美浜原発・水蒸気噴出事故
2004/08/11現在
配管の減肉「広範囲に」 美浜原発事故で調査委見解
関西電力の美浜原発蒸気噴出事故で、総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)の専門家調査会は11日、事故調査委員会を開き、配管破裂の原因は、腐食が水の流れにより加速され、配管の肉厚が薄くなる「減肉」が広範囲に起こっていたため、という見方で一致した。配管の肉厚は年平均で0.31ミリ進んでいたという計算も報告された。
配管で減肉が進むと穴が生じることが多い。ところが、今回の事故では、配管がバナナの皮がめくれるように延性破壊していた。このことから内部で減肉がかなり広がっていた可能性が高い。
事故が起きた2次系配管の自主点検は、東京電力の原発トラブル隠しによって昨年10月、法に基づく定期事業者検査に強化された。これに伴い、学会などの中立機関による指針類の整備が進められており、調査委員会でも整備のあり方が検討される見込み。
美浜原発事故直後、消防隊員が携帯電話で建屋内部を撮影
関西電力美浜原発で蒸気噴出事故が起きてから約2時間後、11人が死傷したタービン建屋に耐熱服で入った敦賀美方消防組合の須藤慶一・警防課長(56)は「爆発事故の現場のようだ」と感じながら、内部をカメラ付き携帯電話で撮影した。一緒に建屋に入ったのは消防隊員5人と関電の社員4人。取り残された作業員がいないかどうか調べるためだった。
建屋の鉄扉を開けると、安全さくがなぎ倒され、床に5センチほどの深さで水がたまっていた。血痕も所々にあった。
配管が破損した現場の方向に進むと、急に熱気が立ちこめてきた。室内の温度は約70度になっていた。
須藤課長は現場を撮ろうと消防用の手袋を外した。猛烈な熱さを感じ、持っていた携帯電話もみるみる熱くなった。電話は撮影するたびにすぐしまい、計6枚撮った。
約10分後、いったん建屋から出たが、全身汗びっしょり。水分を補給しながら、さらに2度、建屋へ入った。
蒸気は消え、蛍光灯がついていて視界がきく場所もあった。だが、4人が噴出蒸気を浴びた配管の破損現場に近づくと、様子が一変した。
蛍光灯が割れて飛び散り、配管の辺りは真っ暗で何も見えない。関電の社員が懐中電灯で照らしたが、配管がどうなったのかは暗くてよくわからなかった。
死亡した4人をはじめ事故に巻き込まれた作業員たちは14日からの定期検査に向けて建屋内で準備をしていた。そのために組んだ足場や安全さくは、配管破損現場を中心に半径約25メートルの範囲で、すべて外の方向に倒れていた。床にはアルミ片や断熱材が散乱。階段の手すりは熱くて触ることができない。
「蒸気が漏洩(ろうえい)し、3人の負傷者が発生している。負傷者は多数になる可能性がある」。そう聞いて急行した現場の様子は、想定を超えていた。
全原発の配管検査点検、18日までの報告要請 保安院
関西電力美浜原発の蒸気噴出事故を受けて、経済産業省原子力安全・保安院は11日、全国に52基ある全原発を対象に、各電力会社に対して事故原因となった配管の減肉検査体制を総点検し、今月18日までに結果を報告するよう要請した。全国に837基ある火力発電所に対しても同様に要請。関西電力には今週末にも立ち入り検査することを決めた。いずれも電気事業法(報告徴収、立ち入り検査)に基づく措置。
日本の原発は、原子炉の熱で温めた水でタービンを回す沸騰水型(29基)と、その熱を2次系の水に伝えてタービンを回す加圧水型(23基)がある。今回の事故のように、重要部位の検査に漏れがないかを確かめ、検査状況とともに報告するよう求めている。対象は美浜原発と同じ加圧水型が2次系冷却水の配管。沸騰水型は給水系統や主蒸気系統だ。
保安院によると、今回事故を起こした美浜原発のような加圧水型には、同型炉を持つ電力会社が共通でつくった「2次系配管経年変化管理指針」がある。これは旧通産省が90年に専門家会議で妥当性を検討し承認している。しかし、沸騰水型は減肉現象が比較的少ないため各社の独自指針を使っており、実態が把握しにくい。こうした事情もあって今回、一緒に報告を求めることにした。
また、火力発電所についても、自治体や電力会社、企業が持つ自家用と事業用の計837基を対象に同じ要請をした。
事故のタービン建屋は見学コース、4カ月で300人訪問
関西電力美浜原発3号機で蒸気噴出事故があったタービン建屋は、行政関係者らを対象にした見学コースに組み込まれており、今年4月から事故が起きるまでに34回、計約300人が訪れていた。以前は子供会や自治会、教職員ら一般の見学者も立ち入ることができたが、01年9月の米同時多発テロ以降、保安上の理由から取りやめにした。
タービン建屋に入っていたのは地方議員や自治体関係者ら。関電社員が付き添い、3階建ての建屋と棟続きになっている中央制御室をガラス越しに見た後、建屋3階に移動し、タービンや発電機を見学していた。
事故で蒸気が噴出した配管は建屋2階の天井部分にある。3階の床の一部は網目状の鉄板で覆われており、今回の事故では噴き出した蒸気が3階にも立ちこめていた。