04/7/28 (水)
22〜30℃、東よりの微風
武器輸出3原則見直しの方向示す 首相の私的諮問機関

 政府が年末に策定する新たな「防衛計画大綱」に向けて設けられた小泉首相の私的諮問機関「安全保障と防衛力に関する懇談会」(座長=荒木浩・東京電力顧問)は27日の会合で、論点整理の文書をまとめた。自衛隊を国際協力に積極活用することや、事実上、一切の武器輸出を禁じている武器輸出3原則の見直しを進める方向を示した。懇談会はこれをたたき台に議論を深め、9月中に首相に報告書を提出する。

 懇談会は4月末から6回の会合を重ねてきた。27日の第7回会合では、これまでの議論を
(1)安全保障と防衛力の基本的考え方
(2)脅威認識
(3)東アジアの戦略環境
(4)危機管理体制
(5)情報
(6)日米安保体制
(7)国際平和協力
(8)自衛隊の任務・体制
(9)計画方式
(10)人材育成
(11)産業・技術基盤(武器輸出3原則を含む)
――の11項目に分け、それぞれについて主な意見を記す形で論議の方向を示す文書が事務局から提出された。
 「基本的考え方」としては、日本への侵略に備えて、必要最小限度の基盤的な防衛力を保有するという、これまでの「基盤的防衛力構想」について、「考え直す必要がある」との意見を記した。大量破壊兵器の拡散や国際テロなどの「新たな脅威」に備え、国際平和協力のために自衛隊を活用するには、これまでの同構想はそぐわないとの考えからだ。事務局によると、基盤的防衛力構想の考え方は維持しつつ「基盤的」の定義を改めるべきだという意見と、構想そのものを抜本的に見直すべきだという主張があり、今後詰めるという。
 「脅威認識」や「戦略環境」などでは、「新たな脅威への対応が重要」とテロなどへの対処の必要性を指摘。一方で、北朝鮮を名指しし「いざという時の防衛も重要」とするなど、従来型の「伝統的脅威」に備える必要も認め、「伝統的脅威の強いこの地域では、日米安保体制に基づく抑止態勢が重要」とした。
 各論では、海外への武器輸出を事実上禁止している「武器輸出3原則」について、見直しを求める意見を複数記した。「米国などと共同で装備の開発を進めることは『死の商人』となることとは異なる」「全面禁止は不合理。平和国家として、国際紛争の助長を回避するとの本来の趣旨に戻ることが急務」とした。
 3原則は当初、
(1)共産諸国
(2)国連決議により武器の輸出が禁止されている国
(3)国際紛争の当事国またはその恐れのある国
――への輸出を認めないとの内容だったが、76年に三木内閣が対象地域以外への武器輸出も「慎む」との政府統一見解を公表した。これを見直すよう求める意見だ。
 国際平和協力のため、自衛隊の海外派遣を積極的に進める必要性も指摘した。海外派遣は日米同盟の強化につながるとの意見や、「自衛隊の任務で、国際協力が運動競技会への協力と同等の位置づけになっているのはおかしい」といった意見を列挙した。現在の自衛隊法では、自衛隊の海外活動は「付随的任務と位置づけているが、これを国土防衛と同じ「本来任務」に格上げすべきだという主張だ。
 また、そのまま放置すれば日本に対する攻撃に至る恐れがある場合などの「周辺事態」で米軍を支援する「後方地域支援」についても、本来任務に改めるべきだとする意見を盛り、これを通じて日米同盟を強化する方向を示した。
 現在の防衛大綱は95年に改定された。政府は、その後「新たな脅威」が深刻化したことや、テロ特措法やイラク特措法に基づく自衛隊海外派遣を進めたという状況の変化を受け、年末に大綱を改定する方針だ。
【私的めもらんだむ】
9時
 「安全保障と防衛力に関する懇談会」の骨子は、自衛隊活動の全てを「本来任務」の国土防衛体制に組み込む、ということだろう。つまりは自衛隊を「軍隊」と位置付けることに他ならず、「他国の武力攻撃に対して実力阻止する権利はあるが、憲法解釈上、その行使は許されない」とする従来の規制を取り払って「国家はこれを排除する権利を有する」国際法に近付けようということだ。しかし、そのことは同時に国土防衛の性質上、単なる防衛に留まらなくなる懸念も必然的に孕んでしまうことになる。相手国の武力攻撃の第一波を受けてからでは遅いため「先制攻撃」が求められることは必須で、このことが、自国が攻撃されるとされないに関わらず武力で阻止できる「集団的自衛権」発動に繋がっていくことは確実だ。何を基準に他国の侵略攻撃を事前に予測判断するのか?まずは「防衛のための先制攻撃を許してしまうことがいかに危険なことか」を最優先としてこその「安全保障と防衛力に関する懇談会」であってしかるべきだ。

「恐怖と勇気がどんなに近くに共存しているかは、敵に向かって突進する者が一番よく知っているであろう」モルゲンシュルテン

「往時においては、母国のために死ぬことは心地よく、ふさわしいものであると書かれたが、近代戦争では、戦死が心地よく、ふさわしいものは何もない。諸君は犬のように死ぬであろう」ヘミングウェー

「平時にあっては人を殺すのを罰し、戦時にあってはこれを命じる、といったような間違った道徳律のあり得ぬことを考えたら、動員を拒絶すべきなんだ!戦争を拒絶するんだ!」マルタン=デュ=ガール

【視聴予定】
21時
15-00 その時歴史が動いた 日米開戦を回避せよ▽なぜ和平交渉は決裂したか?真珠湾と暗号電報の謎 =NHK総合テレビ
 日米開戦前夜、日本とアメリカは戦争を回避するため瀬戸際の和平交渉を進めていた。アメリカが日本の要求を認める形でを交渉が成立するかに見えた時、突然アメリカは態度を豹変。のちにハル・ノートと呼ばれる強硬案を日本側に提示する。このハル・ノートの内容に日本政府は絶望、開戦の最終決断を下すことになる。
 一夜にしてアメリカが態度を変えた背景には世界各国の壮絶な外交戦が関わっていた。今回初めて撮影が許可された中国の指導者・蒋介石の日記には、日米交渉の破綻をのぞむ中国の凄まじい外交戦の実態が克明に記されていた。一方、ナチスドイツと激闘を続けていたイギリス首相チャーチルは、アメリカに極秘電報を送り、日本との妥協に釘を刺していた。
 さらに近年、当時の日本外交の内幕を明かす新たな史料が発見された。日本がアメリカや中国の暗号電報を解読した文書が大量に見つかったのである。最近の研究では、この暗号解読文が、日米交渉の行方に大きな影響を与えたと指摘されている。
 日本に太平洋戦争の決断をさせた外交文書、ハル・ノート。その提出の裏に秘められていたドラマを新たな史料から描いていく。
新じねん」TOP