イスラエルVSパレスチナ
2002/7/27
イスラエル空爆直前、パレスチナ側が停戦合意していた

 【エルサレム25日=当間敏雄】多数の民間人死傷者を出した23日未明のイスラエル軍によるガザ空爆の直前に、パレスチナ解放機構(PLO)主流派ファタハの武装組織タンジムやイスラム原理主義組織ハマスが「一方的停戦宣言」を出すことで、ほぼ合意していたことが25日までに判明した。

 空爆により「停戦」への動きは完全にストップ、ハマスなどは報復を宣言しており、テロの自発的停止へのわずかな可能性は、爆撃で吹き飛ばされた格好だ。

 パレスチナ筋やイスラエル紙イディオト・アハロノトの報道などによると、空爆の数時間前、アラファト自治政府議長の治安担当補佐官となったダハラン前治安警察長官(ガザ地区)がハマスの精神的指導者ヤシン師と会談、停戦を宣言する声明で原則同意していたという。

 また、空爆の1時間半前には、ヨルダン川西岸ジェニンでファタハ武装組織タンジムの幹部らが会合を開き、23日に発表されるはずだった停戦宣言の表現を承認していた。停戦宣言は2か月ほど前からタンジムの現場司令官レベルで協議されてきたという。

 停戦へのイニシアチブは欧州連合(EU)やエジプト、サウジアラビアなどの支援を受け、自治政府と過激派との調整が行われてきた模様。イスラエル情報機関は、この動きを数週間前から察知、EU側が22日、イスラエル側に停戦の動きを通知したという。

 EUのソラナ共通外交安全保障上級代表は、自爆テロ停止の合意が「空爆前には手の届く所にあった」と語ったが、イスラエルのカツァブ大統領は軍放送に「(パレスチナ側の停戦の)意図は真剣なものではないというのが治安当局者全員の意見だ」と反論した。

 パレスチナ側の「一方的停戦」はこれまでにも発表されたことがあるが、なし崩し的に崩壊している。(読売新聞)
パレスチナ代表、国連安保理でイスラエルを激しく非難

 [国連 24日 ロイター] パレスチナ解放機構(PLO)のキドワ国連代表は、国連安全保障理事会の席上、ガザ市へのミサイル攻撃を命じたイスラエル指導部を戦争犯罪で裁くよう呼びかけた。
 この攻撃は、イスラム原理主義組織ハマスの軍事部門「イザディン・アルカッサム」(カッサム隊)の指導者サラハ・シャハダ師を目標に行われたもので、シャハダ師や子どもなど15人が死亡している。
 これに対し、イスラエルのヤコブ副大使は、攻撃の犠牲者に対して「強い遺憾の意」を表明したものの、「極悪で残忍なテロリストの一人」であるシャハダ師を止めることができなかったパレスチナ自治政府側の対応により、攻撃を行わざるを得なかったと指摘した。(ロイター)

<ガザ空爆>安保理緊急協議 アラブ諸国が空爆非難決議案を提示

 【ニューヨーク上村幸治】国連安全保障理事会は24日、多数の民間人が犠牲になったイスラエル軍のガザ空爆を受けて緊急公開協議を開き、各国代表が演説した。協議に先立ち、アラブ諸国は「非合法な処刑だ」と空爆を非難する決議案を各国に提示しており、採決をにらみながらの駆け引きが深夜まで続いた。

 アラブ諸国の決議案は、軍事行動やテロを含むあらゆる暴力の完全停止を呼びかけるとともに、イスラエル軍に(衝突が激化した)00年9月以前の位置まで撤退するよう求めている。

 しかし、イスラエル寄りの米国は、アラブ諸国案の表現がイスラエルに厳しすぎるとして、国連やロシア、欧州連合(EU)とともに準備している中東和平4者協議の活動や行動計画に影響が及ぶことを懸念。このため「安保理では決議の採決は行わず、各国が意見を表明するだけでいい」との考えを示しており、アラブ諸国案に拒否権を行使する姿勢をちらつかせている。

 アラブ諸国は、イスラエルに対する国際批判がかつてなく高まっているのを受け、国際世論を誘導するために、決議案の存在を前面に押し出そうとしている。

 しかし、米国に拒否権を行使させることで、国際社会の関心を引き付けるべきなのか、決議案を修正してでも採択に持ち込むべきなのか、まだ結論を出していない模様だ。

 パレスチナのアルキドワ代表はこの日の緊急協議の席上、イスラエル軍の空爆によって2カ月から13歳までの子供が殺されたことを強調し、今回の事件は「国際刑事裁判所(ICC)の設置条約が発効してから最初の戦争犯罪だ」と指弾した。

 これに対し、イスラエルのジェイコブ大使は「われわれは、自分たちの市民を守るための行動を強いられたのだ」と反論した。(毎日新聞)
<ガザ空爆>イスラエルが原因調査に着手 民間人多数巻き添えで

 【エルサレム福島良典】イスラエルのペレス外相は24日、軍によるガザ空爆で多数の民間人死傷者を出した原因の調査に着手する考えを明らかにした。

 空爆はイスラム原理主義組織「ハマス」の軍事部門「カッサム隊」創設者、サラハ・シャハダ師の暗殺が目的だった。だが、子供を含む周辺住民ら少なくとも14人が巻き添えで死亡したため、国際社会はイスラエルへの非難を強めている。

 ペレス外相は24日、欧米テレビとのインタビューで「人々、特に子供の命が失われたことを私たち全員が遺憾に感じていると思う」と述べ、「意図的に行ったわけではないが、戦争では間違いが起きる」と語った。その上で、「何がまずかったのかを調べ、結論を出す」と明言した。

 シャロン首相は当初、空爆を「最も成功した軍事作戦」と自賛したが、イスラエル紙によると、後に「民間人の存在を知らなかった」と主張しているという。

 イスラエル国内では(1)ガザの人口密集地にもかかわらず、なぜ民間人の存在を考慮しなかったのか(2)なぜF16戦闘機を使い、強力な1トンの大型爆弾を落としたのか――など、責任の所在と真相の究明を求める声が出始めている。(毎日新聞)
在テルアビブ米国大使館、ハマスの報復宣言は深刻な事態と判断

 [ワシントン 24日 ロイター] 在テルアビブ米国大使館は、イスラエル在住の米国民に対し、イスラム原理主義組織・ハマスがイスラエル軍機によるガザ空爆に報復すると明言していることについて、深刻な事態だと受けとめていることを伝えた。
このなかで、「在テルアビブ米国大使館およびイスラエル政府は、ハマスの発言を確かな脅威と受けとめている。すべての米国民に対し、大使館が作成した安全を確保するためのガイドラインをあらためて確認するよう求める。緊張が高まる状況においては、リスクにさらされる状況を減らすことが格段に重要になる」と述べた。
 イスラエル軍は現地時間23日未明、F16戦闘機で空爆を行い、ハマス幹部のサラハ・シャハダ師のほかパレスチナ人14人が死亡し、少なくとも145人が重軽傷を負った。これに対してハマスは報復攻撃を言明している。(ロイター)