移植ネットを覆う利権構図と「紫芳庵」の役割
医療問題リスト
最近では臓器提供を募るCMが流れるようになった。臓器提供を待ち望んでいる患者のためにと、CMは国民の善意に呼びかけている。しかし、その善意を受ける側の移植ネットがどうなっているのか?ということはあまり問題にされていないようである。臓器斡旋団体のトップは「臓器移植ネットワーク」という組織で、約35名の職員のうちドナー(臓器提供者)とレシピエント(移植を受ける患者)のコーディネーター(仲介役)が半数を占めるという。会長の小紫芳夫(komurasaki yosio)を筆頭に銀行の会長、大企業の相談役など医学的知識のない理事およそ60人で構成されている。小紫会長自身、医学的知識はなく、日本馬主協会連合会会長の肩書きも合わせ持つ。この臓器移植ネットワークという斡旋会社に政府は年間8億円の補助金を出している。そんな臓器移植ネットワークの小紫会長による「理事会での反対意見は認めない」というワンマンぶりが問題になっているらしい。医学に素人な理事会の面々が決断を下す危うさ、高知県においては今年2月に心臓移植のレシピエントを間違えるという重大ミスを犯してしまった。今の会社の前身「臓器移植普及会」の時代には元大蔵主計局次長の海堀洋平氏が事務局長に就任、小紫氏の横浜倉庫新社屋落成式(95年2月)には中曽根康弘や当時の通産相の橋本龍太郎も駆けつけた。赤坂にはこうした大物を接待するVIP専用料亭「紫芳庵」があり、先の中曽根や橋本のほか、これまで津島雄二元厚相(現在理事)、厚生官僚の朝浦幸男(現臓器移植対策室長)、貝谷伸(元臓器移植対策室長)らが招待されたと言われているが、いずれも当人たちは否定している。これだけでも小紫会長の並々ならぬ努力(?)が伺えるが、人の命を左右しかねない移植ネットのこと、国民の税金から補助金8億円も毎年受け取っている立場からも安易な運営は許されるべきではないだろう。善意の臓器提供を促すCMが流れたら、我々はその背後にあるどす黒い利権構図を思い浮かべる必要がありそうである。
【参考『週刊現代』9月25日号47頁「内部告発!移植ネット会長のVIP専用料亭」より要約抜粋】
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