赤道ギニアの石油利権データ
赤道ギニアに石油利権、サッチャー元英首相長男も逮捕
【ヨハネスブルク=加藤賢治】アフリカ・ギニア湾にある小国、赤道ギニアが、にわかに注目を集めている。海底油田の開発で国際石油資本が進出し、石油利権をめぐる政争が海外に波及。25日には、サッチャー元英首相の長男まで「クーデター関与」容疑で南アフリカ検察特捜部に逮捕される事態になった。
最貧国だった赤道ギニアの運命が一転したのは、1995年。領域内のギニア湾で大規模な海底油田が確認されたのだ。
米系石油資本が相次いで進出し、2002年の国内総生産(GDP)は21億ドルと、1998年の5倍近くに膨張。サハラ砂漠以南のアフリカでは、ナイジェリア、アンゴラに次ぐ石油大国にのし上がった。今や首都マラボには、米テキサス州から定期チャーター便が飛ぶ。
だが経済の急成長は、政治の成熟を伴わなかった。
ヌゲマ大統領(62)は、1979年にクーデターでおじのマシアス大統領の政権を倒して以来、側近を出身部族のエサングイ族で固め、拷問や処刑を多用した恐怖政治を敷く。米系石油資本は、大統領に巨額の献金をしている模様で、今年7月には米議会上院の報告で、ヌゲマ大統領夫妻が米国の銀行口座に約1300万ドル(約14億円)を保有していることが分かった。
ギニア湾情勢に詳しい西側外交筋は、「米系資本の利権を考え、米国はヌゲマ政権の人権侵害には目をつむっている」と指摘する。
反ヌゲマ勢力は国外で活動せざるを得ず、昨年、亡命先の旧宗主国スペインで亡命政権の樹立を宣言した。ヌゲマ大統領は「クーデターへの恐怖心が強烈」(在マラボの西側外交筋)とされ、反政府勢力への憎悪と疑心暗鬼で国内では「クーデター摘発」が相次ぐ。
マーク・サッチャー容疑者(51)の関与が指摘されている今回のクーデター計画は今年3月に発覚した。
ジンバブエ当局が英特殊空挺(くうてい)部隊(SAS)の元隊員サイモン・マン容疑者をクーデター関与容疑で逮捕し、その後赤道ギニア当局が国内に潜んでいたとされる「外国人傭兵(ようへい)」を芋づる式に逮捕。1人は獄中で拷問死が伝えられた。マン容疑者は「軍事顧問」会社を経営し、90年代に傭兵をアンゴラやシエラレオネなどに送り込み、アフリカの紛争で稼いできた人物だ。
南ア検察特捜部によれば、サッチャー容疑者はクーデター計画に約27万5000ドル(約3000万円)を資金供与した。マン容疑者とは、ケープタウンの高級住宅街で近隣に住む間柄で親交があったという。
クーデター騒動の真偽は不明だが、赤道ギニアの「シンデレラ物語」に目をつける勢力が石油利権を狙う可能性は否定できない。英小説家フォーサイスの「戦争の犬たち」現代版のような危うい政情は、ヌゲマ政権の恐怖政治が続く限り、払しょくできそうもない。