捕虜の待遇に関するジュネーヴ条約(第三条約)抜粋
昭和二十八年十月二十一日
条約第二十五号

第五編 捕虜に関する情報局及び救済団体
第百二十二条〔情報局〕 各紛争当事国は、紛争の開始の際及び占領のあらゆる場合に、その権力内にある捕虜に関する公の情報局を設置しなければならない。第四条に掲げる部類の一に属する者を領域内に収容した中立国又は非交戦国は、それらの者に関して同一の措置を執らなければならない。それらの国は、捕虜情報局に対してその能率的な運営のため必要な建物、設備及び職員を提供することを確保しなければならない。それらの国は、この条約中の捕虜の労働に関する部に定める条件に基いて、捕虜情報局で捕虜を使用することができる。
A 各紛争当事国は、その権力内に陥った第四条に掲げる部類の一に属する敵人に関し、本条第四項、第五項及び第六項に掲げる情報をできる限りすみやかに自国の捕虜情報局に提供しなければならない。中立国又は非交戦国は、その領域内に収容した前記の部類に属する者に関し、同様の措置を執らなければならない。
B 捕虜情報局は、利益保護国及び第百二十三条に定める中央捕虜情報局の仲介により、関係国に対してその情報を最もすみやかな方法で直ちに通知しなければならない。
C その情報は、関係のある近親者にすみやかに了知させることを可能にするものでなければならない。第十七条の規定を留保して、その情報は、捕虜情報局にとって入手可能である限り、各捕虜について、氏名、階級、軍の番号、連隊の番号、個人番号又は登録番号、出生地及び生年月日、その属する国、父の名及び母の旧姓、通知を受ける者の氏名及び住所並びに捕虜に対する通信を送付すべきあて名を含むものでなければならない。
D 捕虜情報局は、捕虜の移動、解放、送還、逃走、入院及び死亡に関する情報を各種の機関から得て、その情報を前記の第三項に定める方法で通知しなければならない。
E 同様に、重病又は重傷の捕虜の健康状態に関する情報も、定期的に、可能なときは、毎週、提供しなければならない。
F 捕虜情報局は、また、捕虜(捕虜たる身分にある間に死亡した者を含む。)に関するすべての問合せに答える責任を負う。捕虜情報局は、情報を求められた場合において、その情報を有しないときは、それを入手するために必要な調査を行うものとする。
G 捕虜情報局のすべての通知書は、署名又は押印によって認証しなければならない。
H 捕虜情報局は、更に、送還され、若しくは解放された捕虜又は逃走し、若しくは死亡した捕虜が残したすべての個人的な有価物(抑留国の通貨以外の通貨及び近親者にとって重要な書類を含む。)を取り集めて関係国に送付しなければならない。捕虜情報局は、それらの有価物を封印袋で送付しなければならない。その封印袋には、それらの有価物を所持していた者を識別するための明確且つ完全な明細書及び内容の完全な目録を附さなければならない。前記の捕虜のその他の個人用品は、関係紛争当事国間に締結される取極に従って送付しなければならない。
第百二十三条〔中央捕虜情報局〕 中央捕虜情報局は、中立国に設置する。赤十字国際委員会は、必要と認める場合には、関係国に対し、中央捕虜情報局を組織することを提案しなければならない。
A 中央捕虜情報局の任務は、公的又は私的径路で入手することができる捕虜に関するすべての情報を収集し、及び捕虜の本国又は捕虜が属する国にその情報をできる限りすみやかに伝達することとする。中央捕虜情報局は、この伝達については、紛争当事国からすべての便益を与えられるものとする。
B 締約国、特に、その国民が中央捕虜情報局の役務の利益を享有する国は、中央捕虜情報局に対し、その必要とする財政的援助を提供するように要請されるものとする。
C 前記の規定は、赤十字国際委員会又は第百二十五条に定める救済団体の人道的活動を制限するものと解してはならない。
第百二十四条〔料金の減免〕 各国の捕虜情報局及び中央捕虜情報局は、郵便料金の免除及び第七十四条に定めるすべての免除を受けるものとし、更に、できる限り電報料金の免除又は少くともその著しい減額を受けるものとする。
第百二十五条〔救済団体〕 抑留国は、その安全を保障し、又はその他合理的な必要を満たすために肝要であると認める措置を留保して、宗教団体、救済団体その他捕虜に援助を与える団体の代表者及びその正当な委任を受けた代理人に対し、捕虜の訪問、出所いかんを問わず宗教的、教育的又は娯楽的目的に充てられる救済用の需品及び物資の捕虜に対する分配並びに収容所内における捕虜の余暇の利用の援助に関してすべての必要な便益を与えなければならない。前記の団体は、抑留国の領域内にも、また、その他の国にも設立することができる。また、前記の団体には、国際的性質をもたせることができる。
A 抑留国は、代表が抑留国の領域内で抑留国の監督の下に任務を行うことを許される団体の数を制限することができる。但し、その制限は、すべての捕虜に対する充分な救済の効果的な実施を妨げないものでなければならない。
B この分野における赤十字国際委員会の特別の地位は、常に、認め、且つ、尊重しなければならない。
C 前記の目的に充てられる需品又は物資が捕虜に交付されたときは、直ちに又は交付の後短期間内に、捕虜代表が署名した各送付品の受領証を、その送付品を発送した救済団体その他の団体に送付しなければならない。同時に、捕虜の保護について責任を負う当局は、その送付品の受領証を送付しなければならない。

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