【私的めもらんだむ】
▼10時
W-ホームズ、君はもう聞き及んでいるとは思うが・・・
H-まあ待ちなさい。それよりモーニングコーヒーでも飲まないか?
W-ありがとう。
H-ワトソン君、君の云いたいのはムンクの「叫び」、のことだろ?
W-そうなんだよホームズ。時価60億とも80億ともいわれる名画が、いとも容易く盗まれたのだからね・・・ホームズ、これは君の出番だ。
H-いや、私の出る幕はないよ。第一、犯行が乱暴すぎる。おそらくロシアン・マフィアあたりの、それもゴロツキ集団の仕業じゃないかと推測してるんだが・・・データが少ないので臆測にしか過ぎなくなる。ただ、背後に黒幕らしき者が見え隠れしてくるだろうが・・・
W-そういえば盗んだ絵画の額縁を捨てたというから、随分乱暴なことをする。
H-額縁が邪魔だと考えるのは、「叫び」の絵そのものの価値を問題にしているからだ。これは依頼主であるところの、黒幕の指示だろう。おそらく、この絵はもう実行犯の手元には無いよ。
W-えっ? じゃあ、ムンクの絵は何処にあるんです?
H-これは二つのことが推測できる。一つは海外に空輸してしまったか、もう一つは捨ててしまったか・・・もっとも捨てるとすれば依頼主の黒幕だがね。あまりに有名な絵画だけに売りさばくことが出来なくなり、捨ててしまう可能性が大だ。むろん、誰もが目に付くような場所だが、発見されやすいところに捨てることだろう。
海外に出すとすれば、マーケットとしては日本あたりが好都合だ。日本には確か「新じねん」というホームページがあったはずだ。ワトソン君、ちょっとそのホームページにアクセスしてくれないか。
W-あっ!ホームズ、もうムンクの「叫び」盗難のことが書かれてあるぞ。それも何と我々の会話も書かれてある。これは、どうしたことだ?!
H-ワトソン君、そんなことは驚くに値しない。「新じねん」管理人おーる氏と私は前からの友人でね、灰色の脳細胞を分け合った仲なのだよ。
W-それって、ポアロのことじゃ?
H-そう、そのポアロとおーる氏と、私を含めて世界の名探偵トリオと呼ばれているのだ。
W-そんな話、聞いたこともないが・・・はて?
H-それは我々の業界では極秘中の極秘となっておるのだ。いいかねワトソン君、ここでの話は内緒だよ。
W-でもホームズ、もう遅いんじゃないか? こうしておーる氏のホームページで公表されてしまったんだから・・・
H-それは迂闊だった。ところでワトソン君、今日は何の用事かな?
W-ホームズ、大丈夫? それは今話していることじゃないか?!
H-君には黙っていようと思ったのだが・・・実は、私は老人性痴呆症になりかかっておるんじゃ。それで君に頼みがある。私の財産の全ては日本のおーる氏に譲るという遺産相続の手続きをしてほしい。彼は今、日本の不況下で極貧のあまり、その灰色の脳細胞が枯渇しようとしている。彼には分厚いビフテキを食べさせないと、日本の、いや世界の大損失になるのだ!手遅れにならないうちに、ワトソン君、一刻も早くおーる氏を救うのだ・・・ううっ。
W-ああ、ホームズどうしたんだ?!誰か、誰か救急車を呼んでくれ!
つづく
▼15時
H-ワトソン君、我々の生きているこの時代には救急車など無いのだよ。それに君は私の主治医ではないか。私は君に看取られて死ぬなら本望だ。
W-失敬、失敬・・・動転のあまり、私は自分が医師だったことを忘れていた。ホームズ、お願いだから死なないでおくれ。今、薬を処方するからね。
H-無駄なことだ。
W-えっ?そんな・・・まだ諦めるのは早い。
H-ワトソン君、ボクの胸のところをよく見てくれたまえ。
W-あっ・・・血が・・・君は誰かに撃たれたんだね。
H-そう、口径の小さな弾丸が私の心臓を貫いたのだ。こういうことを出来るのは世界にただ一人しかいない。
W-許せん!それは誰なんだね?ホームズ。
H-・・・・・・・・・・・・・
W-ホームズ?・・・ホームズ!・・・ああホームズ、ボクより先に逝ってしまうなんて!!!・・・いったいホームズを撃ったのは誰だというんだ!
P-それは「ゴルゴ13」です。
W-いつの間に?!・・・き、きみは・・・君は誰なんだ?!
P-私はエルキュール・ポアロ、スペルはHercule
Poirot。 驚いているようだね。
W-それはアナタ、驚きもしますよ。いきなり現れるんですからね。滅茶苦茶な筋書きじゃあ〜りませんか。いったいこの作者の頭の中はどうなっているのか、かち割って見てみたいもんです。
P-それこそ無駄というものです。作者は日本の「おーる氏」、彼は私と同じ灰色の脳細胞を持つとか云われてますが、実は割っても頭は空っぽ・・・要するに「バカ、アホ」と日本語で呼ばれる類いの人間なのです。
W-し、しかし・・・ホームズは彼に莫大な遺産を相続させようと・・・
P-お止めなさい。それよりホームズを撃ったところのゴルゴ13を追いかけるのが先です。
つづく(かな?)
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