つくば母子殺人事件の謎
おーる工房
1994年11月4日、神奈川県横浜市の横浜港で野本映子さん(31)と愛美ちゃん(2)優作ちゃん(1)の遺体が発見される。犯人として逮捕されたのは映子さんの夫であり、若き医師だった野本岩男(29)だった。マスコミは被害者である映子さんのプライバシーを次々と暴き、家庭をかえりみない悪妻と書きたてたが、複数の愛人をもつ野本受刑者が生活費さえ満足に入れていなかったことには触れられていない。そして横浜地方裁判所は「岩男氏本人に計画性はなく、衝動的な犯行であり、夫婦生活の破綻は映子さんにも原因がある」として無期懲役の判決を下すのである。これはマスコミが映子さんの私生活を赤裸々に暴き立てた影響もあって、裁判官に夫婦仲が悪いという印象を与えたためと思われた。映子さんの母親の堀崎愛子さんは事件の事実関係そのものに疑問があるとして、検察庁に上申書を提出している。
遺体解剖された優作ちゃんの胃の中からはチョコレートが検出されているが、そのチョコレートは映子さんの知人(女性)が事件の前日に訪れた時に優作ちゃんが食べたものであった。居間で話をしている最中に、優作ちゃんが包装紙ごとチョコレートを食べようとしたので、映子さんが包装紙をとってやって食べさせたチョコレートであった。この時、約午後七時半。そして知人の女性が帰ろうとして玄関口に立った時に、野本岩男受刑者が車で帰ってきた。車から降りた野本氏がコンビニのビニールのようなものを手にぶら下げていたのを知人が見ていた。この時、午後八時頃だったという。
野本受刑者の供述によると、12月29日の早朝に一階の居間において妻の映子と女性関係のことで口論、感情的になった映子さんは台所から紐を持ち出してきて自分の首を絞めるように挑発、最初は脅かすつもりだったが思わぬ抵抗を受けたため本格的な殺意を抱いて絞め殺してしまった、というものであった。これが翌朝午前五時半だったと野本受刑者は供述している。そして午前六時〜八時にかけて、二階で寝ていた二人の子供を絞め殺したのだという。
そうすると優作ちゃんがチョコレートを食べてから十時間以上経過したことになる。これではチョコレートが胃に吸収されてしまい、解剖の際にチョコレートが検出されることはないはずである。法医学者の上野正彦氏は語る。「チョコレートは固形ではありませんから、そして炭水化物ですから、胃袋を通過するのは早いのです。したがって本当に残っていたとすれば、食べてから一時間以内の犯行が推理されます。」野本受刑者の供述では犯行時間が遅すぎるのだ。
殺害の二日後に遺体は横浜港に投げ捨てられた。遺体はビニール袋に詰められてロープで縛られていた。しかし、ここで奇妙なことに母親の愛子さんは気づいた。三体の遺体のひとつが「俵結び」という特殊な結び方がされていたのだ。これは昔の農家が俵に米を詰めていた頃の結び方で、現在では五十歳以上の農作業経験者にしかできない結び方であった。野本受刑者が俵結びを知っている公算は少なく、実況検分での野本受刑者による梱包の再現においても、彼は一般的な縦結びしかできなかった。それでは誰が・・・事件が闇に葬り去られようとしている今、ただ真実が知りたいと映子さんの母、愛子さんは訴えているのである。【1999/12/24、フジテレビ放映「世紀末衝撃SP今夜ベールがはがされる!大追跡」より抜粋要約】
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一体の結び目が俵結びになっている | 映子さんの預金通帳 | 残高488円、数百円の月が続いていた |