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日本原発動向、2002年6月
「川内原発の検査体制見直しを」−−反対の住民団体、九州電力に申し入れ /鹿児島
中部電力浜岡原発2号機(静岡県浜岡町、沸騰水型軽水炉、出力84万キロワット)で5月末に起きた冷却水漏れ事故を受け、川内市の市民グループ「川内原発建設反対連絡協議会」(鳥原良子会長)はこのほど、「電力会社の現状の検査手法には限界があるのではないか」として、九電に対し事故を教訓とした検査体制の見直しを求める申し入れ書を提出した。
鳥原会長ら会員8人が、同市久見崎町の川内原発展示館で、同原発の津村直芳次長らと面会した。
鳥原会長は「川内原発も運転開始から18年がたち、老朽化に伴う配管、溶接部の事故が発生する恐れがある」と警告した上で、(1)超音波探傷検査の対象を広げるなど検査には十分に時間をかける(2)点検の頻度を上げる――などを求めた。
津村次長は「(浜岡原発を)他山の石として、綿密に検査し、入念にパトロールしたいと考えている」と返答した。【藤野智成】(毎日新聞)
伊方原発2号機で真空ポンプが停止 フィルターの目詰まりで /愛媛
県は21日、伊方町の四国電力伊方原発2号機(加圧水型軽水炉)で20日、原子炉格納容器排気筒のガスモニター2基が停止したと発表した。吸い込み口に付けられたフィルターの目詰まりによるもので、原子炉の運転や環境への影響はないという。
四電によると、20日午前5時35分に、一方のガスモニターから故障警報が鳴り、調査中にもう一方も停止した。点検の結果、フィルターの目詰まりが原因で、モニターにつけられた真空ポンプが停止したものと判明。フィルターを交換し、同7時11分に復旧した。
フィルターは通常月1回交換しており、前回は先月22日に交換。今月18日の定期試験で排気を行なった後、27日か28日に交換する予定だった。四電は当面、フィルターを月2回交換して、トラブル回避に努めるとしている。 【沢木政輝】(毎日新聞)
社民党県連が石川知事に、廃炉求め要請書−−浜岡原発1、2号機 /長野
社民党県連(酒井邦夫代表)は21日、中部電力浜岡原発の1・2号機を廃炉にするよう求める石川嘉延知事あての要請書を県に提出した。
酒井代表は県庁内で開いた会見で、「先月の2号機の水漏れで中電に対する信頼がなくなった。県として、中電に事故原因の徹底解明を求めたうえで、老朽化が指摘されている1・2号機を廃炉にするよう国と中電に求めるべきだ」と要請した。(毎日新聞)
MOX燃料、英国に返還 ねつ造の反省忘れたのか /福井
99年12月16日、関西電力は高浜4号機用MOX燃料の検査データねつ造と使用中止を公表した。役員が県幹部に深く頭を下げ、翌日、陳謝に来た当時の社長に栗田幸雄知事が怒る様は今でも覚えている。ねつ造は3号機用だけで「4号機用は大丈夫」と言い続け、ひっくり返った。関電は自らの甘さを猛省し「教訓」としなければならない。
しかし2年半たって、教訓が生きているのかと思う。東京電力の輸送容器で放熱板の浮き上がりが分かり、国の指示で関電も同構造の4基を調べ、1基で同じ現象を確認した。ただ、今回の返還に使う輸送容器は別構造で同じ問題は起こりえず、浮き上がりの原因とされる内部の腐食の詳しい検査はしないという。
「構造上、大丈夫」という理屈は理解できても、「検査は必要ない」とする姿勢は理解できない。万全に万全を期することこそ「安心感」につながるのではないのか。「返還スケジュール優先か」と、余計なせんさくもされてしまう。
知事は「プルサーマルを認める立場は変わらない」と言う。それにあぐらをかいているわけではあるまいが、知事が2年半前、「同じことを繰り返すならもう原子力には協力できない」と社長に突きつけた言葉を、今は思い起こすべきだ。
【八重樫裕一】(毎日新聞)
伊方原発、ガスモニター2基が停止
四国電力は二十一日、愛媛県伊方町の伊方原発2号機(加圧水型軽水炉、出力五十六万六千キロワット)で、原子炉格納容器排気筒から放出される空気中の放射性ガス濃度を測定する「ガスモニター」二基が二十日早朝、停止したと発表した。既に復旧しており、原発の運転への影響や外部への放射能漏れはなかったという。
同社によると、二十日午前五時半ごろから予備用、通常監視用のガスモニターが相次いで停止。点検の結果、フィルターが目詰まりして空気が流れにくくなっていたと判明し、フィルターを取り替えた同七時すぎに復旧した。目詰まりの原因は空気中に浮遊するほこりや金属などで、放射性物質はなかったという。
同社は再発防止のため、毎月一回だったフィルターの交換頻度を二回に増やす方針。
柏崎原発、制御盤火災は過負荷が原因
東京電力は21日、柏崎刈羽原発1号機で19日に起きたサブドレンポンプ制御盤の火災は、制御盤に内蔵されたコンセントに負荷がかかりすぎたため発火したことが原因と発表した。
東電によると、コンセントには配管の交換作業のために、作業員が容量より高い電動ドリルと送風機をつないだが、ブレーカーの動作設定値が誤って容量より高く設定されていたため、ブレーカーが作動せずに発火した。
財政需要額東電が試算県の4分の1、150億円・福島
/公共事業、認識に差/核燃料税条例案再考求め県へ要望書
核燃料税の税率アップの根拠となる財政需要額が、課税側の県と納税側の東京電力の間で大きな隔たりがあることが20日、明らかになった。県が原発立地地域として防災や民生安定のために必要な財政需要を616億円と見込んでいるのに対し、東電は現段階のデータで試算した結果、150億円に満たない額とした。この日開会した6月定例県議会に、県は実効税率13・5%とする核燃料税条例案を提案したが、東電は再考を求める要望書を県などに提出し、反発を強めている。
財政需要額は今後5年間に原子力防災や健康管理、民生安定、産業振興などの事業に必要な額。県は避難道路となる県道や1次、2次医療の拠点となる県立大野病院や県立福島医大の整備などを積み上げ、616億円をはじき出した。このうち4割程度を核燃料税でまかなう。
東電は、県が示した財政需要について独自に検討した。細部までは詰めていないが、現段階の算定では多く見積もっても150億円程度で済むとの見方をしている。県の財政需要に比べ4分の1以下。額にすると約470億円の開きがある。
東電側は原子力啓発や広報など5、6件の事業の約23億円は県の示す財政需要をそのまま容認しているが、道路や橋、ダムなどの公共事業では主張が食い違っている。公共事業は総額約500億円に上っており、このうち、約160億円について東電は「発電所の立地に伴うものではない」と明確に線引きしている。公共事業以外も加えると、「ふさわしくない」とする事業だけで総額で約270億円に達する試算だ。
東電は事業の負担割合についても細かく検討している。約100億円の木戸ダムについては、水の利用者として一定の負担の必要性は認めているが、ダムには治水機能もあり、負担割合を考慮すると財政需要額はもっと少なくなるとしている。県立病院や福島空港の維持管理経費についても県が示す負担割合に反発している。
県に対しては、この試算内容をまだ示していないが、事務レベルでの協議は続けることにしており、東電は今後、納税者としての主張を県に伝えるとみられる。
<原発>女川2号機21日午前1時ごろ手動停止に 東北電力
宮城県女川、牡鹿両町の女川原発2号機の冷却水の流れを調整する再循環ポンプの軸封部内の水圧が19日から急激に低下したため、東北電力は20日、2号機を21日午前1時ごろ手動停止すると発表した。同社は来月5日に原子炉を停止して内部を検査する計画だった。(毎日新聞)
青森県六ケ所村 核燃料サイクルの地、巨大施設で国策支える /北陸
国内の商業用原発から搬出される使用済み核燃料は現在、ほとんどが青森県六ケ所村にある日本原燃の再処理工場に運ばれる。同村には他にも核廃棄物関連施設があり、約740ヘクタールの広大な敷地で国策の核燃料サイクル構想を支えている。数兆円の資金が投じられ、数百年先のことまで計画された巨大な核燃料施設群の大規模開発が進む同村を取材した。 【久田宏】
■六ケ所村と日本原燃
青森県東部、太平洋に面する六ケ所村は、なだらかな緑あふれる台地にある。漁業が主な産業だったが、69年に同村を含むむつ小川原地区が国の新全国総合開発計画に組み込まれ、国家石油備蓄基地が立地した。しかし他に大きな開発はなく、広大で買収済みの土地に注目した電力業界が、核燃料サイクルの一大基地にする計画を立てた。日本原燃は原発を抱える電力各社が主な株主だ。
■再処理工場
日本は原発から出る使用済み核燃料を再処理してプルトニウムとウランを回収、再利用する「核燃料サイクル」を国策にしている。これまで再処理は主に英仏両国に委託していたが、契約分の輸出は終了した。
日本原燃は93年4月、国内初となる商業用再処理工場を着工。05年の操業開始を目指し、現在工事の進ちょく率は80%を超えている。工場内の使用済み核燃料貯蔵施設は00年12月から本格的に受け入れを始めており、5月末までに福井県の日本原子力発電敦賀、関西電力美浜、同高浜の3原発から149トン、石川県の北陸電力志賀原発から11トンの使用済み核燃料が搬入されている。
同工場の最大処理能力は年間約800トンだが、国内の商業用原発からは年間約1000トンの使用済み核燃料が発生する。建設費は2兆1400億円にも膨らみ、コスト高に懸念が持たれている。
■高レベル廃棄物
使用済み核燃料を再処理すると、「核のごみ」の高レベル放射性廃棄物などが発生する。英仏から返還される高レベル廃棄物をガラスで固めた固化体を最終処分するまで一時貯蔵する施設が「高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター」だ。
95年4月から受け入れており、熱を帯びている固化体を自然風で冷却しながら30〜50年間貯蔵する。その後、国内に建設される最終処分場(設置場所は未定)の地下に埋設されることになっている。
同センターには5月末で616本の固化体が貯蔵されているが、これから英仏から返還される分や、建設中の再処理工場から発生する分のため、さらに同センターと同じ施設が必要だ。
■低レベル廃棄物
原発での運転や点検で発生する放射能レベルが低い廃棄物をセメントなどと詰めたドラム缶を処分するのが、「低レベル放射性廃棄物埋設センター」だ。原発から運ばれたドラム缶は、枠の中に重ねられ、セメントを注入して巨大な箱状にした後、土をかぶせる。日本原燃は今後300年、監視するという。担当者は「(会社は続かなくても)国がある限り、責任を持ってくれるでしょう」。楽観的、投げやり、開き直り……。そんな印象を受けた。(毎日新聞)
ウラン残土訴訟、25日判決 鳥取地裁 '02/6/20
協定解釈で対立12年
核燃料サイクル開発機構(核燃機構、旧動燃)が、鳥取県東郷町方面地区の山中に放置しているウラン残土について、同地区自治会(二十戸)が協定に基づいて撤去を求めた民事訴訟の判決が二十五日、鳥取地裁である。十二年にわたって平行線をたどってきた争いは、司法の場での決着を迎える。
問題の協定は一九九〇年八月に交わされた。核燃機構は同自治会に対し地表面で毎時〇・三マイクロシーベルト(自然界は〇・一同)以上の残土約三千立方メートルの撤去を約束。一部は五百五十二個の袋詰めにまでした。
処理場所は、県境をわずか数十メートル越えた人形峠環境技術センター(岡山県上斎原村)。しかし、同県は環境保全協定など理由に「鳥取で危ないと思われるものを受け入れられない」「両県にある他の二十カ所の残土は、現地で覆土処理などしている」と、当初から持ち込みを拒否したまま。
裁判では残土の危険性には触れず、協定不履行の理由に絞られた。核燃機構側は、協定の最後の項にある「撤去は関係自治体の協力を得て、米、ナシ等の収穫期までに着手し完了する」の一文を盾に、「岡山県の協力が得られないことは、撤去義務の停止条件に当たる」と主張してきた。
自治会側は締結時の解釈から、残土を運び出す際の県内自治体の協力だとし、文法論まで出て真っ向から対立した。岡山県は直接の当事者でないため出廷しなかった。
鳥取県が裁判費用を負担して後押しをする異例の訴訟で、とにかく協定の履行を訴えた自治会の村上秋彦区長(70)は「主張はできた。長年の願いが達成できると思う」と期待している。
<原発>制御棒駆動ハウジング溶接部を点検へ 2電力の5基で
中部電力浜岡原発1号機で昨年11月、原子炉底部にある制御棒駆動ハウジング溶接部にひびが入り、冷却水が漏れた事故の再発防止で、経済産業省の原子力安全・保安院は19日、同1号機と同種の溶接金属を使い同じ溶接方法を取った原発を持つ2電力の点検計画を発表した。4原発の5基で計476カ所を調べる。(毎日新聞)
柏崎刈羽原発1号機付近でボヤ
19日午後4時半前、東京電力・柏崎刈羽原発1号機近くにある海水熱交換器建屋外壁に取り付けられているサブドレンポンプ制御盤が燃えているのを付近にいた作業員が見つけ、消火器でまもなく消し止めた。制御盤は内部の変圧器がこげた程度だった。
火災による外部への放射能漏れはなく、けが人もなかった。1号機は通常運転を続けている。
刈羽原発7号機トラブルで反対派が抗議
東京電力・柏崎刈羽原発7号機の再循環ポンプの羽根に微細な傷が見つかった問題で、反原発地元3団体は19日、東電に説明を求めた。
東電側は、傷の原因として、鉄の糸状の異物が羽根にこすれた可能性が強いと説明。3団体は、同じく7号機などで起きた核燃料からの放射性物質漏れとの関連をただし、「炉型に問題があるのではないか」などと指摘した。
[新潟日報 06月19日(水)]
排水施設の制御盤焼ける=原子炉に影響なし−新潟・柏崎刈羽原発
19日午後4時半ごろ、新潟県柏崎市の東京電力柏崎刈羽原発1号機(沸騰水型、出力110万キロワット)で、わき出てくる地下水を排出する施設の制御盤から出火しているのを作業員が発見し、消火器で消し止めた。東電は出火原因などを調べている。原子炉の運転に影響はなく、けが人もないという。
東電によると、制御盤は縦約2メートル、横約65センチ、奥行き約40センチで、中のトランスが焦げた。 (時事通信)
国の足羽川ダム方針案、来月に比較検討結果示す 県議会で栗田幸雄知事 /福井
6月県議会が18日、開会した。栗田幸雄知事は提案理由説明で、足羽川ダムについて、国が美山町の現計画と池田町の代替候補案との比較検討結果を7月に示すことを明らかにした。
九頭竜川水系の河川整備計画策定に当たり、学識者らが意見を述べる九頭竜川流域委員会第3回会合などで説明する予定。国の方針案に対する同委の意見などを踏まえ、最終的な同ダム建設の取り扱いが決まる。栗田知事は「必要性を広く住民に訴え、下流受益地域と一体となって国に早く事業着手するよう要望していく」と述べた。
また、今年度の原子力防災訓練は今秋に大飯原発で実施するとした。例年は年度末だが、季節を変えて実施を求める意見があったほか、今回は統一地方選と重なることも考慮したとみられる。
一方、大阪ガスが敦賀市で予定していたLNG(液化天然ガス)基地建設計画の中止に対し、栗田知事は「地域振興に期待を寄せていただけに、誠に遺憾」と発言。今後の対応について「敦賀市と連携しながら、妥当な結論が得られるよう努力していく」と話した。
議案は、敦賀市樫曲の民間廃棄物最終処分場の覆土や水処理経費1億1900万円の専決処分など15議案を提案した。 【八重樫裕一】(毎日新聞)
安全性など、独自判断せず 貯蔵施設公開質問へ−−むつ市 /青森
むつ市が検討している使用済み核燃料中間貯蔵施設の誘致をめぐり、市民グループ「核の『中間貯蔵施設』はいらない!下北の会」(野坂庸子代表)が提出した公開質問状への杉山粛市長の回答が18日明らかになった。
回答は、施設の安全性などについて「国が安全審査指針を策定すると思う」などとし、市としての独自な判断は示さない内容。40〜60年とされる貯蔵期間についても「貯蔵と輸送の安全性を確認した上で、立地地元(自治体)と事業者(東京電力)との協議で決まると認識している」と、明言を避けた。
同会は今月23日(日)午後2時より同市の下北文化会館で、核燃料サイクル1万人訴訟原告団、山田清彦事務局長を講師に招き「再処理工場ってどんなもの?」の勉強会を開く予定。【宮本寛治】(毎日新聞)
資源エネ庁の政策検討会出席 福島県知事、応じぬ考え
東京電力福島第一原子力発電所3号機(同県大熊町)でのプルサーマル計画に否定的な福島県の佐藤栄佐久知事に対し、資源エネルギー庁が同県の「エネルギー政策検討会」に出席して東電と国の考えを説明したいと要望したことについて、佐藤知事は18日の定例記者会見で「エネルギー政策検討会をどう進めるかはこれからの問題で、そこまで考えていない」と述べ、現時点では国側の要望に応える考えのないことを示した。
佐藤知事は、原子力委員会が原子力政策をめぐり直接対話を求めていることについても「エネルギー政策検討会が続いており、まだ意見を申し上げる段階ではない」と述べ、話し合いに応じない考えをあらためて示した。
[河北新報 2002年06月19日](河北新報)
核燃料重量課税、当分1キロ6000円に減額−−県が激変緩和措置 /福島
◇きょう議会に条例案
核燃料税の増税問題で県は17日、1キロ当たり1万1000円としていた核燃料の重量課税額について、「当分の間」同6000円に減額する激変緩和措置をまとめ、発表した。県は当初、現行税率7%から実効税率16・5%へ増税する方針だったが、同13・5%への増税となる。納税者である東京電力は反発したままだが、同税増税関連条例案は18日に県議会に提出され、20日開会の6月議会で審議される。
重量課税について、核燃料税条例案の本則では、既定方針通り1キロ当たり1万1000円とするが「当分の間、1キロ当たり6000円とする」との付則を併記する。将来引き上げるには付則部分の条例改正が必要となるが、会見した川手晃副知事は「県議会、事業者(東電)と調整しながら判断していく」と柔軟に対応する方針を示した。
同税の条例は5年間の時限条例だが、仮に5年間、重量課税を6000円とした場合、5年間の税収は当初方針より約45億円の減額となる。副知事は「必要最低限の事業には支障がないと判断」し、減額を算出したと説明した。また、県は増税に際し、原発立地に伴う財政需要を約616億円(財源不足額)と算出し、うち約275億円は増税後の同税収入を充当する方針だったが、減収分について副知事は「事業の優先順位などを判断し、調整していく」としている。
県は激変緩和措置について県議会各派に説明。最大会派の自民党議員会、第2会派の県民連合などは県の方針を基本的に評価し、条例案提出を了承した。第3会派の共産党は同措置を批判しているが、条例案には反対しない見通しだ。
◇「納得できない」−−東電福島事務所
県の方針決定を受け、東電福島事務所の佐野清一所長が会見し「10%を超える税率は受け入れられない。到底納得できない」と反発。納税者の同意を得ないままの条例案提出となるが「説明期間が短過ぎる」などと県の対応を改めて批判した。
一方、川手副知事は「課税自主権が尊重される一方、納税者への説明責任があるが、東電とは計12回調整した。最善の努力はしたつもりだ」と述べ、提出後も引き続き東電との調整に努力する考えを示した。【神崎真一】(毎日新聞)
浜岡原発廃炉求める意見書採択=吉田町議会、静岡県内で初めて
中部電力浜岡原子力発電所2号機(静岡県浜岡町)で起きた配管からの冷却水漏れを受け、同町に近い同県吉田町は18日、同原発1、2号機の廃炉を求める意見書を同町議会が17日に全会一致で採択し、近く県知事と文部科学、経済産業の両大臣に提出することを明らかにした。 (時事通信)
核燃料税 実質税率は13.5% 福島県、条例案決定
福島県は17日、原子力発電所の燃料に課税する核燃料税について、ウラン燃料価額の7%としている現行税率を、新たに導入する重量課税と合わせ実質税率を13.5%に引き上げる条例案を、6月定例県議会に提出することを決めた。当初案の実質税率は16.5%だったが、県議会の過半数を占める会派・自民党議員会の要望を受け、重量への課税額を当面、引き下げる「激変緩和措置」を導入した。
自民党議員会などは基本的に受け入れる意向で、条例案は可決される見通し。総務省の同意を得て11月10日に施行されれば、原発を抱える全国の自治体に影響を与えるのは必至で、納税者の東京電力は強く反発している。
条例案では燃料価額への課税率を10%に引き上げ、全国で初めてウランの重量にも課税。本則では、重量への課税額を当初案通り一キロ当たり1万1000円と明記する一方、激変緩和措置として「当分の間」は6000円とする付則を盛り込んだ。
重量課税額の引き上げ時期や額については「原子力防災事業の進行状況や、東京電力と県議会の動向などを勘案し、判断する」(川手晃副知事)としている。重量課税額を6000円に据え置いた場合、条例の期限である5年間の税収は、最近5年間より90億円多い230億円が見込まれる。
核燃料税の使途を明確化するため、「原子力防災等対策基金」を創設する条例案も提出。税収の相当額を基金に入れる方針。
福島県が条例案提出に踏み切ったことについて、東京電力福島事務所は「他県の例を見ても燃料価額の10%が相場で、それを超える税率は到底納得できない」と反発。「県に再検討を求め、総務省や県議会にも事業者としての考えを説明していく」としている。
[河北新報 2002年06月18日](河北新報)
[留保の行方]川内原発環境調査/3 行き詰まり 原発依存財政、危機に /鹿児島
◇新税足踏み、調査塩漬け−−市は苦悩
晴れた週末の昼前。川内市中郷2の市歴史資料館。1階事務室の片隅で、忙しく切り替わる警備用モニターは、がらんとした展示室を映し出していた。
資料館は、市が84年2月、国の電源三法交付金を原資に7億3000万円で建設した。年間入館者は当初の2万人から年々減り、01年度は8600人にまで落ち込んでいる。
◇ ◇
川内原発1、2号機の設置で市は潤った。運転開始直後の85〜88年度は、財政力指数が「1」を超え、地方交付税の不交付団体になった。00年度までに得た交付金は119億円、九電の固定資産税が471億円。市国際交流センター(11億1000万円)▽せんだい宇宙館(5億6000万円)などの「箱物」が建設され、電源立地促進対策交付金(66億円)だけでも道路や水道整備など143事業が行われた。
だが今、「原発頼み」の財政は収入と支出の両面から危機にひんしている。
交付金と固定資産税は制度上、年々減っていく。00年度は、ピーク(86年度)の3分の1の21億1000万円。逆に、施設の維持運営費はかさんできた。00年度は、交付金(8億円)の半分近くが充てられ、財政力指数は「0・64」に落ちた。浜田時久財政課長は「将来の負担も考えて運用すべきだった」と反省する。
さらに、茨城県東海村(99年)の臨界事故などを機に、防災設備の充実を求める市民の要望が高まり、新財源も必要になっている。
市は00年4月から、年間5億円が見込める新財源として、使用済み核燃料税の導入を計画してきたが、九電の反発などで、6月議会でも条例案を提案できなかった。森卓朗市長は「道路整備の要望などは多いんだが」「じくじたる思いだ」と苦い表情を見せる。
3号機増設は、そんな市に豊かな財源をもたらすことになる。森市長、市議会とも「調査と増設は切り離して考える」と前置きしながら、調査を推進してきた。市議会は00年6月、環境影響調査の早期実施を求める陳情を採択。3カ月後の九電による環境調査申し入れの呼び水となった。01年1月、森市長も関係市町村の首長の先頭を切って調査に同意した。
しかし、調査は、須賀龍郎知事の回答「留保」で、1年2カ月間、動きが止まったままだ。森市長は「後は知事の判断」と事態を静観するが、議会側はいらだちを隠さない。原口博文議長は「為政者として、決断の時は来ている。結論を出してもらわないと、市は財政の見通しが立てられない」と憤る。
新税の足踏みに、調査の塩漬け。相次ぐ行き詰まりの中で、市は苦悩する。川内市の「川内原発建設反対連絡協議会」の鳥原良子会長は原発に依存した財政運営自体に疑問を投げかける。「まちづくりは自分たちで汗を流さないと、一過性に終わる。『あわよくば』と、原発を受け入れるのは間違いです」【藤野智成】
◇使用済み核燃料税
定期検査の燃料交換で原発から外され、施設内に貯蔵される核燃料に課される税。川内市が普通税として、東電の柏崎刈羽原発のある新潟県柏崎市が目的税として導入を検討中。川内市では今年2月、学識者による新税創設研究会が「課税は可能」との報告書をまとめたが、九電は県に納める核燃料税と「二重課税の恐れがある」と反発している。川内原発には2基で計1280体が貯蔵されている。(毎日新聞)
MOX燃料データねつ造 高浜市で英国反原発グループのマーティンさんが講演 /福井
英国の反原発グループのスタッフで、関西電力高浜原発から英国に返還されるウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を製造し、データねつ造があった英核燃料会社(BNFL)を監視しているマーティン・フォーワードさん(62)が16日、高浜町で講演した。マーティンさんは「B社は放射能汚染を生み出し、環境に配慮しない」と訴えた。
環境保護団体「グリーンピース・ジャパン」が主催。「高浜町住民投票条例を実現する会」などが協力した。町民ら約30人が集まった。
B社は、英国中西部セラフィールドに、使用済み核燃料を再処理してプルトニウムとウランを回収する再処理工場や、MOX燃料加工工場などの核関連施設を持つ。
近くに住むマーティンさんは、再処理工場から出る放射性のガスや排水が市民に不安を与えている現状を報告。工場内に再処理で生じる核廃棄物が貯蔵されている点には「すべて使用済み核燃料を出した国に送り返すべきだが、何百回もの輸送が必要となり危険。英国で管理せざるをえない」と複雑な表情で語った。
MOX燃料のB社への返還について、マーティンさんは「返還はB社に再処理など新たなビジネスを生み出すきっかけになり、環境への影響が一層懸念される。高浜原発のMOX燃料は日本国内で管理してほしい」と訴えた。 【久田宏】(毎日新聞)
エネルギーと環境問題探る 29日に甲府でフォーラム
発電時の「ごみ」焦点
エネルギーを利用する際に発生する二酸化炭素や放射性廃棄物など副産物について考えるフォーラム「電気のごみについて考えてみませんかin山梨〜エネルギー、将来の世代のために〜」(原子力発電環境整備機構、山梨日日新聞社、山梨放送主催)が二十九日午後一時半から、甲府市飯田一丁目の県JA会館で開かれる。
地球温暖化や廃棄物問題など地球環境への影響が大きいエネルギー問題。日本の電気の約三分の一を占める原子力発電では、高レベル放射性廃棄物の処理が大きな問題になっている。フォーラムは「電気のごみ」ともいえる発電の副産物に焦点を当て、その処理について利用者とともに考える。
ジャーナリストの吉村秀実さんとキャスターでエッセイストの福島敦子さんが「エネルギーとリサイクル社会」をテーマに基調対談。続いて、原子力発電環境整備機構が高レベル放射性廃棄物の概況を説明する。パネルディスカッションでは、吉村さんや地圏空間研究所代表の小島圭二さん、山梨大大学院教授の鈴木嘉彦さん、消費生活アドバイザーの山崎珠須美さんらがパネリストを務める。
参加定員は二百人。参加費無料。希望者は郵便番号、住所、氏名、年齢、職業、電話番号、託児希望の有無(子どもの年齢も)を記入し、はがき、ファクス、インターネットで二十四日までに申し込む。問い合わせは、原子力発電環境整備機構広報グループ、電話03・4513・1111。
▽郵送先 〒105−8790 東京都港区東新橋一ノ二ノ一五、新橋UREビル七階「フォーラム・電気のごみについて考えてみませんか」事務局▽ファクス 055・231・3107▽インターネット(http://www.numo.or.jp/forum/)
東通原発補償電力側上積み応じず
東通原発計画の出力増大問題で、東京・東北両電力は十五日、東通村の白糠地区漁民研修施設で白糠・小田野沢両漁協と追加漁業補償交渉をした。電力側の提示額四十八億円について両漁協は額が低すぎるとしていたが、電力側は上積み要求に応じず、議論は平行線をたどった。
交渉は非公開だった。双方の説明によると、電力側は交渉の席で四十八億円の算定根拠などを漁協側にあらためて説明し、理解を求めた。
これに対し漁協組合員からは、漁場の価値や原発計画へのこれまでの協力などを理由に、納得できないとする声が相次いだ。このため両漁協幹部が今後、電力側と交渉を継続していくことにした。
交渉終了後、白糠漁協の坂本勝人組合長は「電力側が四十八億円は最終提案だというのなら、時間を浪費するだけで交渉が進展することはないだろう」と話し、あくまでも上積みを求めていく姿勢を示した。
[留保の行方]川内原発環境調査/1 地固め 九電、住民の理解に意欲 /鹿児島
◇見学や勉強会で安全アピール
川内原発(川内市)3号機増設に向けた、九州電力の環境調査の申し入れに対し、須賀龍郎知事が昨年4月に回答を「留保」してから1年2カ月。須賀知事は「回答は時期尚早」との姿勢を崩さないが、知事が挙げた5つの「宿題」への九電や国の回答は出そろいつつあり、今後に注目が集まる。原発を電源の中核に据える国策に、立地県がどう結論を出すのか。「留保の行方」を探った。【藤野智成】
川内原発のある同市久見崎町。5月24日、九電川内駐在事務所の福山謙司課長は、自治会長に当たる「滄浪校区公連会長」の内山輝男さん(76)方の居間にいた。訪問は昨夏以来、4、5回目。資料を広げ、電力需要の推移を説明すると、内山さんは「かみ砕いてもらうとよく分かる。原発は必要と思います」と応じ、こう続けた。
「コンピューター時代の今、安定した電源が必要でしょ」「それに(発電過程で)二酸化炭素を出さない原子力は、温暖化対策に有効だし」「これまでの2基は18年間、無事故だった。危険と思わない」
九電の説明を、すらすらとそらんじる自治会長は内山さんだけではない。
◇ ◇
一昨年秋、知事から調査の賛否を問われた関係9市町村の回答は、川内市が賛成。周辺8市町村が賛成3▽反対3▽保留2(当時)。知事は留保の理由の一つとして「自治体などに賛否両論ある」ことを挙げた。
直ちに対応した九電は昨年8月、同市神田町に川内駐在事務所を開設。地元への広報・説明活動を、福岡市の本店からの出張型から、所員13人が詰める常駐型にシフトした。所員は連日、「オピニオンリーダー」と位置づける9市町村の自治会長約760人を中心に、漁協、議員らを訪問。現在はおおむね3巡目に入っている。
事務所が安全性などを説明した上、誘うのが原発の見学会や勉強会だ。佐賀・玄海原発(1泊2日)▽川内原発(日帰り)への見学会の参加者は、3月末までに800人を数えた。費用はバス、昼食代は九電、宿代は参加者が持つ。地区の研修旅行などの情報が入ると、「見学会」を提案する。
福山課長は「繰り返し顔を出す姿勢は、住民から評価されている。見学会では安全性を効率的に説明できる。理解は進んでいる」と言い切る。
◇ ◇
しかし、効果を疑問視する声もある。
増設に反対する周辺漁協も説明会を受け入れたが、阿久根市漁協の砂畑奉作・組合長は「あくまで反対が前提。説明会に出たから『前向きになった』と取られては困る」。串木野市の市民グループ「川内原発の安全を考える市民の会」の藤田房二代表も「見学会での九電側の説明は『安全』の繰り返し。うのみにするのは危険」と警告する。
「川内市内の公連会長は大概、九電の説明を理解しているのでは」と話す公連会長(70)でさえ「住民全体に理解は広がっていない」という見方だ。
川野直秋事務所長は「活動で実施への機運を高め、首長の同意につなげたい」と意欲を見せるが、「回答」前に再び各首長の意向を聞くかどうか、知事は明言していない。
◇5つの「宿題」
川内市議会が00年6月、3号機増設に向けた環境影響調査の早期実施を求める陳情を採択したことなどを受け、九電は同9月、県と川内市に環境調査(環境影響調査、地質調査、気象調査)を申し入れた。川内市は01年1月、調査に同意したが、須賀知事は同4月、回答を「留保」した。列挙された課題は、(1)関係市町村や水産団体に賛否両論がある(2)九電は原発の増設の一方で、火力発電の休停止を検討している(3)九電が九州外の電力の融通を続ける計画がある(4)九電は販売電力量の伸び率を下方修正していて、九州全体の電力需要の推移を注視する必要がある(5)電源関係交付金の弾力的運用を求める県などの要請に対し、国の対応が不明確――の5項目だった。(毎日新聞)
[2002年リポートNOW]市町村合併 県が後押し、動き加速 /佐賀
◇検討組織に48自治体参加
05年3月の合併特例法期限切れをにらみ、県内の市町村の動きが加速して来た。多久市を除く48市町村が何らかの検討組織に参加。県の重点支援地域は全体の約7割、34市町村に及ぶ。唐津市・東松浦郡など4地区(27市町村)の6月議会には法定合併協議会設置議案が諮られ、14日には七山村議会がトップを切って可決した。遅くとも28日までには各議会の判断が出そろう。【平山千里】
■佐賀は“優等生”
総務省のまとめでは、全国3218市町村のうち法定・任意合併協議会を構成するのは、4月1日現在で20・8%の668市町村。研究会など何らかの検討組織には69・2%、2226市町村が参加する。
県内ではちょうどこの日、小城郡と神埼郡で任意協議会が発足。任意協の参加市町村は40・8%の20市町村、検討組織参加は80・0%の39市町村と、いずれも全国平均を上回る数字。
「合併は時代の流れ」「メリット、デメリットの議論より、デメリットをメリットに変える議論を」――。全国と比べ取り組みが進んでいるのは、井本勇知事の発言に象徴される県の積極姿勢の表れと言える。
その後も、4月に佐賀市・佐賀郡の合併研究会がスタート。枠組みが流動的だった県西部地区でも5月、鹿島市と藤津郡の1市3町の研究会が武雄市、山内町を含めた2市4町の研究会に発展。6月に入り、鳥栖市・三養基郡と小城郡の研究会が相次いで任意協に移行した。現在、任意協は5地区、研究会は3地区に組織されている。
■法定協への取り組み
6月議会で法定協設置を目指すのは、唐津市・東松浦郡▽佐賀市郡▽小城郡▽杵島郡東部――の4地区。
県内で最初に合併論議が本格化した唐津市・東松浦郡は、99年11月に任意協が発足。00年3月議会で法定協設置を目指したが、玄海町議会の否決で振り出しに。玄海原発を抱える同町は、原発立地に伴う交付金などで財政が豊か。これまでに積み立てた基金約150億円を背景に「町内のインフラ整備を優先すべき」との姿勢が否決につながった。その後再開した任意協で、基金の「相応の額」を同町の振興にあてる方向が出されており、判断が注目される。
佐賀市郡も仕切り直し。当初は佐賀市と佐賀郡南部4町の枠組みで、昨年12月議会に法定協設置議案を提案したが、久保田町議会が否決。4月に改めて、同郡北部2町を加えた研究会が発足し、5月に法定協規約案の確認にこぎ着けた。
小城郡は昨年3月に研究会を設置し、今年4月、事実上の任意協となる「合併協議準備会」に移行した。牛津町役場内の事務局には、各町から派遣された職員が詰める。杵島郡東部も4月の任意協設置と同時に県の重点支援地域指定を受け、白石町内に同様の事務局を構えている。
■注目の6月議会
採決は、唐津市・東松浦地区では、12日の厳木町議会の委員会可決を皮切りに、14日には七山村が本会議で可決済み。最後は28日の北波多村議会。佐賀市郡は、21日=川副町など5町議会、26日=大和町議会、28日=佐賀市議会。小城郡は18日、杵島郡郡東部は26日に一斉議決の予定。
唐津市・東松浦郡や佐賀市郡の前例のように、関係自治体のうち1カ所でも否決すれば法定協設置は「白紙」だ。一部地域では議論の背後に、政争絡みの思惑も見え隠れする。さて、結果は?(毎日新聞)
浜岡原発水漏れ事故 中電の工事計画、保安院が認可 /静岡
昨年11月の浜岡原発1号機・原子炉圧力容器底部からの水漏れ事故で、中部電力が提出していた工事計画が14日、経産省原子力安全・保安院により認可された。これを受け、中電は同日、工事をはじめた。
工事計画によると炉水漏れを起こした個所の制御棒駆動機構のさや管と溶接に用いるスタブチューブ(管台)を交換する。いずれも耐食性に優れた素材を使い、応力腐食割れを防ぐために機械で自動溶接する。2、3カ月を要すると見られる。(毎日新聞)
高浜原発のMOX燃料返還 容器陸揚げ プルサマール巡る動き活発化 /福井
関西電力高浜原発4号機用のウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料の検査データねつ造が発覚して2年半。14日に英国から同原発に到着した核燃料輸送船は、国内でプルサーマルへの不信を決定的なものにしたMOX燃料を積み込み、来月上旬ごろ英国に向けて出航する。ねつ造問題に区切りをつけたい関電、プルサーマル始動を警戒する反原発グループ。プルサーマルを巡る動きが再び活発化した。 【久田宏、日野行介】
■発電所内
99年10月にMOX燃料を英国から同原発に運んだ核燃料輸送船「パシフィック・ピンテール号」が午前8時50分、同じMOX燃料を英国に返還するため高浜原発の専用岸壁に着岸した。ピ号から、2基の輸送容器(長さ約6・4メートル)が陸揚げされ、専用車両で4号機の燃料取り扱い建屋に運ばれ、午後3時55分に搬入が終了した。
「空の容器」を運んできたものの、同原発敷地内は通常よりも厳重な警備が敷かれ、多くの警備員が目を光らせて物々しい雰囲気に包まれた。
輸送容器の到着を受け、藤谷堯所長は「プルサーマルを推進するにあたり、MOX燃料の返送を第一に考えてきた。輸送容器が到着し、返送へ一歩着実に進んだと認識している」と話した。
■これからの作業
燃料取り扱い建屋内に運ばれた輸送容器のうち1基には、使用済み核燃料用貯蔵プール内に保管されている8体のMOX燃料集合体が、専用に改造したクレーンで来週にも装荷される。MOX燃料集合体は、通常のウラン燃料集合体と同じ大きさで、長さ約4メートル、断面が約20センチ四方の柱。保管されている8体にはプルトニウムが255キロ使われている。
■抗議行動
ピ号の入港に合わせて、環境保護団体「グリーンピース」や「高浜町住民投票条例を実現する会」など地元の反原発団体が、同原発の北側にある音海漁港の岸壁などで抗議行動をした。
抗議行動に参加した約15人は、「STOP MOX」「守れ非核三原則」などと書かれた横断幕を手に、岸壁の目前を通過するピ号に向かって「プルサーマル反対」などとシュプレヒコールを上げた。
参加者らはその後、プルサーマルからの撤退などを求める抗議文書を提出するため同原発北門前に移動した。対応した関電社員が「話を聞く気はさらさらない」と述べて、門を閉じて外に出てこなかったことから、口論になる一幕もあった。(毎日新聞)
原子力委が佐藤知事に書簡−−プルサーマル問題で会談求め /福島
佐藤栄佐久知事がプルサーマル計画を批判し、県として凍結する可能性を示唆している問題で、国の原子力委員会の藤家洋一委員長が知事に会談を求める書簡を送付していたことが14日、分かった。これに対し、知事側は会談には否定的で、早急に実現する可能性は低いとみられる。
佐藤知事は3日、原発が立地する双葉郡内6町村長らが国策に沿ったプルサーマル計画の推進を要望したのに対し「なぜ実施してほしいのか分からない」「福島県では凍結するというのも一つの手」などと述べ、以後も否定的な発言を繰り返している。
これに対し、原子力委員会は13日、「報道を通じ、さまざまな疑問を提起されているよう承知しているが、直接意見交換の場を持ちたい」とする知事あての書簡(12日付)を、県東京事務所を通じて手渡した。知事の意見を聞くとともに同委の考えを説明する機会を得たいとしている。(毎日新聞)
2004年度までに、2万人の雇用を創出−−県が数値目標示す /青森
県は14日、国の緊急地域雇用創出特別基金などを利用して、04年度までに約2万人を雇用するとの目標を打ち出した。「県雇用安定創出対策本部」(本部長、木村守男知事)の5回目の会議で明らかにした。
基金を利用した事業で8000人の雇用を創出するほか、中小企業への低利資金提供で870人▽県や市町村のワークシェアリングで510人▽むつ小川原地域に液晶産業の集積などを目指すクリスタルバレイ構想や冬の農業などの新産業創出で480人▽企業誘致促進や商店街活性化など、地域産業を振興させることで1445人――などの数値目標を掲げた。
年度別では今年度6640人▽03年度6960人▽04年度7085人――の計2万685人。【亀井宏昭】(毎日新聞)
青森・六ケ所村住民の15年間を紹介 島田恵さんが16日から写真展−−中区 /広島
核燃料サイクル基地の建設をめぐる青森県六ケ所村の人々の姿を15年間にわたって撮り続けている写真家、島田恵さんの写真展「六ケ所村・核の遺産と人々」が、18日から中区加古町のアステールプラザなど県内3カ所で開催される。
同村には使用済み核燃料をリサイクルするためのウラン濃縮工場、低レベル放射性廃棄物埋設施設、再処理工場などが集中。リサイクルの過程では、放射能が大気中などに放出され、また高濃度の放射能を含んだ「高レベル放射性廃棄物」が出るなどの問題点が指摘されている。
この問題を追う島田さんは90年に同村に移住。展示する写真には、核燃反対運動に身を投じる漁業者や農家の女性たちの力強い姿が写し出されている。
写真展は、18〜23日、同プラザ(入場料500円)▽22〜23日、尾道市東御所町のしまなみ交流館1階ギャラリー(協力カンパ500円)▽19〜23日、甲田町高田原のショッピングセンター、パルパ(入場無料)で行われる。また22日午後2時から、同プラザで島田さんを迎え、スライドトークが行われる。参加費800円。問い合わせは島田恵写真展実行委員会の西塔文子さん(082・888・4541)へ。 【小山内恵美子】(毎日新聞)
浜岡原発の「事故通報体制」、不信感が見直し迫る /静岡
中部電力と県・周辺5町の間で浜岡原発の事故・故障情報の通報体制が見直された。背景には、通報の遅れだけにとどまらない地元や県の不信感がある。相次ぐ事故は、従来の県・5町との安全協定上、通報義務がない水漏れ事故などについて、中電側に見直しを迫った形だ。
見直しの発端は、昨年11月の1号機原子炉圧力容器からの水漏れ事故で、地元・浜岡町への連絡(協定外のもの)が発見時から約8時間後と「遅れ」が指摘されたため。これまでは、水漏れ事故などは、協定上「その他の軽微な故障」の部類に含まれ、事実上、中電の判断で連絡する必要がない範ちゅうに該当して、大幅な遅れがでていた。
見直し作業は昨年11月の事故以来、計6回開催された。事故時の情報収集などを目的とした県と周辺5町からなる「関係町連絡会」に中電がオブザーバーとして呼ばれる形で進められており、事実上、周辺5町と県主導の作業だったといえる。
県幹部は「県と周辺5町が早く正確に情報を中電からもらうために、今回の見直しを考えた」と県主導だったことを認めた。
また、13日には、県や周辺自治体などで浜岡原発の安全性を話し合う県原子力発電所環境安全協議会(会長・石川嘉延知事)の定例会が静岡市内で開かれ、石川知事が「情報公開により、原発への理解や安全確保が進むという原則を徹底していく」と厳しい姿勢を見せた。【北川仁士】(毎日新聞)
敦賀原発増設に栗田幸雄知事が同意書 北陸新幹線推進など地域振興が条件 /福井
日本原子力発電(原電)の敦賀原発3、4号機増設計画に同意する栗田幸雄知事の意見書が13日、資源エネルギー庁に提出され、地球温暖化防止などを目的として原発を増やしたい国にとって、新たに2基の着手にめどがたった。しかし、近畿自動車道敦賀線や北陸新幹線などの推進という条件を受け入れたことになる。
国は7月にも、総合資源エネルギー調査会電源開発分科会の審議を経て電源開発基本計画への組み入れを決定。原電は、県と敦賀市の事前了解を得た後、国に原子炉設置変更許可を申請し、安全審査が始まる。
原電の鷲見禎彦社長は、知事意見の提出に当たり「安全確保を最優先に信頼される発電所作りに最善を尽くし、県民の一層の理解が得られ、地域の発展に役立てるよう努力していく」とのコメントを出した。
一方、共産党県議団は、増設同意への抗議文を県に提出した。 【八重樫裕一】(毎日新聞)
浜岡原発1号機の改修工事開始=圧力容器の漏水事故で−中部電力
静岡県浜岡町の中部電力浜岡原子力発電所1号機の原子炉圧力容器からの水漏れ事故で、同社は14日、経済産業省の工事認可を受け、水漏れの見つかった制御棒駆動機構ハウジング(さや管)の改修工事を開始したと発表した。工事には2、3カ月かかる見通し。 (時事通信)
唐松地区の合併論議 玄海町が条件提示へ 将来分も一定額を地元に
【佐賀】 玄海町の寺田司町長は十三日、唐松地区十市町村の合併問題をめぐり、合併に参加する場合、原発立地自治体として同町が国から交付を受けている「原子力発電施設立地地域長期発展対策交付金」に関して、合併後もその一定額を同町の振興に充てるよう、他市町村に求めていく意向を明らかにした。
唐松任意合併協では、既に同町の基金約百五十億円のうち「相応の額」を同町の振興に限定した「特定目的基金」とすることで申し合わせているが、将来にわたる交付金に関する条件を同町が提示するのは初めて。他市町村の対応が注目される。
同長期発展対策交付金は、原発立地自治体の振興のため国が交付する。同町は、一九九七年度から毎年度、約五億円ずつの交付を受けている。寺田町長は「交付金も、一定額を同町の振興に充てることを、唐松合併参加の『最低条件』としたい。法定協のテーブルでしっかりと議論していきたい」と話した。
唐松合併をめぐっては、原発立地自治体として交付金や税金の収入が多く、際立って財政が豊かな一方、社会基盤整備が遅れた面がある玄海町と、他の九市町村との財政調整が課題とされる。
一昨年春には、住民発議による法定協議会の設置議案が同町議会の否決で見送られたが、十市町村の首長と議長で任意協議を継続。今年一月、同町の基金の扱いで意見がまとまり、法定協議会の設置議案を各首長が六月議会に提案することを申し合わせた。今のところ同議案は全議会で可決される見通し。(西日本新聞)
島根原発1号機に温度計設置し監視 配管の水素蓄積防止に /島根
中国電力島根原子力発電所(鹿島町片句)は12日、1号機の配管で、浜岡原発(静岡県浜岡町)の配管破断事故の原因となった水素が蓄積する可能性があったことから、温度を監視してガスを除去する再発防止策を国に報告した。
中電によると、発電に使用するタービングランド蒸気発生器入り口配管で構造上、14カ月の運転で9・2メートルの配管中約4・5メートル(約80グラム)水素ガスがたまる可能性があることが分かった。浜岡原発は配管内の水素が何らかの要因で着火して破断したとされているが、着火のメカニズムは完全に特定されていない。
島根原発は「定期的にガスは除去されており、急速な燃焼は考えられない」としながらも、確実を期するため、配管の6カ所に温度計を設置。温度が10度程度下がった時に、たまっている可能性があるとして、ガス除去操作を行う。温度計は現在、実施中の定期検査で取り付ける。
柏崎刈羽原発3号機定期検査は8月上旬から
東京電力・柏崎刈羽原発の武黒一郎所長は13日、定例記者会見で、プルサーマル計画の実施を予定している3号機の定期検査を、8月上旬から始めるとの見通しを明らかにした。
3号機は昨年の定検時に計画の実施を予定したが、刈羽刈羽村のプルサーマル住民投票結果を受け、実施を先送りし、今年の実施の可否が注目されている。
[新潟日報 06月13日(木)]
( 2002-06-13-19:42 )
<原発>浜岡原発の再発防止策の結果を発表 原子力安全・保安院
経済産業省の原子力安全・保安院は13日、水素爆発による配管破断事故を起こした中部電力浜岡原発1号機と同じ沸騰水型軽水炉29基を運転する電力6社から報告のあった再発防止策の結果を発表した。各電力はそれぞれの原発で次回の定期点検までに、ガス抜きの管を取り付けるなどの対策を取る。(毎日新聞)
横須賀の立教大原子力研究所、45年の研究に終止符−−原子炉を停止 /神奈川
◇研究者の高齢化、後継者難
“チェレンコフの光”が消えた。立教大原子力研究所(鈴木正男所長、横須賀市長坂)は、原子炉を停止し、45年間の研究に事実上の終止符を打った。その背景には、研究者の「高齢化」と「後継者難」があった。
「チェレンコフの光」。研究所2階の所長室にカラー写真が飾られている。青白い、神秘的な輝きを放つのは、原子炉から光より速く飛び出す電子の光だ。発見者である旧ソ連のノーベル物理学賞受賞学者の名前を取り、そう呼ばれている。
研究所は1957年に発足した。米国聖公会から「平和利用に使って」と原子炉を寄贈された。61年12月、初の臨界に到達。発電用原子炉とは異なり、熱は利用せず、中性子を物理・化学・医学などの分野で幅広く研究、応用してきた。
ところが、昨年12月15日、原子炉を停止した。上部からチェレンコフの光を見れる構造だったが、シンボルの光も消えた。
「研究者が高齢化し、減少したのが主な理由。内外で原発事故が多発したせいか、原子力の勉強が学生に人気がなくなり、若手の研究者が少なくなったのも一因」と川口公夫管理室長(61)は説明する。
最盛期は40人を超えたスタッフも今は17人に。核燃料棒があるため、現在でも原子力保安検査官の定期査察を受けている。県下では、同種の原子炉が武蔵工大原子力研究所(川崎市)にもあるが、89年以降停止中という。
川口室長は「核燃料棒と原子炉を将来、米国に返還することになろう」と話している。【網谷利一郎】(毎日新聞)
<原発>柏崎刈羽原発7号機 原子炉内から針金状の金属を回収
新潟県の柏崎刈羽原発7号機(改良型沸騰水型、135万6000キロワット)で定期検査中に、再循環ポンプの羽根に傷が見付かった問題で、東京電力は13日、原子炉内から針金状の金属4本を回収したと発表した。傷はこの針金が羽根にあたって出来た可能性が高いとしている。(毎日新聞)
欧州7カ国の実情を報告−−県エネルギー政策検討会 /福島
県のエネルギー政策検討会(会長・佐藤栄佐久知事)の第17回会合がこのほど開かれ、4、5月に2回に分けてヨーロッパ7カ国のエネルギー政策を調査した職員が、各国の実情を報告した。
調査は2班に分かれて実施。ドイツ、フランス、ベルギー、スイスを調査した第1班は、原子力発電の全廃を決めているドイツ、ベルギーについて「この決定は当分は覆らないという見方が強い」と報告。一方、温暖化対策に原子力を位置付けているフランスの現状も説明した。
第2班は、デンマーク、スウェーデン、フィンランドを調査。原発を導入していないデンマーク、原発12基を持ち現状維持のスウェーデン、4基から5基へと原発を増設し、使用済み核燃料の最終処分予定地も決定しているフィンランドと、原発への対応が分かれている北欧3カ国の実情を報告した。
報告を踏まえ、佐藤知事は「欧州の動向についてさらに研究を深め、エネルギー政策はいかにあるべきか検討していきたい」と述べた。【米村耕一】(毎日新聞)
核燃料税増税問題 副知事と会談、激変緩和を評価−−自民党会派 /福島
核燃料税の増税問題で、川手晃副知事が12日、自民党議員会の加藤貞夫幹事長ら同会派幹部と会談した。副知事が激変緩和措置を導入し、条例案の最終調整を進める方針を示したのに対し、加藤氏らは評価する姿勢を示した。県議会の過半数を占める同会派は、17日に核燃料税の条例案への対応を決めるが、同会派が要望した激変緩和措置が導入されることから賛成する見通しで、同条例案は6月議会での可決成立がほぼ確実となった。
激変緩和措置は、県が核燃料税を現行税率7%から実効税率16・5%まで増税するのに際し、年度ごとに段階的に増税するなどの方法を最終調整している。副知事との会談で加藤氏らは、県が引き続き納税者である東京電力の理解を得るよう努力することを条件に、基本的に県の方針を受け入れる姿勢を示した。
同会派は先月31日、東電が増税に強く反発していることを踏まえ、佐藤栄佐久知事に激変緩和措置の検討を要請し、条例案への賛否を明確にしていなかった。佐藤知事は11日、同措置の導入理由を「議会から要望があったため」と説明し、納税者への配慮ではなく議会対策の側面を強調していた。【神崎真一】(毎日新聞)
<高浜原発>MOX燃料の輸送船到着 7月上旬、英に出港
検査データがねつ造されたウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を、関西電力高浜原発から製造元の英核燃料会社に運ぶ核燃料輸送船「パシフィック・ピンテール号」が14日午前8時50分ごろ、同原発の岸壁に到着した。未使用のMOX燃料8体を積み込み、来月上旬ごろ出港。日英両政府が返還に合意していた。(毎日新聞)
<MOX輸送船>高浜原発に到着 データねつ造の燃料返還へ
検査データがねつ造されたウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を、関西電力高浜原発(福井県高浜町)から製造元の英核燃料会社(BNFL)に運ぶ核燃料輸送船「パシフィック・ピンテール号」(5271トン)が14日午前8時50分、同原発の岸壁に到着した。使用せず保管されていたMOX燃料8体を積み込み、来月上旬ごろ出港する。日英両政府が返還に合意していた。
関電は、MOX燃料を一般の原発(軽水炉)で燃やすプルサーマルを高浜原発で計画。99年10月、4号機用にMOX燃料を搬入した後、BNFLによる検査データねつ造が発覚した。関電は、ねつ造で延期を余儀なくされていた計画を、今回の返還を受けて改めて進める方針。 【久田宏、日野行介】(毎日新聞)
MOX燃料2次製造工程に疑問点
東京電力が、柏崎刈羽原発のプルサーマル計画用に使うため、3月に発注したプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料の第2次分の製造工程などに疑問のあることが、12日の柏崎市議会一般質問で指摘された。西川正純市長は、指摘を否定したが、今年8月に予定される同原発のプルサーマル計画実施を判断する微妙な時期に入っているとし、「市民に不安を与えないため、指摘のあった点を詳しく調査したい」と述べた。
疑惑を指摘した高橋新一議員(社会クラブ)によると、東電発注の第2次燃料は、フランスのコジェマ社メロックス工場で製造されている。工場の同じ生産ラインでは関西電力が製造を中止したMOX燃料が造られている。また東電発注分が、同社では初めての沸騰水型原子炉(BWR)用燃料の製造になるにもかかわらず、製造確認試験が十分に行われないなど疑問があると指摘した。
[新潟日報 06月12日(水)]
( 2002-06-12-17:38 )
関西電力プルサーマル計画 今井理一・高浜町長「問題ない」 /福井
関西電力高浜原発でのプルサーマル計画について、高浜町の今井理一町長は11日の町議会で「海外での実績もあり、問題はない」と従来の考えを示したうえで「新しい計画が示されれば、議会や住民の意思を判断したい」と答弁した。
検査データにねつ造があった同原発用のウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料が近く製造元の英核燃料会社に返還されることになっており、関電は「返還が実現した後に地元の理解を得たうえで、プルサーマルを実施したい」との方針を示している。ただ、関電は現在使用できるMOX燃料を持っておらず、発注から完成まで約3年が必要となる。
「プルサーマルで高浜町にはメリットがあるのか」との議員の質問には、今井町長は「直接的なメリットがあるかよりも(国からの補助などを)全体的な形でとらえていきたい」と述べるにとどめた。また今井町長は答弁で、MOX燃料返還は7月上旬に開始できると関電から町に連絡があったことを明らかにした。
【久田宏】(毎日新聞)
プルサーマル計画 知事の発言受け「厳しい」−−服部東電第一原発所長 /福島
◇今年の実施に黄色信号
東京電力福島第一原発3号機で計画されているプルサーマル計画について、服部拓也・第一原発所長は10日、記者団との懇談で「知事発言をみると(今年の実施は)非常に厳しいと理解している」と述べた。3号機は同計画実施のタイミングである定期検査を来月中旬に開始する予定だが、2年連続で見送られる可能性も出てきた。
佐藤栄佐久知事が3日、双葉郡内8町村の首長らとの会談で、同計画「凍結」を打ち出す可能性を示唆したのを受け、服部所長がコメントした。
知事は同計画について(1)高速増殖炉「もんじゅ」がないままの計画実施はプルトニウムがたまり続ける(2)使用済み燃料の再処理はコスト高――などと批判している。これに対し、服部所長は「利用目的のないプルトニウムは持たないのが国の方針。国内16〜18基の商用原発で消費していけば(計画を実施しても)プルトニウムはたまらない」などと反論。
コスト高批判には、同計画で使用するMOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料の価格が高いことを認めながら、東電の試算を示し「発電原価への影響は1%で、経営努力で吸収可能な範囲だ」と述べた。
さらに「県のエネルギー政策検討会の場で事業者の意見を表明する機会を得たい」と改めて要望した。【神崎真一】(毎日新聞)
[不透明さの中で]ITER国内候補地決定/上 政治決着 /青森
◇プルサーマルに配慮?−−「廃棄物県内処分」も効果
日欧露などで共同開発する国際熱核融合実験炉(ITER)の国内候補地が六ケ所村むつ小川原地域に決まった。茨城県那珂(なか)町とのし烈な誘致合戦の末、最終的には不透明な政治決着を迎えた候補地決定劇。県と同村は海外に舞台を移した誘致活動にも全力を挙げる構えだが、立地が決まれば巨額な建設費用に加え、世界の研究者を受け入れるインフラ(産業基盤)整備も必要になり、県の財政負担増大が懸念される。決定の経緯と今後の課題を検証した。【湯浅聖一】
「森会長は苦渋の気持ちを述べられた」。ITERの国内候補地を決めた先月29日夕の総合科学技術会議(議長・小泉純一郎首相)。会議に先立ち、自民党核融合エネルギー推進議員連盟会長を務める森喜朗前首相に最後の陳情をした茨城県の橋本昌知事は沈痛な表情で記者団に語った。とりまとめを一任されていた森氏の腹は既に六ケ所村で固まっていた。
その後、尾身幸次科学技術担当相らとともに小泉首相と会談した森氏は「議員の意見は大差で六ケ所村だった」と記者団に明かした。六ケ所村の「逆転勝利」が事実上、決まった瞬間だった。
下馬評では、那珂町が有利だった。文部科学省の専門家会議による総合評価では、同町のポイントがわずかに上回った。研究実績などからも優勢とみられたが、議連は1カ所に絞り切れず、2カ所を併記する方向で議論を進めてきた。
大きな転換点となったのは、尾身担当相の5月21日の閣議後の記者会見。「1カ所に絞った方が日本政府としての責任が果たせる」との発言が呼び水となって、議連でも1カ所に絞る意見が大勢を占め、政治決着の流れが作られた。
六ケ所村の最大の切り札は、国策である核燃料サイクル事業への貢献だ。プルサーマル計画が停滞する中、その根幹を担う青森県を刺激したくないという思惑が政府・自民党にあったのは想像に難くない。
県がITER解体時に生じる低レベル放射性廃棄物の県内処分を打ち出した点や、むつ小川原開発に参加する経済界の後押しも議連の支持を県に引きつける力になった。木村守男知事は決定後の会見で「横並びでの総合判断は行政でも当然あること」と煙幕を張ったが、木村知事の政治的駆け引きが功を奏したとの見方が有力だ。
面目を失したのは那珂町に相対的に高い評価を与えていた文科省。決定後に記者会見した同省の担当者は「総合評価はあくまでも専門家の評価で、その結果を踏まえてどう決定するかは別問題」と述べ、政治判断だったことを事実上認めた。時折、言葉を探す担当者の苦しい表情が、今回の決着の分かりにくさを象徴していた。
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◇熱核融合炉
水素の同位体である重水素とトリチウムを2億度の高温プラズマ状態にし、核融合反応で発生するエネルギーを利用する。燃料1グラムに対し石油8トン分のエネルギーを生成。次世代の恒久的なエネルギー源の意味で「地上の太陽」とも呼ばれている。核分裂と違い臨界事故などの暴走はないとされるが、中性子漏れの心配を指摘する声もある。(毎日新聞)
福島第一原発プルサーマル 東電「現状では厳しい」
東京電力の服部拓也・取締役福島第一原子力発電所所長は10日、同原発3号機(福島県大熊町)のプルサーマル実施について、「地元の理解を得て初めて進められるもので、現状での実施は厳しい」と語り、7月中旬に始まる3号機の定期検査に合わせた実施は難しいとの認識を示した。東電が同日、福島市で開いた記者懇談会で発言した。
佐藤栄佐久福島県知事が今月3日、プルサーマル実施について「凍結するのも一つの手だ」と受け入れに否定的な考えを示したことに加え、核燃料税の大幅な税率引き上げを巡って東電と福島県が対立していることも発言の背景にあるとみられる。服部所長は「できるだけ早いタイミングで実施したいとの考えは変わっておらず、理解を求めたい」とも話し、プルサーマル推進の姿勢を強調した。
服部所長はさらに、これまで佐藤知事がプルサーマルについて「高コスト」「余剰プルトニウムがたまる」などと話したことに反論。使用するプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料が通常のウラン燃料より高コストだとしても、「発電原価に占める燃料費の割合が小さい。実績を積み上げれば燃料費も下がってくる」などと説明した。
[河北新報 2002年06月11日](河北新報)
プルサーマル反対訴え講演会 16日、高浜町でグリーンピース・ジャパン /福井
環境保護団体のグリーンピース・ジャパンは7日、関西電力高浜原発に保管されているウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料の英国返還輸送にあたり、プルサーマル反対を訴える講演会を16日に高浜町で開催する、と発表した。
英国の反原発グループスタッフで、返還されるMOX燃料を製造し、データねつ造があった英核燃料会社(BNFL)の再処理などを監視しているマーティン・フォーワードさんが講演。新たなMOX燃料の製造契約ができるのかなど、安全性を中心にB社の問題点を説明する。町文化会館で午後2〜4時。参加費300円。問い合わせは同グリーンピース・ジャパン(03・5338・9800)へ。
また、英国から日本に向かっている専用輸送船の高浜原発への到着については、今月13日以降との見通しを示した。到着後、船の燃料補給や輸送容器にMOX燃料を入れる作業などに10日ほどかかり、24日以降に出航準備が整うと予想。他の反対団体と、現地で抗議行動を予定している。 【八重樫裕一】(毎日新聞)
MOX燃料輸送容器損傷 原因は表面の腐食−−東電調査 /福島
東京電力は7日、英国輸送会社PNTLが所有するウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料輸送容器1基の放熱板の一部がはがれた問題について、原因は輸送容器本体表面の腐食だったとする調査結果をまとめ、国土交通省に報告した。問題となった輸送容器は過去2回のMOX燃料の輸入には使用されていなかったという。
東電は、英国の燃料再処理会社BNFL社からMOXを輸入する際に輸送をP社に委託している。トラブル発生後、国交省の指示を受けてP社などと合同で調査していた。
東電は、P社所有のMOX輸送容器11基の使用権を持っているが、それらにトラブルはないという。腐食が原因と断定されたことで、P社は今後製造する輸送容器を腐食に強いステンレス鋼に変える方針だという。【神崎真一】(毎日新聞)
六ケ所村のMOX計画、進まぬプルサーマルに批判続出−−県会で説明会 /青森
日本原燃が六ケ所村に計画しているウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料加工工場に関する県議会への説明会が5日開かれ、各会派から計7議員が質問した。今後のプルサーマル計画の動向によってはMOX工場の建設は容認できないとする発言が出るなど、進展のないプルサーマルに批判が集中した。
山内和夫議員(自民党)は「国も電気事業連合会も不退転でプルサーマルに取り組むと言ったが、1年たっても進展がない。先の見通しが暗いのにMOX工場を造らせるわけにはいかない。プルサーマルは絶対にやると確約してほしい」と追及。電事連は「指摘の通り、現段階でプルサーマルの受け入れはないが、各電力会社の責任で理解を得るようにしたい」と述べるにとどまった。
自民党県連の田中順造政調会長は「プルサーマルが実施されないと前に進まない。他の会派も同じ考えだと思う。責任ある与党会派として(受け入れの是非を)決めたい」と話し、6月議会終了後にも対応を検討する考えを示した。
プルサーマルは、使用済み核燃料から取り出したプルトニウムをMOX燃料にして一般の原子力発電所(軽水炉)で再利用する計画。国と電力業界が推進しているが、福島県が見直しを検討するなど、受け入れ先の原発立地自治体が難色を示し、厳しい状況にある。MOX燃料を作っても使う原発がなければ、核燃料サイクル事業全体に影響が出る。【湯浅聖一】(毎日新聞)
プルサーマル問題国の責任、強く批判/知事「事の本質考えず」/本紙インタビュー
原子力発電所でのプルサーマルに否定的な見解を示した佐藤知事は4日、福島民報社のインタビューに応じ、平成10年11月のプルサーマルの事前了解の際に付した4条件のうち使用済み燃料対策の長期展望や国民・県民理解など3条件が依然として満たされていないとの認識を示した。その上で、この間の国の対応について「事の本質を本気で考えようとしていない」などと国の責任不在を繰り返し指摘した。
佐藤知事がプルサーマルの事前了解の際に出した条件は(1)MOX燃料の品質管理に万全を期す(2)MOX燃料取り扱い作業での従事者の被ばく低減に努める(3)使用済み燃料対策の長期展望の早期明確化に努める(4)核燃料サイクルについて県民・国民の理解を得るよう努める―の4点。
インタビューの中で知事は11年9月に発覚したMOX燃料のデータ改ざん問題や使用済みMOX燃料の再処理について進展が見られないこと、さらに、昨年5月に新潟県刈羽村で行われたプルサーマル計画に対する住民投票で反対多数となった点などを挙げ、従事者の被ばく低減以外の条件については「まだ、見えないことが多い」「進んでいるとは言えない」などと述べた。
さらに、事前了解後に茨城県のJCOの臨界被ばく事故が発生、静岡県の中部電力浜岡原発や宮城県の東北電力女川原発でも事故が相次いだことに触れ、「(国は原子力行政を)ブラックボックスに入れてしまい、シビリアンコントロールが利かなくなっている。(外務省など)他の省庁の問題と同じだ」と批判。
平成8年に十分な情報公開や国民の意見を反映させることなどを求めて当時の橋本龍太郎首相に対して行った福島、新潟、福井の3県知事提言に触れて「国の体質を変えないと(原子力政策が)ストップすると言ったのに改まらない」とし、プルサーマル計画が進まない責任は国にあることを強調した。
プルサーマルについて、あらためて判断する時期については明言を避けたが、「国がどうすべきかは(提言や事前了解で付した条件で)既に申し入れている」とし、知事が示した条件や要望を国が今後どのように取り扱うかを見極める姿勢をにじませた。
<プルサーマル計画>福島県知事が受け入れ拒否の可能性を示唆
福島県の佐藤栄佐久知事は3日、原子力発電所の使用済み燃料からプルトニウムを抽出・再処理して使用するプルサーマル計画について「福島県では凍結しますよというのも一つの手だ」と述べ、受け入れを拒否する可能性を示唆した。
同県は、昨年2月に福島第一原発3号機での当面の受け入れ拒否を表明。その後「エネルギー政策検討会」(会長・佐藤知事)を設置し、プルサーマル計画を中心にエネルギー政策のあり方を検討しており、今夏にも提言をまとめる予定にしている。
また、佐藤知事は、高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)がナトリウム漏れ火災でストップするなど核燃料サイクルが確立していない現段階での計画の本格実施について「プルトニウムがたまり続ける」などと国を批判した。さらに経済産業省が「ウラン燃料は70年は持つ」と説明していることを根拠に「50年は(再処理しない現在の)ワンス・スルーでやり、その間にエネルギー問題が起きたら(プルサーマル計画を)実施すればいい」と述べた。政府首脳発言を機に非核三原則問題やテロ対策などが問題となっている中で、プルトニウムを生み出す同計画を批判した。
福島第一、第二原発が立地する同県双葉郡の首長らが同日、計画実施を知事に要請したのに対し、語った。 【神崎真一】(毎日新聞)