石油&ガスDATA2004
0408〜0409

メキシコで大油田発見、世界4位の産油国に…地元紙

 【リオデジャネイロ=本間圭一】30日付のメキシコ有力紙「エルウニベルサル」は、同国のメキシコ国営石油(ペメックス)が、メキシコ湾北部で、計約540億バレルの埋蔵量を持つと見られる油田を発見したと伝えた。

 実際に確認されれば、同国の推定原油埋蔵量は約1020億バレルとなり、世界有数の確認埋蔵量を誇るサウジアラビアやイラクなどに次ぐ規模となる。

 同紙によると、ペメックスは過去3年間の調査で、米国に近いメキシコ湾中央部などの海底7か所で巨大油田を発見したという。

 石油輸出国機構(OPEC)などによると、2003年の確認原油埋蔵量は、サウジが約2630億バレルイランが約1330億バレルイラクが約1150億バレルの順。油田が確認されれば、メキシコの原油埋蔵量はイラクに迫ることになる。

 ただ、最終的な確認には、厳密な調査が必要で、ペメックスは現在、外国資本と共同で掘削を行う方向で検討を進めている。油田の存在が確認されても、生産が本格化するには、さらに数年を要するという。メキシコは中南米有数の産油国で、米国の重要な原油供給国となっている。

 [メキシコ市 30日 ロイター] メキシコ石油公社(PEMEX)は、メキシコ湾海底に大型油田を発見したことを明らかにした。
メキシコの石油埋蔵量が、現在の2倍に上方修正され、サウジアラビアに匹敵する原油生産が可能になる可能性もあるという。
今回発見した大型油田は、メキシコ湾深海を中心に広がっており、掘削には巨額の投資と他社との技術提携が必要。埋蔵量は原油換算で計540億バレルに達し、メキシコの石油埋蔵量が1020億バレルに増加する可能性があるという。
地元日刊紙エル・ユニバーサルによると、同社の探査・生産責任者は、「(今回の発見により)メキシコの石油埋蔵量は、イラク、アラブ首長国連邦、クウェート、イランなどに匹敵する水準となる」と発言。「生産量をサウジアラビア(日量750万バレル)ロシア(740万バレル)の水準に引き上げることも可能になるだろう」と述べた。
現在のメキシコの埋蔵量は、確認埋蔵量、推定埋蔵量、予想埋蔵量を合わせて480億バレル。確認埋蔵量は189億バレル、確認埋蔵量に推定埋蔵量を合わせると349億バレルとなる。7月のメキシコの原油生産量は日量336万3000バレル、輸出量は平均180万6000バレル。
大型油田は、三次元地震探査で見つかったもので、今後、確認作業が必要になる。

●イラク南部の石油輸出、日量170万バレルに回復

 [ドバイ 31日 ロイター] イラクの石油関係当局者によると、パイプラインへの破壊活動で落ち込んでいた南部の石油輸出が日量170万バレルの水準まで回復した。
 同当局者は、ロイター通信に対し、輸出は毎時7万バレルの全開の状態、と述べた。

パイプライン爆破、イラクからの石油輸出ほぼ停止

 【カイロ=柳沢亨之】AP通信は30日、イラク国営「南部石油会社」当局者の話として、同国南部からの石油輸出が29日夜から完全に停止した、と伝えた。バスラ西方にあるメイラ油田の輸出パイプラインが同日、武装勢力に爆破されたためで、輸出再開は少なくとも1週間後になる見込みという。

 南部からの石油輸出は平均日量185万バレルで、同国の輸出量の9割を占めている。

イラク南部の石油パイプライン8本が攻撃受ける
 [バグダッド 26日 ロイター] 石油当局者によると、イラク南部で26日、破壊活動家が南ルメイラ油田とバスラ近郊のポンプステーションをつなぐパイプライン8本を攻撃した。
同当局者は、「予備システムはある。輸出に影響が出たことを示す情報はまだない」と述べた。
ある海運業者は、夜間に攻撃が発生した後、イラク南部の石油輸出がほぼ半分に落ち込んだと述べた。ただ輸出減少は、タンカーの移動に関連している可能性もあるという。

イラク、キルクーク油田からトルコに送油を再開

 [ロンドン 23日 ロイター] 海運筋によると、イラクは、北部のキルクーク油田と地中海に面したトルコのジェイハン港を結ぶパイプラインで送油を再開した。
同筋はロイター通信に対し、「送油は8月20日深夜に再開された」と語った。
同筋によると、送油量は日量45万バレル。イラク戦争前の能力は日量80万バレルだった。
また、ジェイハン港における使用可能なキルクーク原油の備蓄量は、すでに備蓄されていた分も含めて500万バレル近くになるという。

●イラン・アザデガン油田開発の投資計画は変更せず=経済産業相

 [東京 16日 ロイター] 中川経済産業相は15日、日本とイランの企業が2月に調印したアザデガン油田開発契約は見直すのが望ましいとの認識をパウエル米国務長官が示した問題で、日本は予定通り進める考えを示した。民放の報道番組に出演して述べた。
共同通信によると、パウエル国務長官は12日、日本の一部報道機関との会見で「イランが核兵器開発を試みているのは明らかなようだ」と指摘した。そのうえで、「日本政府と産業界が核問題を考慮に入れた上で、エネルギー関連の投資をすべきか判断するよう望む」と述べ、アザデガン油田開発への投資計画を再考するよう求めた。 これに対し、中川経済産業相は、「米国とは同盟国なので、連絡を取り合っているが、われわれとして粛々(しゅくしゅく)と決められたことをやっていく。米国に言われたから(開発協力を)やめるとは言わない」として、対米従属を否定しながら、投資計画を予定通り進める考えを示した。(ロイター)

日本の油田投資 リビア・イラクに転換を 米勧告、イラン核開発懸念

 【ワシントン=樫山幸夫】日本とイランによるアザデガン油田開発契約について、米政府が日本政府に対し、これに代えてリビア、イラクの油田開発に投資してはどうかと非公式に勧告してきたことが十日、明らかになった。イランの核開発問題が近く、国連安全保障理事会に付託される見込みであることを念頭に置いたものとみられ、この問題をめぐる日米間の軋轢(あつれき)が今後、一層強まる可能性がある。
 米国務省筋が十日に明らかにしたところによると、米側のこの意向は、アーミテージ国務副長官と竹内行夫外務次官による一連の戦略対話、ラーソン国務次官(経済担当)と日本側との会談などを通じ伝えられたという。米側はその際、リビアだけでなくイラクの油田開発に投資するのも一法だとも伝えたという。
 米政府としての正式要請ではなく、非公式な勧告、示唆という形式だったというが、国務省筋はアザデガン油田開発契約について、米政府内にはなお不満がくすぶっていることを指摘、今後も同様の勧告を行う可能性があることを強調した。
 日本のアザデガン油田への投資に関しては、国務省筋が先に産経新聞に対し、イラン核問題の安保理付託が決まれば、日本は苦しい立場に追い込まれるだろうとの見通しを示しており、国連での論議が制裁問題にまで及ぶことになれば、日本政府は契約見直しなどの決断を迫られかねない。
 米政府は、リビアが昨年、大量破壊兵器開発断念を決断して以来、石油関連事業への投資復活など制裁を解除、政府間の連絡事務所も開設、関係正常化を進めている。
 最近、リビアによるサウジアラビア皇太子暗殺計画が発覚したことから、完全な関係正常化には慎重な姿勢に転じたものの、投資促進にはなお積極姿勢をみせている。背景には、北朝鮮やイランにリビア同様の核開発の断念を促そうとの意図がある。
 イランの核開発問題では、米国は、イランが最近、ウラン濃縮機器製造を再開したため、懸念を一段と強めており、十一月の国際原子力機関(IAEA)理事会で安保理付託を実現する方向で各国に働きかけている。
 アザデガン油田開発契約は今年二月に日本の国際石油開発と国営イラン石油などとの間で調印された。投資総額二十億ドルのうち75%を日本側が負担、二〇〇八年夏までに日量十五万バレル、二〇一二年初めまでに同二十六万バレルの生産を目指している。(産経新聞)

●【インドネシア】国営石油、エクソンとの契約延長を拒否

国営石油プルタミナのウィドヤ新社長は、米エクソンモービル・オイルが要請している推定埋蔵量2億5,000万バレルの東ジャワ州チェプ油田の契約延長に応じない考えを示した。2010年以降は、プルタミナが独自に操業するほうが利益が上がるとしている。

ウィドヤ社長は国会第8委員会(科学技術・環境担当)の公聴会でエクソンに対し、契約延長の意向がないことを間もなく通知すると述べた。26日地元各紙が伝えた。

同社長は「プルタミナが独自に操業する」と契約終了後の計画を示している。

エクソン側は、正式な連絡を受けていないとしてコメントを控えている。エクソンは同油田に4億5,000万米ドルを投資していると明らかにしているが、商業生産が始まるのは来年とみられている。予想投資総額は12億米ドルとなる。

エクソンは、1999年にチェプ権益を取得し、2001年に「10年に一度の発見」として推定埋蔵量が2億5,000万バレル規模と発表。契約期間の20年延長を要請していた。

その後交渉は難航していたが、ウィドヤ社長の前任アリフィ社長時代には、エクソンとの生産分与比率の折半で合意が近いと見られていた。エクソンは20年の契約延長と開発費の折半出資を求めていた。

エクソンがチェプの権益を取得した当時は技術支援契約だったが、新石油ガス法『2001年第22号法』にのっとり、契約が終了する2010年には特別協業契約(KKS)の形態に変更になる。生産分与比率は政府が60%となり、残る40%の比率などをめぐり交渉が続いていた。

契約の延長は、現行規定では期限の2年前と定められているが、政府が用意している石油ガス上流事業に関する政令では10年前までに改定される見通し。ただ、鉱物資源エネルギー省は、国家官房から政令の見直しを要請されたとしている。

同省は、チェプの推定埋蔵量を5億バレルとみており、インドネシア全体の産出量の10%程度を担うことができるとの見通しを示していた。

ウィドヤ社長は、「プルタミナがインドネシアの埋蔵量に基づきペトロナス(マレーシアの国営石油)と競争することが可能だ」と述べている。

●<天然ガス田>中国が海底パイプラインの敷設工事開始

 【北京・上村幸治】東シナ海の天然ガス田の開発をめぐって日本と中国が対立している問題で、新華社電子版は26日、揚子晩報の報道を引用する形で「中国はガス田と中国大陸を結ぶ海底パイプラインの敷設工事を始めた」と報じた。日本との間で話し合いが続いている中での一方的な工事の開始で、日中間の摩擦がまた拡大する懸念が出てきた。
 同電によると、外国籍を含む作業船7隻と200人以上の作業員、外国人担当者が海域に入る作業を完了したという。建設期間の間に、27隻の作業船・運搬船と800人以上の開発担当者が作業を行う。
 海底パイプラインは約470キロの長大なもので、来年5月には第1期工事を完成させるという。完成すると年間25億立方メートルの天然ガスを浙江省や上海市に向けて送ることになる。
 天然ガス田は「春暁」と呼ばれており、日本が主張する東シナ海の日中中間線から4、5キロ中国側にある。総面積は2万2000平方キロメートル。このガス田は地下で日本側海域ともつながっており、日本の資源までが吸い上げられる懸念がある。
 このため日本政府は、中国側に試掘データを提出するよう求めてきたが、中国側は回答していない。日本政府は今年7月、中国の動きに対抗するため、日本側海域での資源調査を開始していた。

東シナ海の資源探査強化 予算100億円要求 経産・エネ庁

 政府は東シナ海の石油や天然ガスを確保するため、日中中間線付近で実施している海洋資源探査を強化する方針を決めた。探査海域を広げ、外国企業に頼っている探査船を政府が独自に所有することも検討する。将来もエネルギーを安定供給するには自前の資源確保が不可欠と判断した。経済産業省・資源エネルギー庁は平成十七年度予算の概算要求で、探査費用として今年度の三倍にあたる百億円を計上。データ分析などのため新規で五千万円の調査費も要求する。
 政府は今年七月から、日本が排他的経済水域(EEZ)と主張する「日中中間線」沿いに日本側の幅三十キロ、北緯二八度から三〇度までの二百キロ余りの範囲で、海底地質調査を実施している。地震波を使って地質構造を立体的に把握する三次元探査で、豊富に存在するとされる天然ガスなどの探査が目的だ。
 中間線から中国側の海域約四−九キロ付近では、中国が日本政府の抗議を無視する形で、天然ガスの採掘施設の建設を進めており、日本の探査は中国側を牽制(けんせい)する意図もある。
 ただ、今年度の探査予算は、ノルウェーのチャーター船への委託費用の約三十億円を含め三十八億円にすぎない。日中中間線付近の海底で資源がどう分布しているのか、埋蔵量がどの程度あるのかを詳しく把握するには、探査範囲を広げ、より精度の高い調査をすることが必要になる。
 また、中国は海洋資源探査船を十二隻、韓国は四隻を保有しているとされるが、日本は自前の探査船を持っていない。国連海洋法条約では「公船」に対する拿捕(だほ)や臨時検査などが禁じられており、中国は同条約をたてに、政府所属の探査船で日本のEEZ内の海洋調査活動を強行しているのが現状。エネ庁は、政府が独自の探査船を保有した場合の費用や効果を調査したいとしている。

中国、原油確保 世界に“触手” 旺盛な需要、拡大の一途

 【北京=伊藤正】世界的な原油価格高騰の要因の一つとされている中国の旺盛な需要に歯止めがかからない。中国はこの春から投資規制などで石油消費の抑制もにらんだ調整策を強化しているが、肝心のエネルギー資源分野は「聖域」として、世界的規模で原油獲得に手を尽くしている。原油高が各国経済に与える影響が懸念される中、中国のなりふり構わない原油確保は、さらに強まるとみられている。
 中国の石油消費量は昨年、二億六千万トンで、うち35%にあたる九千百万トンは中東などからの輸入に依存した。国内生産の停滞による。国際エネルギー機関(IEA)によると、中国の消費量は、世界の消費量の伸びの三分の一を占め、輸入量、消費量とも米国に次ぐ世界二位になった。
 原油輸入は今年も止まらず、上半期は前年同期比39%増の六千百万トン、通年では一億二千万トンを超える見込み。今年の成長率も昨年並みの9%台が確実で、最近のモータリゼーションの影響もあって石油の需要拡大は続くためだ。
 原油価格の高騰によって国際経済が減速すれば、輸出依存型の中国経済への影響は大きい。国内産業にも広範な影響が出始めているが、特に胡錦濤政権が重点を置いている農業振興にも、農業機械用の軽油価格への跳ね返りが懸念されている。
 中国は原油の戦略備蓄を決定したほか、現物取引の不安定さを軽減するため、上海の先物商品取引所で燃料油取引を扱うことも認めるなどの対策に着手した。
 また代替エネルギーの開発・確保に努め、その一つとして液化天然ガス(LNG)タンカーの建造も決まった。
 しかし当面は、原油の確保は至上命題だ。
 中国は、原油の安定供給源確保のため、輸入量の半分を占める中東を重点にロシア、中央アジア、北アフリカ、中南米などの産油国との関係を促進する資源外交を展開している。
 それに加え、中国は最近、経営破綻(はたん)に陥ったロシアの石油最大手ユコス社の買収にも関心を示したり、日本から石油製品を買い付けるなど資源確保に躍起だ。
 中国は二〇二〇年に国内総生産(GDP)を、四倍にする目標を立てているが、同年の石油消費量は少なくとも現在の三倍強と推計されている。世界の原油需給の逼迫(ひっぱく)に、中国ファクターが増すことは確実なようだ。

●台湾も天然ガス田開発へ 中国の動きを意識か

 【台北25日共同】25日付の台湾紙、自由時報は、台湾の中国石油公司が、台湾海峡の中台中間線から約40キロ台湾側の海域にある天然ガス田の開発に近く着手する予定と報じた。
 埋蔵量45億−100億立方メートルと見積もられているガス田は32年前に発見され、7年前に開発計画が提起されたが、コストの問題などから実行に移されなかった。
 中国石油は開発技術の進歩でコストが下がったため再度、開発を検討することにしたと説明しているが、中国が東シナ海の日中中間線付近の中国側海域で天然ガス田開発を始めたことに触発された面もありそうだ。
 同紙によると、台湾南部・高雄の西方100キロに位置するガス田の開発経費は100億台湾元(約320億円)。(共同通信)

●シェル、米英当局への罰金支払いに合意

 [ロンドン 24日 ロイター] 英・オランダ系メジャー(国際石油資本)のロイヤル・ダッチ・シェル<RD.AS> <SHEL.L>は24日、石油埋蔵量の下方修正をめぐる問題で、1億5070万ドルを米・英規制当局に支払うことで最終合意したことを明らかにした。
同社は、英金融サービス機構(FSA)に1700万ポンド(3070万ドル)、米証券取引委員会(SEC)に1億2000万ドルを支払う。
同社は2004年1月に、原油と天然ガスの確認埋蔵量を20%下方修正し、44億7000万バレル(石油換算)とし、金融市場に影響を与えていた。
英FSAは、同社の「前例のない違法行為」は市場の混乱を招き、上場規則に違反した、と述べた。米SECは、同社が米連邦証券法の詐欺禁止規定等違反に係る停止命令に同意した、と述べた。
同社は、米SECとの協定の一環として、総合的な社内法令順守プログラムを策定・実行するために、500万ドルの追加予算を組み、今回のような過ちを防ぐことを明らかにした。

●ロシア大統領、ブッシュ大統領に石油輸出の増加を表明

 [クロフォード(米テキサス州) 23日 ロイター] ロシアのプーチン大統領は23日、ブッシュ米大統領に対し、ロシアの石油会社各社は輸出と同様に生産を増やしており、今後も続行する方針を明らかにした。

 米ホワイトハウスのマクレラン報道官は、大統領の農場で記者団に対し、「プーチン大統領は、ロシアの石油各社は生産と輸出を増加させており、この状況は今後も続くと語った」と明らかにした。
 同報道官によると、両首脳は、イラクとアフガニスタンでの戦闘や、イランの核兵器開発を防ぐ重要性についても議論した。

露の拡張主義 旧ソ連圏再支配着々と 高騰するエネルギー資源を武器に

 【モスクワ=内藤泰朗】エネルギーを武器とした旧ソ連圏に対するロシアの拡張主義が顕著になっている。米国や中国の進出が著しい中央アジアのウズベキスタンの天然ガスがロシアの影響下に入ったほか、ウクライナでも長期エネルギー協力が実現。欧米の影響が強いアゼルバイジャンへの攻勢も強まっている。世界で高騰する戦略資源のエネルギーによる旧ソ連圏再支配をもくろむプーチン政権の戦略が浮き彫りになっている。
 ロシアは先月、「スラブの兄弟国」であるウクライナが欧州の協力で建設した黒海沿岸オデッサから北西部ブロディに延びる石油パイプラインの使用権を獲得し、ロシアのエネルギー関係者は喜びに沸き立った。
 同パイプラインは当初、カスピ海の石油をロシアを経由させずにオデッサ−ブロディのルートで欧州に運ぶ計画で建設されたが、最終段階でロシア産石油を逆向きに流し南欧に石油を送るとするロシア提案が勝った。これまで送油管がなかった南欧へのルートを手に入れたロシアは、石油の新顧客開拓に乗り出せるようになったのだ。
 さらに、ロシアの日刊紙、独立新聞によると、ロシアは、カスピ海の石油をアゼルバイジャンのバクーからロシアの黒海沿岸の積み出し基地ノボロシスク経由で欧州に送るルートもあきらめてはいない。政府高官が相次ぎバクーにもうで、アリエフ新大統領への働きかけを繰り返す。米国の影響力が拡大する中東に、ロシアの影響力を確保する狙いがあるとみられる。
 世界の天然ガスの二割を産出するロシアの天然ガス独占企業体、ガスプロムは十一日、十六億ドル以上にのぼるウクライナの対露債務を帳消しにする契約を結んだほか、先月には、中央アジアのトルクメニスタンの天然ガスをウクライナのパイプラインを経由して二十五年間の長期にわたり欧州に運ぶ契約も締結した。
 ガスプロムはウズベキスタンとも六月に同国南部カディムなど大天然ガス田の共同開発契約を結び、パイプラインの建設などでさらなる交渉を継続中だ。
 ロシアの「柔らかい下腹」「裏庭」などと呼ばれる中央アジア諸国のほか、ウクライナなど旧ソ連各国はソ連崩壊後、ロシア離れを進め、親欧米路線の戦略を立ててきたが、エネルギーの価格が上昇する中、欧米だけに頼るよりロシアとも協力した方が利益が上がるとの現実的でしたたかな計算が働いていることが背景にはある。
 だが、プーチン・ロシア大統領は「ロシアは、独立国家共同体(CIS)諸国の再統合の原動力となるべく行動すべきだ」と言明し、旧ソ連圏の再支配の夢を隠さない。「経済拡大によるCISの支配」(ロシアの経済紙、コメルサント)は、着々と進んでいる。

露、軍備を近代化 原油高背景に調達費4割増

 【モスクワ=内藤泰朗】ロシアのプーチン大統領は十二日、来年度の軍備調達予算を一挙に四割増額することを明らかにし、増額分で兵器の近代化を加速させるとの見方が出ている。
 石油大国ロシアは、原油価格の高騰による歳入増で軍備費の増額が可能となっており、軍事大国の地位を維持するとの強い姿勢を内外に示す狙いがあるものとみられている。
 クドリン財務相によると、約40%増額される来年度の軍備費は、総額七百億ルーブル(約二千八百億円)規模となる。
 ロシア軍にどんな兵器が新たに加わるのかは不明だが、ロシアは、二〇〇〇年八月にバレンツ海で演習中に事故で沈没した原潜クルスクに代わる新型ミサイル原潜のほか、敵のミサイル防衛網をかいくぐり目的に到達できる大陸間弾道ミサイルや、誤差が二−三メートルという精度で爆撃できる精密爆弾、自動化された戦車、早期警戒ヘリコプターなどの新型兵器開発を、軍事大国である米国に対抗する形で進めている。
 軍備のほか、軍人給与を50−120%増額し、不足する住宅建設など特恵の充実も図られるという。薄給に不満を募らせる軍人たちの生活水準を向上させ、批判をかわす狙いもあるようだ。
 ただ、原油価格が急上昇した一九七〇年代の石油ショックで急激に歳入を増やしたソ連は、その多くの部分を軍事費に投入し、米国との競争に乗り出したが、石油価格は下落。それが後のソ連経済崩壊につながったともいわれている。
 西側軍事筋は「大国として生き残るには、新兵器を開発して軍を近代化し続けざるを得ないジレンマがある」と指摘、プーチン政権の石油マネーの使途に関心を強めている。(産経新聞)

シベリアガス管の東海ルート具体化へ



AUGUST 05, 2004 21:59
by 金起顯 (kimkihy@donga.com)


シベリアのガスが西海ではない東海(日本海)を通じ、国内に入る可能性が大きくなった。

ロシアのエネルギー業界の消息筋は4日「極東のナホトカを経て、東海に向かうガス管を建設し、韓国にガスを供給する新しい方策を韓国と話し合っている」と発表した。


ロシア国営ガス公社(ガスプロム)と韓国ガス公社は、最近モスクワでこの問題を話し合ったものとされる。


同消息筋は「韓国とロシア、中国が妥当性調査を完了し、昨年11月署名まで済ました既存の事業計画は事実上白紙に戻った」と説明した。


ガス管が東海に来れば、中国を経なくても済むため、事業の主体から中国が外され、韓国とロシアのみ残ることになる。


当初、3国はイルクツク近くのコビクタガス田で開発したガスを中国〜西海〜平澤(ピョンテク)を結びつけるガス管を通じ、中国と韓国に供給する方策を進めてきた。


ところが、最近ロシア政府が東シベリアのすべての送油管とガス管のルートを極東のナホトカ方面に統合することを決めたことから、この事業の全面的な見直しが必至となった。


中国がとてつもない安い価格を提示するや、ロシア政府内で「中国抜き」の意見が強まったのも、計画変更の一因となった。

ガス管のルート変更は、韓国の都合にもいいというのがロシア側の主張だ。だいいち、中国を経なくて済むため、韓国が手にする量が増えた。


選択の幅も広まった。東海にガス管を建設する変わりに海上に液化天然ガス(LNG)を導入することもでき、政治的な状況の変化によって北朝鮮を通過するガス管を建設することも視野に入れられる。


全面的なルート変更で事業の遅延は避けられなさそうだが、ロシアは早ければ10年から韓国にガス供給ができるものと見込んでいる。