1983年3月23日、突如として「スターウォーズ計画」を発表したレーガン大統領は、SDI(戦略防衛構想 Strategic Defense Initiative)の元、翌1984年6月にはミサイルを撃ち落すテストに成功したと誇らしげに発表する。それから17年後、このテストでは標的に発信装置が隠されていたことが暴露された。標的がミサイルを誘導したのだから、命中するのは当然だ。先日書いたアメリカとイスラエルの共同開発THEL(戦術高エネルギー・レーザー兵器 Tactical
High-Energy Laser weapon)は、そのSDIの一環として推し進められてきたもので、主に中東戦争におけるロケット弾防衛を想定して研究されてきた。ところが、ヒズボラが射程100キロメートルのロケット弾をイランから入手したため、それに対抗できなくなってしまった。これをアメリカがATL(陸軍戦術レーザー)として継続研究、北朝鮮の長距離ロケット弾防衛に採用しようとしているわけだ。(昨日の日誌参照) クリントン大統領の時代に入ると、レーザー光線からロケットでミサイルを撃墜するNMD(国家ミサイル防衛構想 National Missile Defense)と移行する。宇宙空間に配備された衛星からミサイルを察知してのロケット追撃という計画だが、実験の度重なる失敗によって3600億円の損失を計上、SDIからのミサイル防衛予算は8兆円に膨れ上がった。
かくして膨大な開発費を回収するために、クリントンは日本にTMD(戦域ミサイル防衛 Theater Misile Defense
system)用軍事偵察衛星の購入を迫り、1998年12月、日本は情報収集衛星という名目で4基購入を約束してしまう。その衛星打ち上げ総額2000億円、維持費毎年50億円、最終的には5000億円を上回る。それに加え、これらをNMDのシステムに沿ってイージス艦ならびに監視部隊編成など総動員すれば2兆円はかかると見積もられている。しかも5000億円を超える予算をかけた偵察衛星の寿命は4年しかないという。イージス艦は1990年5月三菱重工の長崎造船所で起工、1998年までに三菱重工業3艦、石川島播磨重工業1艦が建造された。アメリカへのライセンス料支払いを加算すれば、国産はアメリカ国内価格の2倍になり、イージス艦4隻で5000億円近い買い物となる。TMD稼動時にかかる予算2兆円に、このイージス艦建造費4隻分5000億円を加える必要がある。さらに2000年10月に来日したロッキード・マーティン社のヴァンス・コフマン会長は、同社が開発してきたイージス艦2隻の受注を仄めかし、次期哨戒機開発への参加を示唆していた。そして昨日のニュース・・・
イラク、U2偵察機の上空査察を無条件受け入れ
イラクの大量破壊兵器査察で懸案になっていた米偵察機U2などによる上空からの査察について、イラク政府は10日、無条件で全土の飛行を受け入れる意向を国連側に伝えた。ドゥーリ国連大使が、サアディ大統領顧問からの書簡を国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)に手渡した。
イラクはこれまで、国連査察とはいえ米が実施するU2の飛行を警戒し、飛行禁止空域での安全が保証できないなどとして拒否し、ブリクス・UNMOVIC委員長らのバグダッド訪問時も、要求に対し明確な返答を避けていた。今回の受け入れは、14日の安全保障理事会での査察報告を前に協力姿勢をアピールし、武力行使をめぐる米英と独仏の溝などを背景に、安保理の意見を分断する狙いがあるとみられる。ドゥーリ大使によれば、イラク政府はフランスとロシアの査察飛行も同時に受け入れる。米偵察機のみによる査察飛行を避けたいとの意向があるようだ。同大使はまた、イラク政府が、イラク人が大量破壊兵器を保有したり取り扱ったりすることを禁じる法制度を、出来る限り速やかに施行することを明らかにした。この法制度は湾岸戦争直後の91年の国連決議でイラク側に求められており、ブリクス委員長らの訪問時の協議で懸案になっていた。ドゥーリ大使は国連内で記者団に、こうした譲歩を「イラク政府は決議の履行にベストを尽くしている」と強調。14日の査察報告について「米英は否定的に見るだろうが、安保理は米英だけではなく15カ国で構成されている」と語った。
イラクの屈辱的ともいえる譲歩もアメリカとの直接対戦を避けようとするために他ならないが、U2偵察機の査察受け入れによってイラクの戦争回避が本気であることを窺がい知ることが出来よう。U2偵察機が単に上空から何もかも「見る」に留まらず、その機上監視システムは眼下の範囲の全てを「聴く」能力をも兼ね備えている。丸裸にされても戦争だけはしたくない、イラクの切羽詰った窮状が伝わってくるようだ。U2偵察機は先のロッキード・マーティン社の前身ロッキード社が開発したもので、元々CIA長官アレン・ダレスの要請によって製作された。また前述のヴァンス・コフマン会長が来日して示唆した次期哨戒機開発とは、22兆円の戦闘機連隊JFS(統合攻撃戦闘機 Joint Strike Fighter)を視野に置いたものだ。アメリカの見境のない軍事増強はまるで宇宙人とでも戦闘をするようではないか。かつてSDI構想をぶちあげたレーガンの「スターウォーズ計画」を彷彿とさせてくれる。
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