パレスチナ情勢 各地で犠牲者激増、数の把握も不能
イスラエル軍包囲の治安警察本部から集団投降
OIC閉幕 イスラエルを宣言で非難
アラファト議長の電話をイスラエルが切る スペイン紙
イスラエル軍ナブルス包囲「作戦は数週間」
イスラエル軍、聖誕教会を包囲
イスラエル「レバノン国境にヒズボラ集結」
比軍、アブサヤフのボートを撃沈
50人以上死傷 インドネシア・マルク諸島で暴動状態
インド・グジャラートの宗教暴動で6人死亡
東海第2原発を手動停止 給水系統にトラブル
ヒノキの巨木の森をつくろう 作家の立松さんら呼びかけ
|
パレスチナ情勢 各地で犠牲者激増、数の把握も不能
イスラエル軍は3日もヨルダン川西岸パレスチナ自治区ベツレヘムやラマラ、ジェニン、ナブルスなど各地で軍事攻勢を強め、パレスチナ人が多数死傷している模様だ。同軍は各地を包囲して制圧、電話回線が切断されている街が多いうえ、救急車が駆けつけられず、死傷者数の把握すら困難な情勢となっている。
パレスチナ筋などによると、ジェニンやナブルス近郊のサルフィトでは、前夜からのイスラエル軍の侵攻で激しい銃撃戦が起き、少なくとも6人が死亡した。ほかの場所でも犠牲者が相当数出ているのは確実だが、同軍制圧下であるため、医師ら救護隊も十分な活動ができず、死傷者の確認もできない。
また、負傷者を搬送中の救急車も、同軍兵士によって途中で止められ徹底的なチェックを受けており、パレスチナ人権擁護団体などによると、手当てが受けられなかったり遅れたりして死亡するケースも増えているという。
一方、墓地への遺体搬送も困難になっている。ラマラの病院では遺体の収容施設が足りなくなったため、急きょ駐車場に穴を掘り25人を埋葬した。ベツレヘムでは2日朝、一家8人の住む自宅が砲撃や銃撃を受け、母親と息子が死亡したが、遺体搬送車が到着できず、残された子どもたちが自宅に遺体を置いたままだという。(21:26)
|
イスラエル軍包囲の治安警察本部から集団投降
イスラエル軍に包囲されていたヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ラマラの治安警察本部から2日午後、治安警察官が集団投降した。米国が軍と治安本部の間で投降を仲介したとの報道があり、パレスチナ側では「裏切り行為」との批判が出ている。これまでイスラエルと協議しつつ自治区の過激派対策を担当してきた治安警察への攻撃は、将来の治安協力を不可能にしかねない。
ラマラの治安警察本部のジブリル・ラジューブ長官は、西岸の過激派対策の責任者。イスラエルとの治安協議や停戦協議の自治政府側の当事者だった。治安協力にも積極的な現実主義者で、アラファト議長の後継者の一人とも目されている。
本部に対する戦車による激しい砲撃は2日未明から始まった。ハーレツ紙(インターネット版)は、治安筋の幹部から「ラジューブ氏はイスラエルと協議できるパレスチナ指導者の最後の一人なのに」と攻撃実施に反対意見が出たと報じている。
同日夕、米国の仲介で軍と治安本部側が投降に合意したという情報が流れ、治安警察隊員や民間人200人が投降した。
イスラム過激派ハマスは2日、投降協議を非難し、ラジューブ長官を名指しして「イスラエル軍が攻勢を強める中で、拘束したハマスのメンバーを釈放するように求めたのに受け入れなかった」と非難声明を出した。
ラジューブ長官は3日付のパレスチナ紙アルクドスで「米国の仲介」を否定し、「投降は弾も食料も水もなくなったためであり、さらに女性や子供を含む民間人もいたため、虐殺を防ぐためだった」と抗弁した。
投降劇の真相は分からないが、ラジューブ長官はパレスチナ民衆から「イスラエル協力者」と陰口される存在だ。かつて朝日新聞記者と本部で会見した際、長官は「停戦を掲げるアラファト議長に逆らって、パレスチナの利益を損なう者たちを逮捕している。人々に好かれる役回りではないが、秩序を守らねばならない」と語った。
ラジューブ長官自身、70年代に西岸で反占領闘争をしてイスラエルで16年間服役した元活動家で、治安警察隊員には87年に始まる第1次インティファーダ(民衆蜂起)世代が主力だ。長官は配下の隊員が武装闘争にかかわらないように抑え、それが長官に対するイスラエル側の信頼感の元にあった。しかし、今回、攻撃の標的にされたことで、隊員の過激派合流に歯止めが利かなくなる可能性がある。
さらにイスラエル軍が自治区内の刑務所に入れられていた過激派メンバーを捕らえることになれば、今後、同軍が撤退した後、パレスチナ警察が過激派を逮捕するなど、イスラエルとの治安協力は困難になるだろう。(21:21)
|
OIC閉幕 イスラエルを宣言で非難
マレーシアのクアラルンプールで開かれたイスラム諸国会議機構(OIC、57カ国・機構)の特別外相会合は3日、イスラエルのパレスチナへの攻撃を厳しく非難する宣言を採択し、閉幕した。しかし、パレスチナ人の自爆攻撃をテロとするかどうかで意見が分かれるなど各国の足並みは十分にそろわなかった。
宣言は、イスラエルを「市民への暴力や無差別破壊を行い、パレスチナの政治・経済をストップさせている」と非難し、攻撃の即時停止と国連の速やかな介入を求めた。
会合は昨年の同時多発テロ事件でイスラム社会が批判されたことを受け「テロ」の明確な定義を目指した。ホスト国のマハティール首相は1日の基調演説でイスラエルの攻撃もパレスチナ人の自爆も同じく「無実の市民への攻撃」だとして、テロと位置づけた。
しかし、首相の定義に対し、中東各国から反発が噴出。結局、宣言でも、マハティール首相の意見に「留意する」としながら「独立を目指すパレスチナ人の努力をテロと関連づけるいかなる試みも拒否する」と述べるなど、矛盾を含む内容となった。
会合をイスラエルへの「圧力」としたい思惑から、イラン、イラクが米国への石油の禁輸を各国に持ちかけてイスラエルに圧力をかける動きを見せたが、賛同は得られなかった。パレスチナ自治政府の代表団も2日に早々と帰国してしまい、イスラエル批判は事前に考えられていたほど盛り上がりを見せなかった。(21:03)
|
アラファト議長の電話をイスラエルが切る スペイン紙
欧州連合(EU)の議長国スペインのアスナール首相がパレスチナ自治政府のアラファト議長にかけていた電話をイスラエルが勝手に切ったと、マドリードのエルムンド紙が3日伝えた。首相側はコメントを拒否している。
同紙によると、アスナール首相は31日、監禁状態のアラファト議長と会談するため、4度議長に電話をかけた。しかし、首相の言葉に議長が応じようとする度に電話が切れたという。同首相がイスラエルのシャロン首相に説明を求めたところ、「あなたはテロリストの親分と連絡を取ろうとしていたのですよ」と言われたという。
アスナール首相は2日、シャロン首相にあてて書簡を送り、議長の孤立化を避けるとともに、議長との接触の便宜を図るよう求めた。(20:25)
|
イスラエル軍ナブルス包囲「作戦は数週間」
イスラエル軍は2日夜から3日未明にかけて、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区北部のジェニンに侵攻し、ナブルスを包囲した。ラマラやベツレヘムで衝突が続くなか、軍事作戦をさらに拡大する動きだ。同軍は西岸各市での作戦は数週間続くとしている。
パレスチナ情報筋などによると、同軍の戦車50台が入ったジェニンではパレスチナ側と激しい銃撃戦が起き、少なくともパレスチナ人4人が死亡した。周辺でも大規模な部隊や装甲車が集結している模様だ。
ベツレヘムでは2日夜、イスラエル軍とパレスチナ人武装勢力の間の激しい銃撃戦が起きた。ハーレツ紙インターネット版によると、パレスチナ側に少なくとも7人の死者が出たという。現地からの報道によると、ナブルス近郊のサルフィトに3日未明、イスラエル軍の戦車20台が侵入、パレスチナ側の反撃を受けることなく占領した。ナブルスも戦車など約400台に包囲された。
一方、レバノンとの国境付近では2日、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラが、国境のイスラエル軍拠点を対戦車砲で攻撃。これに対しイスラエル空軍の戦闘機がレバノン南部を爆撃した。(20:22)
|
イスラエル軍、聖誕教会を包囲
ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ベツレヘムを制圧しているイスラエル軍は2日夜から、キリストが生まれた場所とされる聖地「聖誕教会」を戦車で包囲した。同軍はパレスチナ武装組織の活動家が教会内に逃げ込んでいるとして引き渡しを求めているが、3日午後までにパレスチナ側は応じていない。同教会内には女性や子ども、イタリア人のボランティア6人を含む200〜300人がおり、緊迫している。
イスラエル軍によると、教会内には市民に交じって、パレスチナ解放機構(PLO)主流派ファタハの武装部門タンジームの活動家50人以上が逃げ込んでいるという。投降を呼びかけているが、交渉は難航している。同軍はこれまでのところ同教会に対して銃撃や砲撃は加えていないとしている。しかし、周囲では銃撃戦が断続的にあり、戦闘で死亡したパレスチナ人4人の遺体が同教会のわきで見つかった。
同教会によると、周囲を取り囲んだ同軍によって、出入りは一切できない状況で、電気や電話回線は切断されている。内部にはローマカトリック、アルメニア教会などの神父もいる。ベツレヘム周辺では前夜から雨が降って気温が急に下がり、教会内の子どもたちは寒さを訴えているという。
中にいるイタリア人たちは平和運動の活動家で、携帯電話を使い、国際社会に対し即座に介入するよう呼びかけているという。
◇
聖誕教会 イエス・キリストが生まれたとされるベツレヘムにある。ローマのコンスタンティヌス大帝の母ヘレナが、生誕の場所である馬小屋の跡だとし、紀元325年、大帝がそこに教会を建てた。現在の建物は、外敵を防ぐ目的で十字軍時代に修築された。(20:19)
|
イスラエル「レバノン国境にヒズボラ集結」
イタリア外務省高官は2日、ロイター通信に対し、イスラエル政府が欧州諸国に「レバノンとの国境付近にイスラム武装組織ヒズボラが集結しているようだ」と伝えてきたことを明らかにした。イスラエルは「もしヒズボラが撤退しない場合、重大な事態を招くだろう」と警告している。この情報はすでにレバノンとシリアに通告されたという。
|
比軍、アブサヤフのボートを撃沈
フィリピン国軍によると、3日未明、同国南部バシラン島西のダサラン島付近の海で同軍の哨戒艇3隻がイスラム過激派組織アブサヤフの5隻のボートを発見、うち2隻を撃沈した。残り3隻を比軍と米軍が追跡しているという。
アブサヤフ掃討を目指した米比合同軍事演習が行われているバシラン島からアブサヤフの一部が逃亡しているとの情報があるため、比軍は同島周辺の監視態勢を強めていた。
|
50人以上死傷 インドネシア・マルク諸島で暴動状態
インドネシア東部のマルク州の州都アンボンで3日、中心街で爆弾事件があったのをきっかけに住民が暴徒化。放火された州庁舎が焼け落ちた。地元警察の調べでは、4人が死亡、50人以上がけがをした。マルク諸島ではイスラム教徒とキリスト教徒の抗争が続いており、2月に和平協定が結ばれたばかり。抗争の再燃を狙う勢力が仕掛けたのではないかとの見方が強い。
同日昼前、中心街のホテルの近くに、走り去る車から爆弾が投げられた。現場は屋台の露天商らが集まる場所で、多数が負傷した。これをきっかけに付近の住民が暴徒化し、州庁舎に押し掛けて火をつけた。庁舎前では数千人が投石するなどして騒いだため、警察や国軍が威嚇射撃した。
マルク諸島では、99年初めからの宗教抗争で5000人以上が死亡したといわれる。今年2月に政府の仲介で和平協定が結ばれ、武器の回収などが始まった。しかし、抗争を激化させたイスラム過激派が撤退しておらず、小競り合いは続いていた。抗争の背後にはスハルト元大統領につながる国軍守旧派勢力がいるともいわれている。(20:41)
|
インド・グジャラートの宗教暴動で6人死亡
インド西部グジャラート州でヒンドゥー教徒とイスラム教徒の宗教暴動が2日夜から3日にかけて発生し、現地警察によると、計6人の男女が死亡した。
現地警察によれば、アーメダバード郊外のアバサナ村でイスラム教徒の男性3人と女性2人が殺され、その焼死体が発見された。州都南方70キロのウムブラート村でも男性1人が殺害された。このほか暴動を沈静化させるために警官が暴徒に発砲し、11人が負傷したという。グジャラート州では2月に発生した宗教暴動でヒンドゥー、イスラム両教徒約800人が死んでいる。バジパイ首相は4日から同州を訪問する予定になっている。(20:13)
|
東海第2原発を手動停止 給水系統にトラブル
茨城県東海村の日本原子力発電(原電)東海第2発電所(沸騰水型炉、110万キロワット)で3日朝、原子炉に冷却水を供給する2系統の一方で水が流れていないことが分かり、原電は同日夕、原子炉の運転を手動で停止した。重要な配管の水が止まるのは異例。放射能漏れはないという。
原子炉は3月31日に落雷の影響で自動停止した。この際、制御棒1本が炉心に入らないトラブルがあった。
原電によると、2日午前0時に運転を再開したが、出力上昇中だった3日午前6時ごろ、送水が止まっているのを確認した。正常な給水系統だけからの送水で原子炉の運転を続け、異常個所を探し、同日午後に停止を決めた。
原電によると、送水管のバルブが何らかの原因で閉じたままになっている可能性が高いという。(22:32)
|
ヒノキの巨木の森をつくろう 作家の立松さんら呼びかけ
法隆寺など伝統的な木造建造物の修復に使う木材が不足することに備え、林野庁は、国有林にヒノキの苗木を植え、約400年間伐採せずに巨木の森に育てる「古事(こじ)の森」事業を始める。作家の立松和平さん(54)の呼びかけに、同庁が応じた。京都、奈良、長野など約10カ所の国有林で予定。第1号は京都市左京区の鞍馬山で今月21日に苗木800本を植樹する。
植樹や保育の実施主体として「京都古事の森育成協議会」を3日に発足させた。文化財や林業関係者で組織される。
「古事の森」事業は今年から5年程度かけて、ヒノキの苗木を植えていく。ボランティアを募集して植樹を依頼。市民から募金を集め事業費にあてるなど、国民参加型を目指す。林野庁は、どの国有林が事業の対象としてふさわしいか、全国7の森林管理局に調査するように求めている。
植えたヒノキは200〜400年かけて、直径1メートル以上の巨木に育ててから伐採し、木造建造物の柱や天井の梁(はり)の修復にあてる。国宝や重要文化財に指定されている木造建築の修復は、種類や大きさなどが同じ木材を使うのが原則。「安定的に木材を供給するため、国有林のヒノキは通常、40〜50年で伐採している。数百年も伐採しないという発想はこれまでにはなかった」(近畿中国森林管理局の山口正三森林整備部長)という。
きっかけは昨年秋、立松さんが故郷の栃木県足尾町で植林活動をしていた際、知りあった林野庁の職員に「国土の70%が森林なのに、寺をつくるヒノキが足りない。今から植えないと次の修理に間に合わない」と危機感を訴えたことだった。
文化庁によると、国内には現在、国宝や重要文化財に指定されている木造建造物が京都、奈良、福島などに計3345棟あり、解体して組み立て直す大規模な修理は100〜500年ごとに必要になる。法隆寺の大修理は約300年に1度のペースで実施してきたという。
立松さんは「これまでの林野行政は、成長の早い木を育て短期で伐採してきた。法隆寺など歴史的な木造建造物は絶えざる修復で維持されてきた。200年以上の長期にわたる『不伐の森』は、日本の木造文化のためにも必要だ」と話す。(21:36)
|