スケジュールをミスったサンタクロース、おまけにプレゼントを忘れたマヌケなサンタ。いいかげんにしてくれよ。プレゼントをするのがアンタの仕事だろ?そんな玄関口に突っ立ってないで中に入れよ。今時のサンタはしょうがねえなあ。
-すいません。ではちょっとお邪魔しま〜す。あっ、けっこう臭いですね。
+猫のウンチとオシッコの臭いだ。贅沢云うんじゃない。猫やるから、その空袋に猫詰めていけよ。
-いや、けっこうです。遠慮します。勘弁してください。じゃ、私は急ぎますから、これで失礼します。
+待てよ。座ったとたん帰るって話はないだろ。それにアンタは失敬だぞ。それでよくサンタやってられるな。
-じゃお言葉に甘えて、腰を降ろさせていただきます。すぐお暇しますのでお茶は要りません。
+出したくてもお茶なんか無いんだよ。水で我慢しろ。
-いくら不景気とはいえ、いまどきお茶がない家も珍しいですね。
+余計なお世話だ。まったく失敬な奴だな。それじゃ人に嫌われるぞ。
-そうなんです、私はそれで悩んでいるんです。何が原因なのでしょう?
+それはハッキリしてるじゃないか。第一プレゼントを忘れるサンタなんか聞いたこともない。それに日付も間違えてるしさ、クリスマスは25日だろ。よく服の色間違えなかったな。
-そりゃもう、サンタに赤い服ってのは定番でして、それだけは間違いっこありませんやな。
+なんで急に江戸弁になるんだ?変なサンタだな。生まれは北欧あたりじゃないのか?
-よく訊いておくれやした。確かにアッシは北欧生まれなんざんす。しかしながらトナカイの数に限りがありまして、小さいうちから日本に奉公に出されたというわけです。
+そういえばアンタはトナカイに乗ってなかったな。なんで来たんだ?
-実はプレゼントを売りながら電車賃にしてたんですが、やがてプレゼントも売り尽くしてヒッチハイクしながらここに来たんです。
+それは大変だったな。でも入る前に俺んちが貧乏だって分かんなかったのか?小銭だって貸せないぞ。
-そりゃもう、ひと目でこの家が貧乏だって分かりますがな。それも相当貧しかろうと、それでサンタの本能がムラムラと沸き起こったという次第で。
+どういう意味だ。貧乏人をコケにしてるのか?
-そこまで私は落ちていません。曲がりなりにも私は子ども達にプレゼントして喜びを与えるサンタクロースです。不幸な家を見てフラフラと入ってしまったというわけです。
+不幸と貧乏を結びつけるな。貧乏でも心が豊かってこともあるんだ。それにアンタはオレにプレゼントする肝心の物がないだろ?
-そこが迂闊でした。それに見たところ子どもも居ないようですし、プレゼントを持ってなくて良かったと、少し安堵しているところです。でも、それでは申しわけが立たないから、何か差し上げようと思案しているんです。何がお望みでしょう?
+何も要らないから、帰ってくれないか。
-分かりました。私が帰ることをお望みということで、じゃ失礼します。
+やっとこさ帰っていきやがった。おいおいとんがり帽子忘れてるぞ。どまでもマヌケなサンタだ。
サンタの皆さん、これは作り話で、事実とは無関係です。名誉毀損で訴えられても困ります。あしからず。
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