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【02/04/11 (木) 】

米国務長官訪問直前、イスラエル軍が24の町村から撤退
チュニジアで爆発、5人死亡 イスラエルへの抗議か
調停工作への意欲示す パウエル長官イスラエルへ
フセイン大統領、パレスチナに支援金1000万ユーロ
パウエル米国務長官がイスラエル入りへ
パウエル長官、12日から仲介始める
米、パレスチナ自治政府とアラブ諸国にテロ対策求める
アラファト議長との会談に期待 パウエル国務長官
国連安保理、4者共同声明を支持 中東問題
走行中の路線バスで自爆テロ、9人死亡 ハイファ近郊
イスラエルがバチカンの解除要求拒否 聖誕教会包囲

核爆弾による迎撃検討か、米国防長官前向き 米紙報道
北欧で難民への風当たり強まる 米テロ事件がきっかけ
スリランカ・LTTEの指導者、12年ぶりに公の場に
国際刑事裁判所発足へ、批准60カ国を突破 国連
NY世界貿易センタービル関連の損失は3700億円
ベネズエラのゼネスト無期限化 軍将軍も政権批判
中性子星より密度の高いクオーク星を発見 NASA発表
金大中拉致事件テーマの映画「KT」、日韓で同時公開へ
自衛隊230人、東ティモールに到着 女性隊員7人も
ロシアネオナチ凶悪化 邦人ら殺害を警告
スレブレニツァ虐殺の責任、国連とオランダに
米CIAによる軍事機密スパイ事件を摘発 ロシア当局

監察医提出の臓器と鑑定結果のDNA型が矛盾 横浜地裁
有事関連3法案、国会関与の幅広がる
郵政公社の国庫納付、総務相と財務相が合意




核爆弾による迎撃検討か、米国防長官前向き 米紙報道

 11日付のワシントン・ポスト紙は、ブッシュ政権のミサイル防衛(MD)の一環として、ラムズフェルド国防長官が核弾頭搭載の迎撃ミサイル開発の検討に前向きな姿勢を示していると報じた。

 国防長官の諮問機関「防衛科学委員会」のシュナイダー委員長が同紙に明らかにした。それによると、長官は核弾頭搭載の迎撃ミサイル構想の是非を委員会が検討することに「非常に興味を示した」という。

 まだ、検討の「入り口」段階だが、国防総省がMD配備への決意に強さをうかがわさせる。また、「21世紀の国防への転換」に向け、あらゆる構想を事前に排除しないという長官の考えに沿った動きといえる。

 国防総省が現在、開発を進めているのは非核の迎撃体による衝突で目標ミサイルを破壊するシステム。だが、敵のおとりミサイルなどと標的を識別して命中させるのは技術的に極めて難しいといわれている。

 これに対し、核弾頭による迎撃は、理論的には「弾丸で弾丸を撃ち抜く」ほどの命中精度を確保する必要ない。命中しなくても、周囲で核爆発を起こせば、おとりも含めてすべて破壊できるとされる。

 ロシアは旧ソ連時代から核弾頭式の迎撃体を配備、米国も70年代に短期間配備したことがあるが、宇宙空間の核汚染や米通信衛星などへの損害に対する懸念から、非核のMD防衛に一本化した経緯がある。


北欧で難民への風当たり強まる 米テロ事件がきっかけ

 難民支援に熱心な北欧の国々で、受け入れの門戸を狭める動きが出てきた。「偽装難民」が増えたうえ、同時多発テロを契機に、外国人への警戒感が高まった事情があるようだ。

 デンマーク議会は「外国人法案」を審議中で、5月までに成立する公算が大きい。24歳以上で一定の収入を得ていなければ家族の呼び寄せを認めず、難民手当を100%受給できるようになるまでの待機期間を現在の3年から7年へ延ばす内容だ。ホーダー難民・移民・統合相は「成立すれば、流入してくる難民や移民が大きく減る」との見通しを示した。

 デンマークは00年、アフガニスタンやイラク、ソマリアから約3900人の難民を迎え入れた。申請者の43%を認定した世界でも指折りの「難民受け入れ国」だ。

 しかし、こっそり母国へ帰って事業を始めたり、送還を承知で認定を待つ間の手当を目当てに流れ込んだりする例が報じられ、重税感の強い人々の神経を逆なでした。ホーダー担当相は「高額の手当に依存して仕事に就かず、デンマーク語も学ばないなど、社会へ溶け込む意思を見せない者が多い」という。

 昨年11月の総選挙では、難民の規制や排除を説く保守、右翼政党が勝利を収めた。コペンハーゲンの外交筋は「国民の積年の不満をたきつけ、テロ事件をうまく利用した成果」とみる。

 他方では、人道大国の評価を落とすべきでない、とする意見も根強い。ホーダー担当相は「グローバリゼーションに適応できる福祉・人道国家をめざし、模索しているのが実情だ」と語った。


 隣国のスウェーデン政府も昨年末、10年以上前にテロ事件にかかわったとされ、エジプトから身柄の引き渡しを求められていた亡命申請者2人を強制送還した。カールソン移民相は「このような措置は初めてだが、テロと戦う姿勢を見せるために必要だった。エジプト側も犯罪の証拠を示し、死刑や拷問はないと約束した」と説明する。(23:00)

スリランカ・LTTEの指導者、12年ぶりに公の場に

 スリランカの反政府武装組織「タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)」の指導者で、10年間以上、公の場に姿を見せたことがなかったプラバカラン議長(47)が10日夜、スリランカ北部の支配地で記者会見した。議長は5月にバンコクで始まる和平交渉のポイントとされる少数派タミル人による「分離・独立」主張の放棄に否定的な考えを示した。

 スリランカ政府とLTTEはノルウェー政府の仲介で今年2月、約20年間に及ぶ内戦の停止に合意した。今後の和平交渉のカギを握る議長の発言が注目されていた。

 会見で議長は「我々は誠実かつ真剣に和平交渉に関与する」と話す一方、「タミル人の自治はタミル人全体の要求で、拒否されればLTTEは戦う以外に道はない」と強調した。武装解除についても「(政府に非合法化されている)我々の合法化の後に検討する」と述べるにとどまった。

 また、和平交渉には議長自身は出席しないことを明らかにした。


 議長は91年にインドのラジブ・ガンジー元首相暗殺に関与した疑いでインド政府から死刑判決を受けた。身辺警護は極めて厳重で最後にジャーナリストに会ったのは90年4月。それ以後、組織のホームページで写真や声明を載せるだけで公に姿を一切見せなかった。(22:53)

国際刑事裁判所発足へ、批准60カ国を突破 国連

 戦争犯罪や大量虐殺を裁く国際刑事裁判所(ICC)の発足が11日、正式に決まった。ICC設立条約発効に必要だった60カ国の批准がこの日確定した。来年中にも開所する見通し。

 ICCは、集団殺害に対する個人の責任を追及するための史上初の常設法廷。カンボジアや旧ユーゴでの非人道的な殺戮(さつりく)をふまえ、98年7月にローマで開かれた会議で設立条約が採択された。

 3月末までに56カ国が批准したが、ボスニアなど9カ国が11日、ニューヨークの国連本部で新たに批准書を寄託。これにより条約が7月1日に発効することになった。

 オランダ・ハーグに開設され、18人の判事が9年任期で審理にあたる。

 紛争各地に自国軍を展開している米国は「自国兵士が交戦相手国から不当に訴追されかねない」としてICC設立に強く反対しており、審理が始まってもその法的拘束力を無視する構えだ。

 日本も、犯罪人引き渡しなどに関する国内法が整備されていないことを理由に設立条約に署名していない。


米国務長官訪問直前、イスラエル軍が24の町村から撤退

 イスラエル軍は11日昼までに、ヨルダン川西岸パレスチナ自治区の主要都市周辺にある24の町村から撤退した。しかし、一時は撤退したトルカレムに再侵攻したほか、新たにラマラ近郊のビルゼイトなど二つの村や難民キャンプに侵攻した。ジェニンやナブルス、ラマラ、ベツレヘムの主要都市でも軍事作戦を続けている。

 イスラエル放送によると、シャロン首相は同日、パウエル米国務長官の現地入りを前に「ベツレヘム、ジェニン、ナブルス、ラマラからは、テロリストたちが降伏するまでは撤退しない」と述べ、強気の姿勢を崩さなかった。

 イスラエル軍は11日、先月末の大規模な軍事作戦開始以来、拘束したパレスチナ人は約4100人に上ったことを明らかにした。

 イスラエル放送などによると、トルカレムでは戦車15台が入り、各地を捜索、自爆テロを企てていたとしてパレスチナ人女性を拘束した。現地からの情報では11日午後になっても、トルカレムの一部地域には戦車数台が配置されたままとなっている。

 パレスチナ自治区最大規模の大学があるビルゼイトでは、大学関連施設にイスラエル兵が押し入り、学生寮からの退去を命じたほか、学生数人を拘束した。

 一方、同軍スポークスマンによると、武装勢力が立てこもり激しく抵抗していたジェニンの難民キャンプでは、同日午前までにメンバー32人を拘束、戦闘はほぼ終了したという。しかし、武装組織の幹部数人が依然見つかっておらず、同軍は厳戒態勢を敷いている。


チュニジアで爆発、5人死亡 イスラエルへの抗議か

 チュニスからの報道によると、チュニジア南東部のジェルバ島にあるシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)近くで11日、トラックが爆発、5人が死亡し20人が負傷した。政府筋は事故と説明しているが、イスラエルのパレスチナ自治区侵攻に抗議しての攻撃という見方もある。


調停工作への意欲示す パウエル長官イスラエルへ

 パウエル米国務長官は11日、スペイン・マドリードで開いた記者会見で、同日朝、イスラエルのシャロン首相と電話で会談し、パレスチナ自治区からのイスラエル軍の撤退の見通しやパレスチナ自治政府のアラファト議長との会談日程について協議したことを明らかにした。

 長官はイスラエル軍の完全撤退が実現していないことを認めて「問題はまだ残っているが、シャロン首相も私との会談を望んでいる。和平交渉に立ち戻り、次の段階に進むための方策を話し合いたい」と語り、滞在期限を切らず、政治解決を目指して何らかの成果を得るまで調停工作に全力を傾ける姿勢を示した。


 同長官は、今回の調停工作が、中東危機の解決に向けたブッシュ大統領の政治決断ばかりでなく、10日に行われた国連、欧州連合(EU)、ロシアとの四者協議の共同声明に示されたように、国際社会の委託も受けたものだと強調。「人々の不安をなくし、暴力と危機を終結させるため交渉にあたりたい」と語った。(21:23)

NY世界貿易センタービル関連の損失は3700億円

 国際的な再保険機構であるロイズ保険協会(ロンドン)は10日、01年9月11日の米同時多発テロ事件によるニューヨークの世界貿易センタービル関連の損失額が19億8千万ポンド(約3700億円)になる、との見通しを示した。


 一方、ロイズは米国で3月末までに9億ドル(約1180億円)の保険請求の支払いを終えた。(21:17)

フセイン大統領、パレスチナに支援金1000万ユーロ

 イラク国営通信によると、イラクのフセイン大統領は10日、イスラエルに対するパレスチナ人の闘争支援のため1千万ユーロ(約11億7千万円)を支出することを決め、速やかに送金するよう政府に命じた。同通信は、アラブ連盟が首脳会議の度に約束する援助金が届いていないと指摘した。


 イラクは8日から1カ月の石油輸出停止を始めた。イスラエルにパレスチナ自治区撤退の圧力をかけさせる武器として禁油を提案したのに対し、他のアラブ産油国が応じないのを尻目に実行に移し、パレスチナ支援をアピールしたものだ。(20:57)

ベネズエラのゼネスト無期限化 軍将軍も政権批判

 南米ベネズエラの最大労組、ベネズエラ労働者総同盟(CTV)は10日、国内全土で9日から実施しているゼネストを「無期限化する」と決定した。最大経営者団体の経団連も無期限化を支持している。経済の要である石油輸出に影響が出始めており、チャベス政権は苦境に陥った。

 CTVは、国営石油会社PDVSAの人事への政権の介入に反対し、同社の反政権派労働者を支持する形でゼネストを続行中。政権は妥協を拒んでいる。CTV内では政権打倒を唱える声が強く、全面対立の様相だ。

 カラカスからの報道によると、PDVSAのカムコフ副総裁は10日、「(輸出の)船荷が遅れるだろう。正常でないのは明らかだ」と述べ、ゼネストの石油輸出への影響を認めた。同国最大のパラグアナの精油所の生産量は約5割減。国内に入港中の石油輸出船20隻のうち、今週は2、3隻だけが石油を積み込んだという。国内向けエルパリト精油所は操業が全面停止し、一部でガソリンの供給が不足している。

 軍では2月から政権を公然と批判する将校が出始めたが、ゼネストを受けて10日、国家警備隊と陸軍の将軍各1人がチャベス政権を批判した。

 国家警備隊の将軍は、大統領がPDVSAカラカス事務所前で抗議する人たちの実力排除を軍に命じたと述べ、「愚かな大統領に従うと、軍の名を汚す」と主張した。


中性子星より密度の高いクオーク星を発見 NASA発表

 物質をつくる基本粒子クオークでできた「クオーク星」とみられる全く新しいタイプの天体を発見したと、米航空宇宙局(NASA)などの研究グループが10日発表した。星の一生をめぐる理論に新しい説を打ち出した形だ。

 南天の「みなみのかんむり座」にあるRXJ1856という星。従来は、星が寿命を終えて超新星爆発を起こした後にできる中性子星と考えられていた。

 ところが、X線天文衛星チャンドラなどによる観測で、表面温度が約70万度と中性子星にしては低すぎる上、直径も11.3キロしかなく、中性子星よりも密度が大きいことが分かった。地球からの距離は400光年と推定した。

 研究グループは、中性子星をつくっている中性子がさらにつぶれて、物質をつくる基本粒子のクオークの塊になったと考えられるとしている。

 星が超新星爆発を起こすと、残骸(ざんがい)が中性子星かブラックホールになると考えられてきた。クオーク星は、第3の可能性として一部の研究者が予測していた。

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 中性子星の直径は約20キロ以上とされている。地球との距離の推定値次第で、直径のデータが変動する。京都大学の中村卓史教授(天体核物理学)は「地球との距離の推定が正しければ、これまでとは違う新しいタイプのおもしろい天体である可能性が高い。中性子星ができる過程で私たちの知らないプロセスがあるのか、あるいは宇宙の誕生初期にできたまま残っていた可能性もある。同じような星が、もっとたくさん見つかればわかるだろう」と話している。(19:55)

パウエル米国務長官がイスラエル入りへ

 パウエル米国務長官は11日夜(日本時間12日未明)、泥沼化している中東情勢の調停のためイスラエルに入る。12日にイスラエルのシャロン首相、13日にはパレスチナ自治政府のアラファト議長とも会談する予定だ。今回の歴訪で取りつけた支持を背景に、イスラエル軍の自治区への侵攻が火をつけた暴力の連鎖に歯止めをかけ、停戦に向けた道筋をつけることをめざす。

 国際社会の批判に配慮したブッシュ米政権が、それまでの消極姿勢を転換して送り出したパウエル長官は、イスラエル訪問を前にモロッコ、エジプト、スペインを歴訪。アラブ諸国や欧州連合(EU)、国連などから調停への理解と支持を得た。11日にはヨルダンにも向かった。


 シャロン首相との会談では、ブッシュ大統領が繰り返し求めているイスラエル軍の「遅滞なき撤退」を求める。また、マドリードでロシアを含めた四者協議後、改めて表明した停戦監視団の派遣についても協議する構えだ。アラファト議長には、イスラエル軍の撤退の前提となる「武装闘争放棄」の宣言を求めるものとみられる。(19:52)

金大中拉致事件テーマの映画「KT」、日韓で同時公開へ

 1973年に日本で起きた金大中(現大統領)拉致事件を主題にした日韓合作映画「KT」が日韓で5月3日から同時公開されることになり、阪本順治監督や出演者らが11日、ソウル市内で記者会見した。

 阪本監督は「ワールドカップ(W杯)で両国が盛り上がるのもいいが、その前にもう一度立ち止まってみるのもいい。過去を振り返らず盛り上がるというのは無理があるのでは」と製作の動機を語った。

 記者会見前には試写会があり、与党の新千年民主党関係者や真相究明運動を続ける人々らも顔をみせた。


 映画は当時の朴正熙政権を痛烈に批判していた野党指導者、金大中氏の暗殺計画から拉致、解放までをフィクションを交えて描く。拉致事件の真相は解明されていない部分も多く、当時、日本でも自衛隊OBの関与が取りざたされた。映画は自衛隊の一部が事件に大きく関与する展開。阪本監督は「自衛隊関係者たちの供述がまったく残っておらず、ある程度想像するしかないが、大きな流れは合っているのではないか」と話した。(19:40)

自衛隊230人、東ティモールに到着 女性隊員7人も

 東ティモールでの国連平和維持活動(PKO)に参加している自衛隊施設部隊の本隊230人が11日、民間機で中心都市ディリに到着した。初めて参加する女性隊員7人も含まれる。派遣隊員はこれでほぼ全員がそろい、活動も本格化する。

 ディリ郊外のコモロ空港で、女性隊員のうちの伊賀崎ひとみ1等陸尉は「カンボジアのPKOから今年で10年目。いつか女性が参加できると思っていましたが、やっとその日が来ました」と話した。大浜崎美香3等陸尉らも「早く気候になれて仕事がしたい」と意気込みを語った。


 230人のほとんどはディリの宿営地で2晩を過ごしたあと、地方の3宿営地に出発する。女性7人はいずれもディリで連絡調整や通信、医療などの任務に就く。(19:19)

パウエル長官、12日から仲介始める

 パウエル米国務長官によるイスラエルとパレスチナの停戦仲介が12日から始まる。イスラエルの自治区への大規模侵攻は続行中で、10日にはパレスチナ過激派の自爆テロが起こった。パウエル長官がイスラエル軍の撤退を求める前提として、アラファト議長に自爆テロを含む「武装闘争放棄」を宣言させることができるかどうかが、重要なかぎとなりそうだ。

 ブッシュ米大統領は長官派遣を発表した演説で「自爆テロがパレスチナの国家樹立の希望を吹き飛ばしている」とした。アラファト議長にアラビア語で「テロ放棄」を宣言するよう求めている。

 シャロン政権が「対テロ戦争」を掲げる以上、米国としては無条件の撤退を求めるわけにはいかない。議長の「テロ放棄宣言」をイスラエルに撤退を迫るてこにする狙いと見られる。

 一方、パレスチナ側はイスラエルの自治区侵攻や占領こそ「テロ」であり、占領が続くかぎり「抵抗運動」放棄はないという主張だ。しかし、自治政府は自爆テロ発生のたびに「イスラエルでの民間人への攻撃は民族の利益に沿わない」と非難声明を出してきた。

 パウエル長官は10日、アナン国連事務総長ら4者協議後の記者会見で、「テロと呼ぶか、抵抗と呼ぶかにかかわらず、あらゆる暴力が有害だ。パレスチナ人がイスラエルと平和に共存する国を持つという夢につながらない」と語った。

 「武装闘争放棄」は、議長の後継者と目されるパレスチナ解放機構(PLO)のアッバス事務局長やクレイ評議会議長ら自治政府高官の間では主流だ。一方で、若い世代を中心とするPLO主流派のファタハの武装部門は、「武装闘争こそ解決の唯一の手段」と考える。

 武装勢力を抑えて武装闘争停止を実現するためには、アラファト議長が「全面的な武装闘争の停止と和平交渉への復帰」を宣言し、従わない者たちを取り締まるよう治安警察に命令を出す必要がある。

 武装勢力の反発は出るだろうが、議長の「武装闘争放棄」宣言が降伏宣言とならないタイミングを考えれば、いまが適時だ。今回のイスラエルの大規模軍事作戦の中で、武装勢力はジェニン難民キャンプで「徹底抗戦」の恐ろしさをイスラエル軍に思い知らせた、という思いがある。さらに10日にイスラエル北部で自爆テロがあり、イスラエルがいくら大規模攻撃をしても自爆テロを止めることは出来ないというメッセージも送った。


 アラファト議長がパレスチナの指導者として扱われることに、シャロン首相は強く反発すると見られる。しかし、4者協議声明で「我々は議長がパレスチナ民衆に選挙で選ばれた指導者であることを確認する」としている。議長はこの信任に応えて「双方の無益な流血を避ける」という呼びかけの形で自らの指導力を示す機会でもある。(18:57)


米、パレスチナ自治政府とアラブ諸国にテロ対策求める

 フライシャー米大統領報道官は10日、イスラエル軍によるパレスチナ自治区からの追加撤退を受け、「対テロ戦の責任はイスラエルだけにあるのではない」との声明を出し、パレスチナ自治政府とアラブ諸国に反テロ対策の強化を改めて求めた。これに先立ち同報道官は、対イスラエル経済制裁を現時点で検討する考えはないと表明した。

 声明は「(ブッシュ)大統領が求めた(イスラエル軍の)撤退は続いている」と述べる一方で、「すべての当事者に責任がある」と強調。自治政府とアラブ諸国に対し、(1)テロ非難(2)テロ資金の遮断(3)国営放送によるテロ扇動の停止――などで具体策をとるよう呼びかけている。

 同報道官は、イスラエルのシャロン首相がブッシュ大統領の撤退要請をただちに聞き入れないからといって、経済制裁を科すことは論外との考え方を強調。「米国の言うことを敬礼して聞かないからといって驚く米国人はいないと思う」と述べた。

 ホワイトハウスは4日の大統領声明以降、イスラエルに対する撤退要求に比重を置いてきた。今回の声明は自治政府とアラブ諸国側に求めているテロ対策に重点をかけているのが特徴。

 声明に、アラファト議長の名前がないことも注目される。大統領は議長のテロ取り締まり能力に「失望した」と批判している。


 一方、撤退を歓迎する言葉もなく、米政府は今後も追加撤退をイスラエル側に求めるとみられる。ブッシュ米大統領はイスラエル軍の「遅滞なき撤退」を再三要求している。(12:06)


アラファト議長との会談に期待 パウエル国務長官

 スペインに滞在中のパウエル米国務長官は10日夕(日本時間11日未明)記者会見し、「(パレスチナ自治政府の)アラファト議長との会談が重要だ。日程に問題がないよう望んでいる」と議長との会談実現への期待を表明。12日から本格化させる調停工作では、イスラエル、パレスチナ双方の指導者との直接対話によって事態打開をめざす姿勢を強調した。

 自爆テロが連続発生する中で米ブッシュ政権内には同議長の指導力の弱さへの不満が根強いが、パウエル氏は会見で、過去数日間に会談したアラブ諸国指導者らは議長を「イスラエルが交渉の相手にすべきパートナー」とみなしていると語り、和平実現のためにアラファト氏の果たす役割は重要との認識を示した。

 パウエル氏は11日夕にイスラエルに向かい、12日にシャロン首相らと会談する予定だが、アラファト氏との会談日程は固まっていない。


 長官は、自爆テロなどさらに悪化する中東情勢について「私の使命になんの痛手もない」と語り、今後の和平調停工作への意欲を示した。ただ、軍事作戦を継続するイスラエルについて、長官は「イスラエルが困難な状況にあるのはわかるが、最善の道はパレスチナ自治区からイスラエル軍が撤退することだ」と述べるにとどまり、シャロン首相説得の見通しは示さなかった。(11:03)

ロシアネオナチ凶悪化 邦人ら殺害を警告

 在ロシア日本大使館に10日、最近活動を活発化させているロシア・ネオナチから、日本人を含む外国人の国外退去と殺害を警告する電子メールが送りつけられた。同様の脅迫文は、モスクワのインド、フィリピン、米国など複数の大使館に一斉に送信された。

 原文は英語で、ロシア・スキンヘッド・グループ代表の「イワン」から送信された。日本大使にあてて、「貴国民を本国へ送還しなければ、(国民あるいは外交官は)殴打され殺害される」と脅した。20日のヒトラーの誕生日を前に外国人との戦争を宣言するとし、「警察も政府も我々の側にいる」とした。日本大使館は「いやがらせ以上の脅迫行為」と判断し、ロシア外務省に取り締まりを申し入れた。

 また、モスクワ市中心部では10日、ネオナチのグループ20人が、外国資本のハンバーガー店を襲撃し警官隊ともみ合いになった。モスクワ市当局は同日、人種差別的な音楽で若者に人気があるヘビーメタル・グループのCDを店頭から回収する措置をとった。下院でも改革派の議員が、ネオナチ取り締まり強化の法案の検討を始めた。


 ロシアでは、10〜20代の若者を中心にネオナチの凶悪犯罪が急増している。とくに、アジア・アフリカ系やカフカス出身者が標的で、警察が把握しているだけで今年23件の襲撃があり3人が亡くなっている。(10:58)

国連安保理、4者共同声明を支持 中東問題

 国連の安全保障理事会は10日、マドリードでアナン国連事務総長らがパレスチナ危機の打開を求める4者共同声明を出したことを受け、ラブロフ議長(ロシア国連大使)名で声明を発表し、共同声明の支持を表明するとともにイスラエルの撤退などを求めた先の安保理決議の履行を求めた。

 4者共同声明についてはパレスチナ自治政府のアルキドワ国連代表も支持した。しかし、安保理ではアラブ諸国を代表する非常任理事国のシリアが当初、イスラム過激派を非難する文言が入っているとして支持声明を出すことに強く反対した。

 シリアはまた、アラブ諸国が提出した国際監視団の導入を求める決議案の採択にこだわった。安保理の大勢は、新たな決議よりパウエル米国務長官の調停を見守る姿勢を示している。


 国連ではこの日、パレスチナ討議の主役の一人であるイスラエルのランクリ大使が、ハイファ近郊でのバス自爆テロで18歳のめいが殺され葬儀出席のため帰国した。アルキドワ代表は弔意を示すとともに、「パレスチナは市民を標的とするのには反対だ」と述べた。(10:52)

走行中の路線バスで自爆テロ、9人死亡 ハイファ近郊

 イスラエル北部のハイファ近郊で10日朝、走行中の路線バスで自爆テロがあった。犯人を含む9人が死亡、14人がけがをした。イスラエル軍の軍事作戦開始後、自爆テロは1日以来9日ぶり。イスラエル政府は10日、閣議と治安閣議を開き、治安が回復されていないとして作戦の継続を決定した。パウエル米国務長官の同国入り前日のテロで、停戦に向けた仲介はさらに困難な情勢だ。

 警察によると、バスはエルサレム行きで、高速道路を走行中、ハイファを出て間もない停留所で乗り込んだ男によって爆破されたらしい。天井が吹き飛び、爆風で近くを走っていた車にもけが人が出た。カタールの衛星テレビ・アルジャジーラに、イスラム過激派組織ハマスの犯行声明が届いた。

 シャロン首相は10日の閣議後、作戦は続行するものの、現在制圧している自治区の一部から撤退する可能性について検討しているとも述べた。

 ジェニンでは9日の激戦が山場を越し、10日昼からパレスチナ武装勢力約250人が投降し始めている模様だ。


 一方、レバノン国境では、イスラム教シーア派組織ヒズボラが10日午前も、イスラエル軍の拠点を砲撃した。しかし、イスラエル政府は閣議で、当面、本格的な反撃を控える方針を決めた。(02:10)

スレブレニツァ虐殺の責任、国連とオランダに

 オランダ政府は10日、ボスニア・ヘルツェゴビナ内戦末期に、同国東部のスレブレニツァでセルビア人勢力がモスレム人住民7千人以上を殺害した事件の調査報告書を公表した。惨劇を予見できなかった国連と、国連指揮下で平和維持部隊を派遣していたオランダの責任を指摘している。

 7千ページに及ぶ報告書をまとめた戦争公文書館のブロム館長は「セルビア人勢力が町を制圧すれば虐殺の危険があったにもかかわらず、国連とオランダ政府は不十分な装備の部隊を送った。政策立案者に、重大な責任がある」と述べた。事件当時、スレブレニツァは国連の安全地域に指定され、平和維持を担うオランダ兵110人が駐留していた。

 同館長はまた、虐殺を指揮したのはセルビア人勢力の元軍司令官で、国連旧ユーゴスラビア戦犯法廷で「集団殺害」の罪で起訴されているムラジッチ被告であると言明。「あらかじめ場所を確保し、モスレム人住民を移送するなど、計画的な犯行だ」と断定した。

 また、同法廷から人道に対する罪などで起訴されたセルビア人勢力の元指導者カラジッチ被告の虐殺への関与については、「明らかでない」と述べるにとどまった。同被告とムラジッチ被告の関係は比較的疎遠で、事前に虐殺の計画を知らされていたかどうか、はっきりしないとしている。


イスラエルがバチカンの解除要求拒否 聖誕教会包囲

 イスラエル軍がベツレヘムの聖誕教会を包囲している問題で、イスラエルのカツァブ大統領はローマ法王ヨハネ・パウロ2世あてに送った書簡で、バチカンが求めている包囲解除を拒否した。在バチカンのイスラエル大使館が10日、書簡を明らかにした。


 大統領は書簡で「残念ながら、罪のないユダヤ人を殺したパレスチナの武装テロリストが逃走するのを防ぎ、流血の惨事を続けさせないためにはほかに選択肢がない」と記している。バチカンはイスラエル政府に対し、聖地包囲について抗議する一方、教会内のパレスチナ人が武器を置いて退去するまでの数時間、軍はいったん包囲を解くという打開策を提案していた。(00:01)

米CIAによる軍事機密スパイ事件を摘発 ロシア当局

 ロシア連邦保安局は10日、米中央情報局(CIA)による軍事機密スパイ事件を摘発したと明らかにした。インタファクス通信が伝えた。

 スパイとされるのは、在モスクワ米大使館と旧ソ連諸国の米大使館に勤務する2人の米国人外交官。ロシア国防省の秘密施設に勤めるロシア人専門家から機密を入手しようとしたが、捜査官が情報漏えいの初期段階で未然に阻止したという。米外交官はすでに出国した模様だ。モスクワの米大使館は「ノーコメント」としている。


監察医提出の臓器と鑑定結果のDNA型が矛盾 横浜地裁

 横浜市泉区の男性(当時54)が97年に交通事故を起こした後、車内で死亡したのは神奈川県警の署員が放置したためだとして、遺族が県などに約1億7千万円の損害賠償を求めた訴訟で、鑑定医が11日までに「横浜地裁に提出された男性の臓器片のDNA型が、遺族から推定される型と矛盾する」とする中間報告書をまとめた。12日の口頭弁論に提出される。

 鑑定医の押田茂実・日大教授(法医学)が作成した報告書は、男性の妻と3人の息子の血液から男性のDNA型を推定。司法解剖を担当して「病死」と判断した監察医が提出した臓器片と比べたところ、含まれているはずの因子が検出されなかったため、「矛盾する」と結論づけた。

 訴状によると、男性は97年7月19日未明、同市内で道路わきの支柱に車をぶつけ、車内で倒れているのを通行人に発見された。駆けつけた署員らは男性を乗せたまま車を移動して放置し、家族への連絡や119番通報をしなかったとされる。男性は約10時間後に再び発見され、搬送先の病院で死亡が確認された。

 県警側は「死因は心筋こうそく」としたが、遺族は「解剖せずに虚偽の死体検案書を作成した」と訴えている。


 遺族の代理人は「矛盾が出たのなら、別人の臓器片だったと考えていいのではないか。5月に出る予定の本報告を待ちたい」と話した。監察医の代理人は「報告書はまだ見ていないが、提出したのは本人の臓器に間違いない」と話した。(23:22)

有事関連3法案、国会関与の幅広がる

 政府が16日の閣議決定を目指す武力攻撃事態法案など有事関連3法案によって、政府の有事対応への国会の関与の幅が広がりそうだ。現行法では、国会承認が必要な事態は自衛隊が自衛権を行使できる防衛出動命令の際に限られている。しかし、今回の法案でその前段階の防衛出動待機命令なども国会承認の対象になるためだ。

 「いまのイラクが日本だったら武力攻撃事態なのか。米国はイラク攻撃の可能性をほのめかしている」。11日開かれた与党3党安保プロジェクトチームで、議員の一人が問題提起した。政府側は「武力攻撃が予測される事態に近いと思うが、慎重な見極めが必要。法案では国会承認が求められており、国全体の判断になる」と答え、国会承認の意義を強調した。

 武力攻撃事態法案に盛り込まれた「武力攻撃事態」という概念は、自衛隊法にある防衛出動の要件になる「武力攻撃(武力攻撃のおそれがある場合を含む)が発生した事態」だけでなく、前段階の「事態が緊迫し武力攻撃が予測されるに至った事態」を含む。

 現行法では、防衛出動の場合は、国会承認が必要だが、防衛出動待機命令は防衛庁長官が首相の承認を得て発令できる。

 政府は今回、武力攻撃事態と認定する事態になれば「対処基本方針」を定め、「閣議決定後、直ちに国会に承認を求めなければならない」との原則を法案に盛り込んだ。さらに「対処措置の実施前に国会承認を得る必要はないが、不承認の議決があったときには対処措置を速やかに終了する」ともしている。

 また、法案には明記していないが、政府は対処基本方針を「武力攻撃が発生した事態」と「武力攻撃が予測される事態」の2段階でつくり、それぞれの段階で国会承認を求めることにしている。

 一方で自衛隊法改正案では、従来「予測される事態」では自衛官の招集などしかできなかったのを、防衛施設の構築ができるようにするなど、活動の範囲を広げており、単純に国会の関与だけ広がったともいえない。


 与党内では公明党も「非常に前進している」(冬柴鉄三幹事長)と評価しており、テロ対策特措法で審議の論点になった国会承認問題は、いまのところ大きな話題にはなっていない。(23:17)


郵政公社の国庫納付、総務相と財務相が合意

 片山虎之助総務相と塩川正十郎財務相は11日、03年春発足予定の「日本郵政公社」の国庫納付金の支払規定を、現在策定中の郵政公社法案に盛り込むことで合意した。納付の開始時期や額などについては、今後、両省で詰める。郵政公社法案の今国会への提出のめどがたち、今後の焦点は、郵便全面開放を規定し、総務省が同法案とセットで提出を目指している信書便法案をめぐる自民党との調整に移る。

 両相が合意した国庫納付金の内訳は、民間企業の法人税に相当する公社の剰余金の一定額と、民間金融機関の預金保険料に相当する国家支払い保証料とを合算したもので、これを郵政公社法案に「納付することができる」と明記する。

 11日の記者会見で片山総務相は「納付の開始時期や額は公社の経営状況を見てから」と述べた。納付開始時期については、郵政公社発足後に、郵貯部門の過小資本や郵便部門の債務超過を解消できる時期をにらみながら、両省間で決める方針。実際の納付開始時期は、公社発足の数年後とみられ、その際の納付額は年間数千億円規模とみられる。


 郵政公社の国庫納付金については、財源不足から新規財源の確保を目的に納付を求める財務省と、「公社経営の安定が先決」として納付に消極的な総務省との調整が続いていた。「民間金融機関との競争条件を等しくする方向」の検討を小泉首相が指示したのを受け、11日までに両省が歩み寄りを見せた。(21:58)