武器輸出 経団連は考え違いだ
武器の輸出を禁止してきた「武器輸出三原則」。日本経団連がその見直しを求めている。国からの受注減を輸出で埋めるのが狙いという。安易にすぎる。「三原則」は軽々に扱ってはならない。
行動する経団連なのだろう。このところ、分野を問わずにもの申したり、活動する積極姿勢が目立つ。
例えば政治献金再開への音頭取りがある。政党の政策につけた評点をもとに企業に献金を促したのは、まだ記憶に新しい。
与野党そろっての活発な動きに合わせた格好で、憲法問題を取り上げて議論を始めてもいる。
産業界の総本山・経団連である。
業界の声や要望の集約。全体の利益を勘案しながら、実現に向けて政治や行政にも働きかけていく。指南役であり、まとめ役としての当然の振る舞いといってよいだろう。
だからといって、今回の武器輸出三原則の見直しを求める提言は、そのまま見過ごすわけにはいかない。
提言は示す。国の装備予算の減少で防衛産業の撤退や縮小が心配である。ミサイル防衛などの共同開発に日本の企業が参加できなければ、技術力の低下も招きかねない。一律禁止でなく、国益に沿った形で輸出管理のあり方の再検討が必要だ、と。
ちょっと待ってほしい。
「三原則」が、一体、どんな経緯で生まれたものか。いま一度、真摯(しんし)に振り返ってみたらよい。
河野洋平衆院議長も即刻、経団連の姿勢を批判した。「もっと武器を輸出できるようにとの提言が出てくるのは安易に看過できない」。その通りだと思う。軽々しく見直しを口にする問題ではないはずだ。
平和外交の一つとして、佐藤内閣が共産圏、国際紛争当事国などへの武器輸出を禁じたのが三原則だ。その後、三木内閣が憲法の精神に則し「輸出を慎む」と踏み込み、事実上全面禁止となっているのである。
過去の歴史も踏まえた、この平和主義の三原則が、どれほどの信頼をもたらしてくれたか。産業界の受け続けた恩恵も、また計り知れまい。
武器は種類を問わず、人を殺す道具である。狭い企業論理から、その武器を輸出できるよう三原則の見直しを求める。テロリズムの脅威が増している中で、経団連が旗振り役になろうとは。考え違いも甚だしいといえよう。
防衛産業の将来をいうのなら、平和を背に培ってきた高い技術・品質の良さを生かして環境分野などへの転換を促していく。武器輸出を求める提言ではなく、それが経団連の役目であろう。与党内に見直し論もあると聞くだけに、なおさらである。(東京新聞-社説)
★日本経済団体連合会(公式ホームページ)
★経団連・委員会委員長等一覧
【私的めもらんだむ】
10時
「武器輸出三原則」の見直しを求めている経団連は「大企業の利益」を優先にするところの代弁団体に他ならない。経団連会長は別称「財界総理」と呼ばれ、その高圧的な権限は彼らの政治献金で養われてきた保守勢力政党に起因する。財政官界に強大な特権支配力をもつ彼らが、いま政府に武器輸出の規制緩和を求めることは、同時に大多数国民への背信行為であり、1976年2月に定められた「新三原則」に抵触する。新三原則は、旧三原則の武器輸出対象国規定をさらに強化し、憲法精神にのっとって武器輸出全面禁止を促すものだった。その平和の牙城を突き崩そうとしている経団連は、再び国民が戦争の惨禍に晒されることのないよう定めた「国民主権の原理に基く戦争放棄」その憲法にも抵触する。
【視聴予定】
21時
00-50 NHKスペシャル ふたつのアメリカ・イラク戦争の中の大統領選▽無党派層が消えて深まる亀裂
=NHK総合テレビ
現職のブッシュ大統領と民主党のケリー上院議員との一騎打ちとなる、今年秋のアメリカ大統領選挙。これまで「外交政策は大統領選挙の争点にはならない」といわれてきたが、今回は、対外政策が最大の争点に浮上している。先制攻撃論と一国行動主義に基づく政策を推し進めるブッシュ大統領か、それとも「国際協調」を訴えるケリー氏か。大統領選挙に映った”分裂するアメリカ”の姿を描く。 大量破壊兵器が見つからず、イラク戦争の大義が揺らぐ中、ブッシュ大統領への支持率は五〇%を割り込んだ。一方のケリー氏も伸び悩み、選挙情勢は互角の状態だ。
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