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【02/02/10 (日) 】

タリバーン元外相投降 幹部らの捜索進展か

 タリバーン政権崩壊後、閣僚としては初めてムタワキル元外相が8日投降したことで、行方が分からない最高指導者オマール師やオサマ・ビンラディン氏の捜索が進むとの観測が広がっている。元外相の身柄はキューバの米軍基地に連行され、尋問を受ける可能性もある。

 パキスタンの情報筋によると、政権崩壊後、元外相はパキスタンのクエッタ周辺に潜伏し、タリバーンの穏健派を再結集する政治活動をひそかに進めていたが、今週、突然カンダハルに戻ったようだ。地元軍閥の説得に応じたとの情報が流れているが、自ら望んで投降したとの見方もある。

 政権崩壊後のタリバーン幹部の足取りはなぞに包まれている。指導層には1人も逮捕者や死亡者が出ておらず、ザイーフ元駐パキスタン大使が逮捕されただけ。多くはパキスタンに逃亡したとも、ふるさとに身を隠しているとも言われるが、確たる情報はない。ビンラディン氏の居場所同様、米軍や暫定政権が頭を痛める問題だ。

 元外相は94年のタリバーン創設時の生え抜きで、外部と接触が少ないオマール師の「目であり、耳である人物」といわれた。ただ、9月以降はビンラディン氏の処遇を巡って、オマール師の方針に反対したとされ、最新の情報が手元にあるかどうかは疑問もある。

 元外相の処遇について、米軍は公式な反応を示していないが、キューバの基地に連行するとの見方が強い。一方で、元外相はタリバーンで数少ない穏健かつ外交的な人柄で、外務省の職員にも信奉者が多い。暫定政権内からも、穏やかな処分を求める声が出ている。

 カルザイ議長は9日、元外相と投降方法について過去2週間にわたり相談を重ねたと明かしており、暫定政権が元外相を完全な「戦争犯罪人」とは見ていないことを示唆した。


イスラエル軍基地を襲撃、2人死亡、5人けが

 イスラエル軍放送によると、同国南部のベールシェバで10日午後1時すぎ、イスラエル軍南部司令本部の道を挟んで反対側にあるレストランに向けて、武装した2人組が銃を乱射し、イスラエル人女性2人が死亡し、5人が負傷した。銃撃した男2人もイスラエル軍に射殺された。パレスチナの武装集団による軍への襲撃とみられる。

 現場は、イスラエル南部の中心都市で、軍の司令本部は市の中心部にある。2人組は軍本部前に車で乗りつけて、銃撃を始めた。レストランは、イスラエル兵士が昼食時によく利用していた。

 これに先立つ9日夜には、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ナブルスの南で、ユダヤ人入植者の車に別の車から銃撃があり、助手席に乗っていた女性(78)が死亡、運転していた息子も負傷した。


 パレスチナ人武装集団の攻撃と見られ、イスラエル軍は10日未明、戦車などでナブルスに侵攻、パレスチナ側との銃撃戦で、パレスチナ治安警察官ら6人が負傷した。イスラエル軍はナブルスで武装メンバーの3人を逮捕し、2時間後に撤退したが、その後も主要道路の通行を止め、同市を封鎖している。(22:05)

豪政府の対難民強硬策に批判 ハワード首相一歩も引かず

 密航船など違法手段で入国し、難民認定申請をする人たちを強制収容する豪政府への風当たりが強まっている。先月、収容されているアフガニスタン人らがハンストで抗議。教会関係者、内外のNGO(非政府組織)などが政府批判を強めている。だが、不法入国に反発する世論を背景に、ハワード首相らは一歩も引かない構えだ。

 南オーストラリア州のウーメラ収容所では、先月中旬から月末にかけて、二百数十人がハンストに参加、うち未成年を含む約50人が唇を縫い合わせるという過激な抗議をした。シャンプーなどを飲む自傷行為を行う者もおり、一時は他の州の収容施設にも抗議行動が広がった。

 4日にはロビンソン国連人権高等弁務官が「人権への懸念」を表明、実情視察の特使派遣を豪側に要請した。だが、ハワード首相は10日、「(要請を)検討するが、白紙手形を渡すわけにはいかない。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が視察をしているのに、なぜ人権高等弁務官も来たがるのか」と不快感をあらわにした。

 難民申請者の不満の背景には、場合によっては何年もかかる審査の間、へき地の収容所に留め置かれるという制度がある。ウーメラでは昨年12月、建物に放火するなどの暴動も起きている。これに対し政府は、(1)密入国者は、豪州の法律を破っている(2)インドネシアなどにいったん到着しており、本来そこで難民申請をすべきだ(3)パスポートなどを自ら廃棄している場合が多く、身元の確認に時間がかかる、などと主張している。

 収容長期化の一因は、難民申請がいったん却下されても、不服申し立て、裁判、大臣裁量による特例の申請などの道が残されていることだ。しかも、すべての手段を尽くしても難民として認定されなかった場合でも、出身国または第三国が受け入れなければ、収容所に残ることになる。


 昨年8月、難破した密航船からボートピープルを救助した貨物船の入港を豪政府が拒否した「タンパ号事件」以来、一般世論はおおむね強硬政策を支持しているとみられており、「世論の支持が続くかぎり、内外からの批判はハワード政権にとって政治的にプラス」との指摘も出ている。(21:54)

プーチン大統領の伝記、ベストセラー入り ロシア

 ロシアのプーチン大統領の生い立ちを描いた「ウラジーミル・プーチン伝」が出版され、ベストセラー入りした。第1刷は飛ぶような売れ行き。書店では「ハリー・ポッター」シリーズのロシア語版につぐ人気だ。クールな表情でおなじみの大統領だが、少年時代の「悪ガキ」ぶりを暴露したことが評判をよんだようだ。

 故郷サンクトペテルブルクの子ども時代。乱暴者で手に負えず、「トラ坊」というあだ名で呼ばれた。中学生になって背が伸びなくなったプーチン少年は、自分より大きな敵に勝つため柔道を習う。成績はクラスでびりだった。

 同書は生い立ちから解き明かし、ソ連のスパイ映画を見たことがきっかけでKGB(国家保安委員会)を志し、夢を果たすまでの記録だ。本格的伝記は初めて。著者でジャーナリストのブロツキー氏(36)は、本人を取材し、恩師や同窓生の証言を集めた。


 モスクワとサンクトペテルブルクで1月17日に売り出され、第1刷の1万5000部をほぼ完売した。出版元は2万部を増刷。地方でも発売し「20万部を目指す」と意気込む。書店ランキングはノンフィクション部門トップだ。(19:46)

日本、デフレ脱却をG7で「公約」

 主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)で、日本は銀行の不良債権の処理とデフレ経済からの脱却を「公約」した。各国が表向き厳しく注文をしなかったのは、だれから見ても、それが緊急の課題だからだ。塩川財務相は03年度の1%の経済成長にも言及。政府は12日に開く経済財政諮問会議を皮切りに、デフレ克服への総合対策づくりを急ぐが、直近の金融市場は、株式、円、債券が同時に下落する「トリプル安」で経済の根本を激しく揺さぶっている。公約実行は待ったなしだ。

 政府は、内閣支持率の急落で金融市場が「日本売り」の様相を強めたため、塩川財務相がG7に出発する当日、銀行の持ち合い株式の受け皿となる銀行等保有株式取得機構の活動の早急な開始などのデフレ対策を大慌てで公表した。ただ、すぐに実行に移せるものは限られている。

 金融システムの安定でも、公的資金再投入の是非となると、金融庁は「必要ない」としており、関係者の議論は平行線だ。財政による景気の直接刺激の議論も避けて通れない。しかし、小泉首相が掲げる「国債発行30兆円枠」に沿った02年度予算案の国会審議が始まったばかりで、追加的な財政出動はできない。

 日銀に対しても、追加的な緩和措置の求めが一層高まることは必至だ。だが、01年3月に量的緩和に踏み切り、その後3回の追加緩和を実施しているのに、実体経済への効果は一向にみえない。政府がデフレ対策の柱の1つに掲げる日銀の長期国債買い切りオペの月1兆円への増額も、効果が疑問視されることに加え、「際限ない国債買い入れにつながり、財政規律を失う」(市場関係者)との慎重論が根強い。

 3月には多くの企業が決算期を迎える。有効なデフレ対策をとれず、株価などの下落に歯止めがかからないと、損失処理で企業の利益は急減し、経済活動や株式市場をさらに冷え込ませる。持ち合いで大量の株式を抱える金融機関の場合、不良債権処理の原資が枯渇し、経営が行き詰まることにもなりかねない。


 中長期の構造改革を堅持しながら、足元の危機をどう克服するか−−。諮問会議の議長である首相自らが、デフレ対策の議論を主導し早急に具体化する必要に迫られている。(22:23)

アルゼンチン、11日に変動相場制へ一本化

 アルゼンチン政府は11日、固定、変動の二重為替相場制を廃止し、変動相場制に一本化する。すでに1ドル=2ペソの壁を破ったペソがさらに下落する恐れが指摘されており、政府は外国為替市場への介入でペソ暴落を阻止する方針だ。

 同国政府は金融機関が保有する市中のドル現金を中央銀行へ回収する措置を取り、ドルを一手に管理することで市場介入への態勢を整えた。


 レメス・レニコフ経済財政相は12日に訪米する。国際通貨基金(IMF)が求めてきた変動相場制への一本化をふまえ、IMFからの金融支援の早期実現を図る構えだ。(20:08)

建設会社ランクに一律の「ゲタ」 受注減に国交省救済策

 国土交通省は、建設会社をランク分けするために経営状態などを評価する経営事項審査で、点数が一律にアップするよう調整することを決めた。公共工事の削減や景気低迷でどの会社も受注が落ち込み、点数が下がっているため「ゲタ」を履かせる。12日に開かれる国の中央建設業審議会に諮り、03年度に向けた審査から採用する予定だ。

 経営事項審査は公共工事を受注しようとするすべての建設会社が受けなければならず、約20万社が対象になっている。

 建設会社は過去の完成工事高などの経営規模、自己資本比率などの経営状況を表す指標、技術者数、工事の安全成績や営業年数などを国や都道府県に申告。それぞれの項目を点数化したうえで、決められた計算式で総合評点をはじき出す。工事を発注する国や自治体はこの点をもとに会社をランク分けし、点が高いほど大規模な工事の入札に参加できる。

 現在の基準は94年にでき、平均点数は700点に設定されている。

 しかし、その後、景気低迷で民間工事が大幅に減り、公共工事も削減が進んでいるため、建設会社は軒並み受注減となった。最近は、完成工事高に基づく点数の平均は700点よりも数十点も低い。中堅以下の会社は、技術がありながら受注の落ち込みのために大規模工事の入札に参加できないところも多いとみられる。

 このため、同省は平均が700点に戻るように各社の点数に一定の数字をかけることにした。


 この措置で、一部の会社はランクが上がり、受注機会が増える可能性もあるが、同省は「弱い企業を救済するわけではなく、自然な状態に戻すということ。今後も工事の発注が増えることは考えられず、さらに調整が必要になるかもしれない」としている。(03:15)

都市計画、NPOに提案権 地主の3分の2同意が条件

 NPO(非営利組織)など民間の団体が街づくり計画案をつくって自治体に提案できるようにする都市計画法改正案の概要を国土交通省が固め、3月初めにも国会に提案する。地域の地主の3分の2以上の同意を得ることが条件となる。計画の立案権を民間により広く開放し、市民参加型の街づくりを促そうという狙いだ。NPOが都市計画法に登場するのは初めてだ。

 改正案の概要によると、開発や建築が規制される都市計画区域のうち、一定規模以上の区域が対象。1人または複数の地主や特定非営利活動促進法(NPO法)によるNPO法人、街づくり協議会などが、この区域の生活道路、公園の配置、建物の用途や高さ、雑木林の保全などについての素案を都道府県か市町村に提案できる。住環境を守るためコンビニエンスストアの進出やマンションの色、形などを規制すべきかどうか、不況で閉鎖された工場の跡地をどう利用するかといった内容を盛り込むことも可能。ただし、区域の地主らの3分の2以上の同意が必要だ。

 民間の提案があれば、自治体はなるべく早く採用するかどうか判断する。採用する場合、自治体としての案を別途つくって都市計画審議会に諮る。この際、民間の素案も併せて審議会に提出することを義務付けた。審議への市民参加を間接的に保障する意味がある。

 また、採用しない場合も、審議会に民間の素案について意見を聴いたうえで、提案者に不採用の理由を通知しなければならず、「門前払い」に一定の歯止めをかけた。

 都市計画は原則として市町村や都道府県が策定する。ただし、都市計画制度の一種である「地区計画」に限っては、市町村が条例をつくれば、住民側から計画を提案できる。また、政府が今国会に提案した都市再生特別措置法案(10年間の時限法)は、緊急整備地域に限って民間の開発事業者が都市計画を提案できるようにしている。


 今回の都市計画法改正案は条例や期限、緊急整備地域といった限定条件をつけず、NPOの役割も認めたことで、民間提案方式が大いに拡充されることになる。(03:14)