をする警察関係者
(AP Photo/Srdjan Ilic)セルビア首相、撃たれ死亡 非常事態宣言の発令も検討
セルビア・モンテネグロを構成するセルビア共和国のジンジッチ首相(50)が12日、ベオグラード中心部の首相府前で腹と背中を撃たれ、病院に運ばれたが死亡した。AP通信によると、犯人と見られる2人の男が拘束された模様だ。政府はコビッチ副首相を首相代行に任命し、軍に大幅な治安権限を与える非常事態宣言の発令を検討している。
現地からの情報によると、同日午後1時ごろ、警護の車に守られた首相の車が玄関の前に止まった際、数秒の間隔を置いて2発の銃声が聞こえた。近距離から短銃で撃たれたとの情報や、近くのビルの屋上から狙撃されたとの情報もある。先月には、空港に向かう首相の車列に、トラックが突然割り込み、衝突しようとする暗殺未遂事件が起きていた。犯人の身元や動機ははっきりしないが、同国では政治的、経済的な対立が絶えず、これまでも有力者に対する暗殺事件が続いていた。ジンジッチ首相は00年10月にユーゴスラビア連邦のミロシェビッチ政権を崩壊させた中心人物。その後、セルビア共和国首相に就任した。セルビア・モンテネグロは先月初め、ユーゴ連邦を改編し、国家連合として発足したばかり。
【参照サイト】四年前の日誌ではクリントンの「バルカン半島で残虐行為を見過ごせば、さらに残虐行為を招くだけだ」との言葉を引用しているが、そのクリントンがセルビアに敵対するボスニアのイスラム系住民へ武器供与を約束すると、さっそくイギリス政府から圧力がかかっている。曰く「ボスニアに武器を供与すれば暴力のレベルがエスカレートするだけで、平和決着に向けたセルビアでの我々の努力が無駄になる」・・・しかし、一方でイギリスは南アフリカにイラン向けという口実で大量の火薬を発注させると、その大部分をユーゴに回していたのだった。奇妙なことに、ミロシェヴィッチが自国のユーゴスラヴィアを「大セルビア」と改称して占領政策を推し進めると、それはそのままイギリスのMI6が作成した「大ユーゴスラヴィア」計画に沿ったものとなった。これは偶然だろうか?ミロシェヴィッチの占領政策がその残忍性をあらわにしても、クリントン大統領の前任ジョージ・ブッシュは何故か沈黙を守りつづけていた。国連はパトロールはしてもセルビアの侵攻を阻止しようとはせず、むしろボスニア軍がセルビアに奪われた土地を奪回しないよう防いでいる有様だった。サラエボの国連難民高等弁務官の事務所から出ていく人道援助のためのトラックからは大量の弾薬が発見された。さらにアフリカから空輸された人道援助物資(?)からはロケット弾や自動小銃などの大量兵器が発見され、それら物資運搬はイギリス大使によって行われていた。ロシアもまたセルビアを後ろ盾とするゲリラに大量の武器を流し込んでは、そのために起こるクロアチアでの惨状を静観していた。400万人以上の難民と死傷者50万人とも云われるユーゴの悲劇とはそのようなものであった。
バルカン紛争地図
外務省-セルビア・モンテネグロ
旧ユーゴ便り-第61回配信「動員力ナンバー1は?」
旧ユーゴ便り-第59回配信「政治家に夏休みはない」
旧ユーゴ便り-第37回配信 <ユーゴ政変特集・2>2時間「革命」(?)
田中宇-バルカン半島を破滅に導くアメリカの誤算 1999.7.12
田中宇-ユーゴ戦争:アメリカ色に染まる欧州軍 1999.4.5
日誌1999/04/06-激化するコソボ情勢を考える(武器密輸など)
今度のセルビア首相暗殺の背景には「政敵の妨害以外は何もしない」コシュトゥニツァと、「改革には意欲的だが国王のように振舞う」ジンジッチの対立構造があると云われる。まだ詳しい情報が入らないので何とも云えないが、先に書いたイギリスやアメリカ、そして国連のありようは今度のイラクへの武力行使云々にも無関係ではあるまい。
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