流血の中東情勢2001
12/05

<自爆テロ>犯人1人が死亡、巻き添えで8人軽傷 エルサレム

 エルサレム中心部の高級ホテル前の路上で5日朝、自爆テロが起き、パレスチナ人とみられる自爆犯1人が死亡、通行人ら8人が軽傷を負った。イスラエルが3日からパレスチナに対する軍事報復を始めて以来初の自爆テロで、イスラエル側は改めて態度を強硬化させそうだ。(毎日新聞)
パレスチナで再び自爆テロ、過激派が犯行声明

 【エルサレム5日=当間敏雄】エルサレム中心部の高級ホテル「デービッド・シタデル」前で5日朝(日本時間同日午後)、男が体に巻きつけた爆弾で自爆し犯人は即死、6人が負傷した。パレスチナのイスラム原理主義組織「イスラム聖戦」が犯行声明を出した。イスラエル軍のパレスチナ攻撃に対する報復と見られ、同ホテルに滞在していた右派リクードの強硬派、ランダウ警察相とオルメルト同市市長を狙った可能性もある。 死者28人を出したエルサレムなどでの連続自爆テロを受けてパレスチナ自治政府を「テロ支援団体」と認定、「対テロ戦争」を宣言したシャロン・イスラエル政権が、一層の強硬策に出るのは必至。3日夕に始まった同国軍の報復攻撃は4日夜、暴風雨で一時中断したが、軍は作戦規模をさらに拡大する構えだ。

 5日の爆発現場近くの別のホテルにはパレスチナ情勢鎮静化のため現地入りしている米特使、ジニ前中央軍司令官も滞在していた。

 シャロン政権の動きについて、自治政府側は「アラファト自治政府議長と自治政府に対する戦争で、対テロ戦争ではない」(ラボ文化情報相)と反発。しかし、テロに対する同議長の姿勢を不満とするブッシュ米大統領が4日、イスラエル支持の姿勢を鮮明にするなど国際的な孤立感は逆に深まっている。

 一方、連続自爆テロで犯行声明を出したイスラム原理主義組織ハマスの精神的指導者、アハマド・ヤシン師は5日、カタールの衛星テレビ「アル・ジャジーラ」との会見で「イスラエル軍の攻撃の前に白旗をあげることはない」と闘争継続を強調した。(読売新聞)
イスラエル労働党閣僚、政権離脱を協議へ


 [エルサレム 5日 ロイター] イスラエルのペレス外相ら労働党閣僚8人は、シャロン政権からの離脱を協議する。同党関係者らが明らかにした。
 外相は、緊急閣議でパレスチナ自治政府が”テロ支援団体”と認定されたことを受け、政権離脱を検討する意向を表明していた。
 同党広報担当者によると、閣僚らは協議終了後、労働党議員団との会合に臨む。
 議員団が政権離脱を決議する場合は、党中央委員会の承認が必要になるという。
 (ロイター)
<イスラエル大使>東京の大使館で会見 アラファト議長を非難

 連続自爆テロを受けたパレスチナ情勢緊迫化に関連し、イスラエルのイツハク・リオール駐日大使は5日、東京都千代田区の同国大使館で記者会見した。大使はアラファト・パレスチナ自治政府議長について「彼は政治的指導者ではない。」と厳しい調子で非難、パレスチナ過激派摘発を強く求めた。(毎日新聞)
バンコクのロケット弾、中東問題との関連はないもよう


 [バンコク 5日 ロイター] イスラエル国営エルアル・イスラエル航空の事務所が入ったバンコクのビルに、対戦車ロケット弾が打ち込まれた事件について、タイの警察当局は、中東での対立激化とは関連はないだろう、との見方を示した。
 警察当局によると、負傷者などは出ておらず、万が一に備えてイスラエル大使館の警備態勢が強化されたという。
 現場付近にいた警官はロイター通信に対し、ロケット弾はビルに入居しているスーパーマーケットを狙った可能性があると指摘した。同スーパーでは、以前も爆弾騒動があったという。
 地元ラジオ局は、同スーパーと契約している警備会社間の対立から発生したものとの観測を伝えている。(ロイター)
バンコク、イスラエル航空などのオフィスビルにロケット弾


 [バンコク 5日 ロイター] イスラエル国営エルアル・イスラエル航空の事務所が入ったバンコクのビルに、対戦車ロケット弾が打ち込まれた。
 警察によると、ロケット弾は午前6時30分に、隣接するテスコのスーパーマーケット方向から発射された。
 ロケット弾はスーパーをかすめてビルに当たり、14階に入っているエルアル航空事務所の窓が割れる被害が出た。
 負傷者などは出ていないという。(ロイター)
<パレスチナ自治区>イスラエルの報復攻撃におびえる街

 【ガザ(パレスチナ自治区)小倉孝保】連続自爆テロを受けたイスラエル軍による報復攻撃から2日目の夜を迎えたパレスチナ自治区ガザに4日夜(日本時間5日早朝)入った。同夜から激しい雨を伴った嵐となり、攻撃は止んでいた。イスラム教の宗教行事・ラマダン(断食月)中は日没後、住民でにぎわう通りも、巻き添えを恐れ、商店がシャッターを閉め切り、不気味な静けさが漂い、街全体が攻撃の再開におびえているようだ。

 ガザ市の中心街オマル・エルムフタール通り。道路をはさんで衣料、食品関係の店や飲食店が軒を連ねガザ市で最も賑やかな通りだ。だが、ほとんどの店が4日夕には店じまいしたという。雑貨店主、アブドルメギドさん(46)は「イスラエルのやっていることこそ、テロじゃないのか。シャロン(イスラエル首相)のせいで、我々の生活はめちゃくちゃだ」と激しい怒りをぶちまけた。生活のために店を開けているが、客はほとんどないという。

 静まり返った通りで客を探していたタクシー運転手、アリさん(23)は「アラファト(パレスチナ自治政府議長)はこんな攻撃を放置しておくのか。ここは俺たちの故郷のはずなのに、イスラエルに好き勝手にされている」と興奮して話した。

 アリさんによると、ラマダン中、この通りは家族連れがショッピングを楽しんだり、若者から年寄りまでが遅くまでおしゃべりに興じる。3日の攻撃開始からそうした華やかさは消えうせたという。

 喫茶店主のアハマドさん(28)は「イスラエルの脅しに負けないようにと店を空けたがやっぱり客は来ない。ラマダンの夜は普通、チャイ(紅茶)を飲んだり、シーシャ(水たばこ)をする人でいっぱいだ。それがこんなもんだ。米国もイスラエルと同罪だ」とはきすてた。(毎日新聞)
<中東和平>イスラエルの軍事行動支持を鮮明に 米大統領表明

 ブッシュ米大統領は4日、フロリダ州で行われた対話集会で、中東和平プロセスを再開するには「テロを根絶する必要がある」と述べるとともに、「イスラエルにとって米国以上に良い友人はいない」と明言した。両国の強い同盟関係に沿って、イスラエルの軍事行動を基本的に支持する考えを鮮明にしたものといえる。(毎日新聞)
<中東紛争>イスラエル 議長府隣接ビルを攻撃 報復第2波

 イスラエル軍は4日、ヨルダン川西岸とガザのパレスチナ自治区の計5カ所以上で、武装ヘリと戦闘機による第2波の一斉報復攻撃を行った。西岸ラマラでは内務省ビルをミサイルが直撃した。アラファト議長は無事だった。各地の攻撃で、15歳の少年を含むパレスチナ人2人が死亡、100人以上が負傷した。(毎日新聞)
<資産凍結>慈善団体などを ハマスの資金源と指摘 米財務省

 米財務省は4日、米テキサス州に本拠を置く慈善団体「ホリーランド・ファンデーション」とパレスチナに本拠がある2つの金融機関の資産凍結を命令した。同省はいずれもイスラム原理主義組織「ハマス」の資金源となっていると指摘。イスラエルで発生した自爆テロを受け、今月末に予定していた凍結命令を急きょ繰り上げた。(毎日新聞)
<中東紛争>ブッシュ政権窮地に 対テロ戦争否定できず

 イスラエルが3日、パレスチナ自治政府を「テロ支援団体」と断じ「テロとの戦争」を宣言したことで、ブッシュ米政権は難しい立場に追い込まれた。自らも主張する「テロとの戦争」を理由にイスラエルの強硬策を支持すれば、アラブ・イスラム諸国の反発は必至だ。そもそもイスラエル側に大義があるのか、という問題もある。(毎日新聞)