『兵法三十六計』並べ替え 〔暫定稿〕    もどる

 

 「三十六計」を次のカテゴリーで分けてみた。

  【一】 騙し・撹乱・心理トリックによる攻撃 …… あの手この手の詭計の数々(20計)
  【ニ】 調略・通謀・裏切りによる攻略    …… 面従腹背ならぬ面和腹背の策謀(6計)
  【三】 もっぱら正面攻撃による撃破     …… 概ね優勢時の詭計味うすい策略(6計)
  【四】 静観・守り・回避の態勢        …… 積極攻勢を控えた際の対応例(4計)

 

■【一】 騙し・撹乱・心理トリックによる攻撃 ■

〇一 瞞天過海 - 敵に繰り返しやるぞやるぞと行動して慣れさせておき油断を誘って攻撃する。
       ・カムフラージュの手段を用いて相手を誘い、それにつけこんで勝利を収める。

〇三 借刀殺人 - 同盟者や第三者が敵を攻撃するよう仕向ける
       ・自分は直接手を下さずに、他の者を利用して敵を攻撃する。
       ・敵の力、敵の経済力、敵の知謀などを巧みに利用して離間策を講じ、崩壊に追いやる。
          ……これこそ「借刀殺人」の真髄。

〇六 声東撃西 - 東を攻めると言って西を攻める陽動作戦
       ・陽動によって敵の動きを翻弄し、防備を崩してから攻める。
       ・その際まず、敵を撃つと見せかけて陽動作戦を展開する。
         それにつられて、敵が東に移動して守りを固めれば西が手薄になる。
          手薄になった西をすかさず攻撃を仕掛ける。
          ……ただし、敵の指揮官が無能で指揮系統が乱れていることが前提となる。

〇七 無中生有 - 偽装工作をわざと露見させ、相手が油断したところを攻撃する。
       ・ありもしない噂を流し、相手の判断を狂わせる。
       ・無いのに有るように見せかけ惑わしたのち襲いかかる 。
          ……例:わら人形作戦

〇八 暗渡陳倉 - 偽装工作によって攻撃を隠蔽し、敵を奇襲する。
       ・ 陽動作戦によってA地点を襲うように見せかけてB地点を襲う。

一〇 笑裏蔵刀 - 敵を攻撃する前に友好的に接しておき油断を誘う
       ・友好的な態度で接近し、相手が警戒心を解いたところを見すまして一挙に襲いかかる。
       ・内心では相手をだましたり襲ったりする野心を抱きつつも、
         表面的には友好的で相手にへりくだる姿勢を見せる。

一二 順手牽羊 - 敵の統制の隙を突き、悟られないように細かく損害を与える。
       ・隙を見つけたら、どんなに小さな隙でも、すぐさまつけ込まなければならない。
       ・利益になることなら、どんなに小さな利益でも、ためらわずに獲得しなければならない。
         どんなに小さな不手際でも、敵の不手際につけこむことができれば、
          それだけ勝利に近づく。
       ・敵の隙につけこんで、がめつく戦果を拡大する。その成立条件として、
         一.遂行すべき本来の目標があり、
         二.その目標とは別に容易に手にはいる目標が目の前にあり、
         三.その目標に手を出しても、本来の目標追求に支障を生じない。

一三 打草驚蛇 - 状況が分らない場合は偵察を出し、反応を探る。
       ・探りを入れて相手の動きを察知する。
       ・蛇を打つかわりに草を打って蛇の情況を知ろうとするもので、一種の「いぶり出し作戦」。

一五 調虎離山 - 敵が要害にいる時はそこからおびき出して攻撃する。
       ・敵を本拠地から誘い出し、味方に有利な地形で戦う。
         一.敵が守りの堅い城や要害の地に立てこもっているときは、
            それを放棄するように仕向ける。
         二.正面対峙しているときは、敵の攻撃方向を他の地点にそらし、
            正面からの圧力を緩和する。
         そのための誘い出すトリックとして、たとえば、
          食いつきそうなエサをばらまいておびき出し、
          あるいは、わざと隙を見せて相手に攻めさせる。

一七 抛磚引玉 - 敵が食いついてきそうなエサをばらまき、敵をおびきだす
       ・自分にとっては必要のないものを囮にし、敵をおびき寄せる。
          ……エビでタイを釣る。ただし、エサをエサでなく見せかける工夫が重要。

二〇 混水摸魚 - 敵の内部を混乱させ、敵の行動を誤らせたり、自分の望む行動を取らせる。
       ・敵の内部混乱により戦力が低下し指揮系統が乱れた状態につけこみ思うように操縦する。
         その際肝要なのは、
         一.相手の判断を迷わすような撹乱工作をし指揮系統を乱してつけこむ。
         二.相手の混乱の中で最も動揺している勢力や派閥に狙いをつける。

二一 金蝉脱殻 - 現在地にいるように見せかけ、敵に気づかれないように移動する。
       ・あたかも現在地に留まっているように見せかけ、主力を撤退させる。
       ・あくまで現在地にとどまっていると見せかけ、敵を釘付けにしておき
         友軍には疑惑を懐かせず、敵には侵攻する意欲を持たせないでおいて、
          密かに主力を移動する。

二六 指桑罵槐 - 本来の相手ではない別の相手を批判し、間接的に人心をコントロールする。
       ・Aを正面から批判できないときに、Bを叱責することで間接的にAを批判する。

二七 仮痴不癲 - 愚か者のふりをして相手を油断させ、時期の到来を待つ。
       ・利巧ぶって軽挙妄動するより、バカのふりして行動を控え、相手の警戒心をやわらげる。
         成功の鍵は、もっぱら「仮痴」の演技力にかかっている。

二八 上屋抽梯 - 敵を巧みに唆して逃げられない状況に追い込む。
       ・わざと隙を見せて敵をひきつけ、後続部隊を断ち切って包囲殲滅する。
       ・二階に上げておいて梯子を外す。軍事的策略としては、
         一.エサをばら撒いて敵を驀進させ、後続部隊との連携を断ち切ってこれを撃滅。
         二.自ら退路を断って背水の陣を敷き、兵士が必死の覚悟で戦うように仕向ける。
       ・この策略は、ライバルを陥れる策略としても用いられる。

二九 樹上開花 - 小兵力を大兵力に見せかけて敵を欺く。
       ・さまざまな手段を用いて優勢に見せかければ、
         弱小な兵力でも強大に見せることができる。

三〇 反客為主 - いったん敵の配下に従属しておき、内部から乗っ取りをかける。
       ・客の立場にある者が主人公の座に居座る策略。
         この策略を実現するためには、時間をかけて順を追ってすすめる。
          (1)まず客の座をかちとる。(2)主人公の弱点を探す。(3)行動を開始する。
          (4)権力奪取する。(5)主人にとって代わる。(6)権力を固める。
         客の座にとどまっているうちは軽挙妄動せず、隠忍自重して時を待つ

三二 空 城 計 - 味方が劣勢で勝算がない時、ことさら無防備に見せて相手の判断を狂わせる。
       ・自分の陣地に敵を招き入れることで敵の警戒心を誘い、攻城戦や包囲戦を避ける。
       ・見方が劣勢で勝算が立たないとき、
         わざと無防備のように見せかけて敵の判断を惑わす

三三 反 間 計 - 偽の情報を流して敵を内部分裂させる。
       ・スパイを使って敵内部を混乱させ、自らの望む行動を取らせる。
       ・敵の諜報員を利用して、偽の情報を流して敵を離間したり、
         疑心暗鬼に陥れて判断を惑わす。

三四 苦 肉 計 - 「三三 反間計」を成功させるため、わざと自分を傷つけて相手を信用させる。
       ・人間というものは自分を傷つけることはない、と思いこむ心理を利用して敵を騙す。
       

 
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【ニ】 調略・通謀・裏切りによる攻略 ■    [トップへ]

一四 借屍還魂 - 死んだ者や他人の大義名分を持ち出して、自らの目的を達する。
       ・利用できるものは何でも利用して勢力の拡大を図る
         利用するための前提条件として、相手は勢力が弱く、しかも利用価値を持っていること。
          例えば、大義名分のためにはるか昔の事を持ちだす。
         利用の態様としては、
         自己防衛のための防波堤。勢力拡大のための隠れ蓑。地盤拡大のための踏み台、など。
          ……相手に利用価値がなくなれば、乗っ取ってしまう

二三 遠交近攻 - 遠くの相手と同盟を組み、近くの相手を攻める。
       ・戦線が膠着したときは、地理的に近くの敵を攻撃するのが有利。
       ・遠方の敵とは、政治目的を異にしていても、一時的に手を結んで事にあたるようにする。

二四 仮道伐* - 小国の危機に乗じてその国を併呑する
        (*=将の右側(つくり)の右に虎を並べた漢字)
       ・相手が敵から攻撃を受けて救援を求めて来たときなど、
         すぐに救援軍を送って影響力を拡大し、支配下に置く
         また、いったん同盟して利用した者も後で攻め滅ぼす

二五 偸梁換柱 - 相手を抱きこんで堕落させ、骨抜きにしてしまう。
       ・相手を骨抜きにして抵抗する意思を失わせ、攻め滅ぼしやすくしたり、
         こちらの言いなりに操縦できるようにする。
         たとえば、人事を遠隔で操作し、有能な人材をそのポストから降ろすことで、
          その組織の弱体化を謀る。
       ・あるいは、敵の布陣の強力な部分を他者に押し付け、自軍の立場を優位にする。

三一 美 人  計 - 土地や金銀財宝ではなく、あえて美女を献上して敵の力を挫く。
       ・女を使って相手のやる気をなくさせる
         男を虜にするにはそれだけの魅力を備えた女でなければならない。

三五 連 環 計 - 敵が互いに足をひっぱりあうようにさせ、弱体化させてから攻撃する。
       ・敵と正面からぶつかることなく、複数の計略を連続して用いて勝利を得る。
         はじめの計略で敵をまいらせ、つぎの計略で攻撃を加える。
          このように、一次二次と二つ以上の計略を組み合わせながら、
           まず消耗させ、ついで撃滅するのがこの計略。

 
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【三】 もっぱら正面攻撃による撃破 ■    [トップへ]

〇二 囲魏救趙 - 敵を一箇所に集中させず、奔走させ疲れさせてから撃破する。
       ・集中している敵を攻撃するよりまず相手の兵力を分散させ、その上で攻撃したほうがよい。
       ・こちから先制攻撃をかけるよりは、相手の仕掛けを待って、そのうえで制圧したほうがよい。

〇五 趁火打劫 - 敵の被害や混乱に乗じて行動し、利益を得る。
       ・敵が弱体化しているときは、温情などかけずに一気に攻撃して葬ってしまう。
       ・敵を苦境に追い込んだときは、相手の弱みにつけこんで、
         嵩にかかって攻めたて、一気に決着をつけなければならない。

一六 欲擒姑縦 - 敵をわざと逃がして気を弛ませたところを捕らえる。
       ・包囲しても逃げ道を用意しておいて、反撃の被害を最小限に抑えながら追い詰める。
       ・完全包囲した敵は死兵となり必死になって反撃してくるので、自軍の損害が大きくなる。
         この場合は、逃げ道を開けておいてやると敵の気が緩むのでやっつけやすくなる。

一八 擒賊擒王 - 敵を壊滅させるには、敵の中枢部を壊滅させなくてはいけない。
       ・敵の主力の壊滅や中心人物を捕らえることで、敵を弱体化する。
       ・敵の主力あるいは中枢部を壊滅させなければほんとうに勝ったことにはならない。

一九 釜底抽薪 - 敵軍の兵站や大義名分を壊して、敵の活動を抑制し、あわよくば自壊させる。
       ・敵が強力なときは兵糧責めしたり、有力な敵将を君主と離間させたりして、
         その根本の問題を解決しなくてはならない。
       ・敵の勢力が強大で抵抗できないときは、その気勢を削いで骨抜きにする。
         そのためには、根本に手をつけなければ真の解決にはならない。
         つまり、敵の死命を制するような弱点に狙いをつけなければならない。
          効果的な方法としては、例えば、敵の補給を絶つ。敵兵の士気を失わせる。

二二 関門捉賊 - 敵が弱体化しているときは、一気に攻撃して滅ぼしてしまう。
       ・敵の退路を閉ざしてから、包囲した敵をあくまで攻めたて一網打尽にする。
         ただし、窮鼠猫を噛むの敵の反撃に注意しなければならない。
       ・この策略を実行する場合の前提条件として、
         一.敵が少数で弱いこと。
         二.相手を取り逃がしたら、将来さらにおおきな禍根を生じる場合。

 
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【四】 静観・守り・回避の態勢 ■    [トップへ]

〇四 以逸待労 - 直ちに戦闘するのではなく、まずは敵を撹乱して主導権を握り、疲弊を誘う
       ・敵を苦境に追い込むには必ずしも攻撃を加える必要はない。
         しっかりと守りを固めて敵の疲れを誘えば劣勢から優勢に転じることができる。

〇九 隔岸観火 - 敵が内紛している時はそのまま相手が自滅するのを待つ
          ……相手が自滅すまで高みの見物をきめこむ。

一一 李代桃僵 - 不要な部分を切り捨て、全体の被害を抑えつつ勝利する。
       ・大戦果を挙げるために局部的な損害をあえて受け入れる。
       ・皮を斬らせて肉を斬り、肉を斬らせて骨を絶つ。
          ……捨て駒作戦

三六 走 為 上 - 勝ち目がないならば、戦わずに全力で逃走して損害を避ける。
       ・上記35個の計略をたてても勝利の見込みがない場合は、戦いを避け
         いったん退却し再起をはかる。
          ……中国の兵法書には当たって砕けろ式の玉砕戦法はない

 
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《 参考資料など 》

・『兵法三十六計』 守屋洋 著 三笠書房
・「兵法三十六計」 Wikipediaより
・その他いくつかの関連Webサイトを参照
・「兵法三十六計」に関心をもった直接のきっけはこちらの記事(の元記事)を読んだことから
 ◎ 尖閣を守れ!中国撃退の秘策…相手の「戦いのバイブル」逆手に (ZAKZAK)
   ちなみにここで分類したように、三十六計のうち「【一】 騙し・撹乱・心理トリックによる攻撃」が
  半数以上も占めることから、「兵法三十六計」はまさに詭道の集大成と呼ぶべき修羅の戦術論。

(※)青文字はキーワードと思えるもの
   赤文字はその中でも(個人的に)注目するもの


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