カナダの 通信保全機構本部 |
マイク・フロスト | 監視カメラ |
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カナダの通信保全機構本部では監視カメラが取材班を捕らえている。駆けつけた警備員によって、身分証明書は控えられ車のナンバーもチェックされた。さらにドイツ南部の米軍バート・アイブリング基地に向かった取材班は、基地目前で警備員によって取材テープが没収された。
元エシュロン・スパイのマイク・フロストは警告する。
「あなたは今、エシュロンの番組を作ろうとしている。もうあなたはNSAに狙われていますよ」
アメリカでの準備を進めているスタッフに異常が起きた。アメリカ取材でのEメールだけがコンピューターから忽然と消えた。マイク・フロストは言う。
「幽霊の世界へよくいらっしゃいました。あなたは私とEメールで話をした。NSAはもうあなたを知っている」
1998年ドイツ、風力発電メーカー「エネルコン」はアメリカ進出を図るが、そこで彼らはアメリカのライバル会社がすでに類似の特許を取得していることを知る。原因はなかなか掴めなかった・・・これが幽霊の世界だ。後の調査で、研究開発部門と製造部門の電話回線がエシュロンに盗聴されていたことが判明する。エネルコンは一般電話回線を外し、専用回線を使用することで対処している。重要なデータは書類として直接手から手へ渡されるようになった。サウジアラビアの旅客商戦でボーイングが、アマゾンの熱帯雨林監視システム商戦ではアメリカのレイセオンが、先行していた欧州のメーカーに競り勝った。
1990年インドネシア、日本のNECが先行していた政府調達の通信機器商戦は、突然白熱した。ブッシュ大統領がアメリカ企業の採用をスハルト大統領に強く求めたのだ。結局アメリカのAT&Tが契約の50%を取得した。
1995年ジュネーブで開かれた日米自動車交渉でも、その年の11月15日付ニューヨーク・タイムズはエシュロンが日本側交渉団を盗聴していたと報じた。
アメリカ自由市民同盟のスティーブン・アフターグッド氏は語る。
「クリントン政権はアメリカの経済権益に非情に大きな関心を抱いています。私がもしアメリカ人でなかったら、エシュロンに大きな不安を持つでしょう」
アメリカ国家保障局NSA、CIAの二倍以上もの規模をもつ世界最大の諜報機関だ。フォートミードの本部には二万人の職員がおり、世界最大の語学者や暗号を解読するための数学者たちが働いている。さらに世界三十ヶ所以上の通信施設で傍受する三万人と、イギリス本部約4000人など、その実態はつかめないまでもおよそ十万人の関係者がいるのではないかとする専門家もいる。映画「エミネー・オブ・アメリカ」ではNSAが絡む事件に主人公が知らぬ間に巻き込まれていく。彼の全ては監視され追跡される。映画には盗聴器、通信用発信機など様々な監視機器が登場する。何処に逃れようとNSAの監視の眼を逃れる術はない。これが映画だけの世界なら私たちが怯えることはなかった。だが・・・
ポケベル監視機 ビーパー・バスター |
追跡ソフト-1 | 追跡ソフト-2 |
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ポケベル・メッセージ監視機「ビーパー・バスター」は、ポケベルを持つ全ての人々を無差別に監視するために作られた。仮に大統領暗殺を計画している者がいると想定すれば、大統領、爆弾、暗殺、殺すなど、キーワードを入力すればたちどころに関連するデータが得られることになる。同時にポケベルの番号が登録され、継続して監視することができる。地球の裏側にいようが監視できる。もはや盗聴器を仕掛ける必要もなく、机の前に座っているだけでいいのだ。そして・・・これがもっと巨大なスーパーコンピューターなら、世界中の盗聴を可能にする巨大なアンテナが作れたなら・・・全てを監視できることになる。
メンウィズ・ヒル基地 | NGO代表 リンディス・パーシー |
ドーム型 パラボラ・アンテナ |
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イギリスのメンウィズ・ヒルには丸い巨大なアンテナが27基が並ぶ、エシュロンの最大基地がある。米軍基地を監視するNGO代表リンディス・パーシーは語る。
「アメリカはここを利用して物事を有利に運ぼうとしている。まったく法律を無視して・・・他人のことなど気にしない、アメリカのことだけ優先している」
NGOは基地が出すゴミの中からNGOの秘密文書を見つけ、分析した結果、基地には二つのシステムがあることが判明した。耳と頭脳だ。耳・・・ドームに覆われたアンテナは宇宙にある通信衛星経由する全ての通信をキャッチする。電話、ファックス、データ通信、全ての電波を無差別に捕らえる。同時にアメリカが打ち上げたスパイ衛星をコントロールし、特定の通信回線を狙う。傍受した通信は頭脳に送られる。基地には十数十台のスーパーコンピューターが設置され、キーワードに従い自動的に選別する。
この日本にもエシュロン基地がある。米軍三沢基地、今年三月秘密解除されたアメリカ公文書によって、この三沢基地がエシュロンに組み込まれていることが判明した。現在17基のドーム型アンテナが新たなターゲットを狙っている。その関連通信施設は約1600ヶ所、沖縄にも通信施設がある。
元カナダ軍中佐マイク・フロスト、彼は1990年までカナダのエシュロン機関、通信保全機構に勤務していた。
「エシュロンは一分間に200万の通信を選別する能力がある。しかもそれは五年も前の話だ。文書は比較的簡単にコンピューター分析できるが、電話の声はデジタル化して声をコンピューターに認識させる。この場合、言葉は重要ではなく、誰が話しているか声紋を元に特定するのに重点が置かれている。単語ではなく声の特徴でエシュロンは判断する。例えばクリントン大統領のモニカという単語を含んでいない会話だけを選別するように設定すれば、コンピューターはその通りに働く。大統領の声は特徴があるから難しい作業ではない。全ての会話は無差別に盗聴され、そして選別される。ある女性が友だちに電話で『昨日は飲みすぎちゃった』とこぼしたんだ。そのとき彼女はこう言った『爆発しちゃったわ』とね・・・コンピューターはその爆発という言葉を捕らえて、その会話を記録した。爆発という言葉を繰り返し使えば、彼女は潜在的なテロリストとして記録されてしまう。彼女のファイルは永久に保存されて、ある日、彼女がパスポートを申請したときファイルが開かれ、突然彼女はパスポートを取れなくなるんだ」
軍歴32年のフロストが、通信保全機構を辞めるきっかけとなったのがマーガレット・サッチャーに関する出来事だった。
「サッチャーが首相だったとき、彼女は閣僚の二人が反対派に回ったと疑った。そこで首相の依頼を受けたイギリス諜報機関は、今度はカナダに二人の大臣の盗聴を依頼した。彼ら、権力者たちはやりたい放題にやっている。しかも一切国民に説明することもない。私の任務は汚された。悲しいんじゃない、怒っているんだ。まさに人権は犯されている。疑問の余地はない。彼らはそれを出来る力を持っているし、それを毎日やっているんだ」
ダイアナ元妃もエシュロンのターゲットにされていた。NSAは実に1500ページに及ぶダイアナ元妃のファイルを持っている。彼女が晩年に熱心に取り組んだ地雷廃絶運動は、アメリカの国策に反していた。マザー・テレサを支援していた慈善団体、法王やダライ・ラマでさえNSAの標的となっていた。政治的な活動をする人物は必ずNSAの監視に引っかかっている。
元カナダ通信保全機構のフレッド・ストック氏は証言する。
「私が目にした機密文書は、冷戦後の新たな敵を規定していました。ドイツを中心としたヨーロッパと日本は敵国なのです。1990年の終わりか、翌年の始め頃から我々は経済情報、つまり企業情報を目にするようになったのです」
エリザベート・ギゴウ 仏法務大臣 |
ジョルジュ・サール 仏国民議会議員 |
ジャンピエール・ミレ NGO法律顧問 |
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1990年春、EU議会にエシュロンに関する詳細な報告書「盗聴能力2000」が提出された。ヨーロッパは騒然となった。フランスでは国会の場でエシュロンが追及された。すでに国政の一大課題になっている。2月23日の議会で法務大臣エリザベート・ギゴウ女史は宣言した。
「エシュロンは経済スパイや競争相手の監視に使われているようだ。よって我々としても特別な警戒を必要とする」
フランス国民議会議員ジョルジュ・サール氏は言う。
「かつてのローマ帝国のように、アメリカ帝国があるのです。世界を支配するひとつの大国の元で、我々は生きているのです」
エシュロンを告発するNGO法律顧問ジャンピエール・ミレ弁護士
「エシュロン関係者を刑事告発するのに被害にあったことを証明する必要はありません。盗聴が行われた疑惑、あるいは企みがあればいいのです」
ドイツ産業界は経済スパイによって失っている被害は7500億円とも1兆円とも言われている。かつて東側スパイを監視していた組織が、今はエシュロン対策のパンフレットを企業に配布している。しかしドイツ政府はエシュロンのための基地の使用を今も許している。産業界に政府への不満がつのる。
経済安全協会会長ウォルフガング・ホフマン氏
「もし誰かがエシュロンの事を知っているとするなら、それはドイツ政府でしかあり得なかったのです。だが、その政府がエシュロンについては意図的に沈黙を守っているのです」
マイケル・ヘイデン NSA長官 |
フォートミート NSA本部 |
偵察衛星 |
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アメリカですらエシュロンは謎のままであり、その追求が始まった。
共和党ボブ・バー下院議員
「エシュロンという巨大な傘のようなプロジェクトを利用して、外国に対する諜報活動という名目で、非合法な米国民への諜報活動が行われていることを憂慮しているのです」
今年4月12日、エシュロンをめぐりアメリカ下院諜報特別委員が開かれた。そこでアメリカは初めてエシュロンの存在を認めた。だが証言に立ったマイケル・ヘイデンNSA長官は「無差別な通信の傍受や処理は国防の為に必要ありません」として無差別盗聴や経済スパイ疑惑を全て否定した。その証言記録を読んだマイク・フロスト氏は怒りをあらわにする。
「我々は防御はするけど攻撃は絶対にしない、なんて言っているが、それでは世界中にあるアンテナは何のためにあるんだ?あれが攻撃でなけりゃ何なんだ?これはあまりにばかげている。吐きたくなる。クズだ!・・・いいかい、経済的にエシュロンの最大の敵は日本なんだよ」
【参考資料=地図エシュロン主要基地】
エシュロン関連サイト
【HackJaponaise2000-Echelon】&【エシュロン資料集@Der Angriff】