うるし【漆】
1 ウルシ科の落葉高木。中央アジア原産。奈良時代以前に中国経由で日本に渡来し広く各地で栽培。高さ七〜一〇メートルに達する。葉は卵形か楕円形の小葉が七〜一九枚羽状に並び、秋、紅葉する。雌雄異株で、初夏、黄緑色の小花が円錐状に集まって咲く。実は直径七ミリメートルぐらいのゆがんだ球形で一〇月頃熟し、これからろうをとる。樹皮からは漆汁をとり塗料とし、乾漆(かんしつ)は彫刻材、駆虫剤、せき止め薬とする。漆汁はウルシオールなどの有毒成分を含み、触れると皮膚がかぶれる。材は黄色で、水湿に強く、箱や挽き物細工に用いる。漢名、漆樹。*天理本金剛般若経集験記平安初期点「児、小時漆(ウルシ)に患(かぶ)れて」
2 漆の樹皮を傷つけ、流れ出る樹脂を採り、それに乾燥剤と着色剤とを加えてつくった塗料。普通乾くと光沢ある黒色となり、熱、酸などに強い。*竹取「うるはしき屋を造り給ひてうるしを塗り、まきゑして」
これまでの漆渡来が奈良時代以前とする定説も、三内丸山遺跡の北の谷から発掘された漆器によって覆されたことになる。5000年も前、真っ赤な夕陽が沈んで夜の帳が下りる光景から、人間の生死を朱と黒とにイメージして、漆器をつくる縄文人の心の豊かさが伝わってくるようだ。
【関連サイト】日本の伝統美「浄法寺漆芸」&漆の話
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