北朝鮮の常套文句「交通事故」の真意と、党を脅かす軍部の独走
6月16日に交通事故で死亡したとされる北朝鮮の(キムヨンスン)労働党書記について、新たな追加情報が入っている。
その真相について、山梨学院大学の宮塚利雄教授は、交通事故というガセネタで粛清を図る「交通事故=粛清」と「不正蓄財」という二つの可能性をあげている。不正蓄財とは、現代グループの毎月1200万ドル対北送金など、朝鮮アジア太平洋平和委員会及び一連の韓国政府の不正融資がらみに関するものだろう。【参照、金容淳逮捕の舞台裏-1 】 ちなみに北朝鮮政府の云う公金横領とは、専門筋では指名手配のことだと云われている。
次いでジャーナリストの恵谷治氏は、金容淳の交通事故は虚偽とする「政治的交通事故」を強調している。日本人拉致に絡んで北朝鮮政府が伝える田口八重子さん(1986/7死亡?)と松木薫氏(1996/8死亡?)の交通事故死発表が典型的な「政治的交通事故」だとして、生存の可能性を示唆するのだ。これまで分かっているだけで4人の要人が交通事故にあったと伝えられている。
1970年後半、南白(ナムイル)国家副主席
1980年代、呉振宇(オジンウ)人民武力省
2003年10月、高英姫(コヨンヒ)夫人
2003年6月16日、金容淳(キムヨンスン)労働党書記
中でも高英姫(コヨンヒ)夫人は、金容淳の交通事故と時期をほぼ同じくするだけに、何らかの関連性があるのではないか?と私などは憶測している。当初、丁世鉉(チョンセヒョン)統一省は「高英姫夫人は重い病気にかかっている」と発表していた経緯がある。病気なのか、事故なのか、その曖昧さがさらに憶測を呼んでいる。これは一時期、公式の場に姿を見せなかった金正日総主席と考え合わせても、朝鮮国内に何らかの異変が起きていることを示唆させてくれる。
これらは党と軍部の軋轢によるもの、と解説するのがRENK代表の李英和氏だ。軍部は首輪を外された野犬のように独走し始め、もはや党を代表する金正日総主席は軍部を統制できないまでに弱体化しているというのだ。凶暴化した野犬に再び首輪を嵌めようとしても無理なように、今後、日本は外交の折衝窓口を党から軍へと替える必要があるだろう、とまで云いきる。思えば、事故死したとされる金容淳も党の幹部であった。それに重態が伝えられる高英姫夫人のことを考え合わせれば、金王朝の崩壊も間近に迫っていると予測すべきかも知れない。
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