03/12/29 (月)
イランのバム市2003/12/28
 毎日数万人が往来する街路の片隅で発見されるまで放置されていたホームレスの遺体、生活保護を打ち切られて餓死した男性・・・彼らの遺体はみな腐食することなくミイラ化していた。未曾有の大不況に収入の道を閉ざされ途方にくれている人がいるかと思えば、正月を海外で迎えようとする人々が空港に押し寄せる光景がテレビで映し出されている。この著しい落差が現代ニッポンを象徴しているかのようだ。「自分が困っているのに、他人のことなんかにかまっていられるか」何度そうした声を聞いてきたことか。ひとかけらのパンに群がる蟻のように、今日も他人を押しのけても生き延びたいとする生活戦争がここかしこで展開している。輪郭が鮮明になってきた勝ち組負け組みの境界線の中で、1日100人が自殺するニッポン世相・・・彼らは人生の敗北者か、負け組みの無惨な末路か?勝ち組は人生の勝利者か?そうして勝ち誇る人々の頭を割ってみれば、シュレッダーにかけられた札束という紙切れだけが舞い散る、私にはそんなイメージしか湧いてこない。カネは人の心の中で腐食する有機物のよう、餓死して果てるミイラ化した遺体のように、せめて腐らない心のままでありたいものだ。「他人のことなどかまっていられるか」と目先の生活戦争に翻弄される人々に、イラン大地震での犠牲者と遺族の悲嘆にも心は痛まないであろうか。
二人の息子Ali Akbar とGhasem Majidi を共同墓地に運ぶイラン男性
イランのBaravatおよびバム空港において
写真=AP Photo

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