03/10/27 (月)
 猫たちとの憩いのひと時、ふいの来客を猫たちが総立ちになって知らせる。「あらら・・・猫ちゃんたち、いっぱいいますね」金網越しに聴こえる人の声「ガスの集金に伺ったんですが、先月分から滞納してますので、宜しくおねがいします」「は〜い、ご苦労さま」

 あのね、本当のところカネないのよ。ないものは払えない。ガス止めてくれていいからさ、滞納分チャラにしてくんないかな?だめ?ダメなんだろうなぁ・・・あんたも上司に叱られるんだろうね。何としてでも取り立てろって、それでないと給料からさっぴくぞ、なんて脅かされて困るんだろうな。やれるもんならやってみろ!なんて上司に楯突くわけいかないものね。そのためにリストラされたらたまんないね。でもね、本当にカネないのよ。仕事が少ないから、収入も少ないわけ。分かってほしい、この苦境・・・ほら私なんかこんなに痩せちゃって、え?普通だって?あなた、以前の私見てないからそんなこと云えるんだよ。前はそれこそ丸々太っててね、デブそのものだったんだ。それがこの不況の直撃受けて会社が傾き、ご飯も喉を通らなくなり、ごらんように痩せ細ったというわけ。でも、ものは考えようで、スリムになって良かったと思い込むようにしている。不況よ、ありがとう。

 こうなりゃマゾッホに成り切って、もっといぢめて!なんて歓喜しちゃおうか。うっとりした顔してたら、集金人も気味悪くなって逃げ出すんじゃないか。涎なんか流してたら救急車呼ばれたりするかも。

 分かってる、即効の処方箋はカネだってこと・・・その処方箋がないから、金欠病も治らない。瀕死の重病だ。必死で空をつかむ手に札束つかませてくれたら、あ〜ら不思議、突然完治したよ、奇跡だ!なんて類いの病気なんだ。
 猫が台所で暴れている。猫になりたい。生きることだけに生きてりゃいいんだもの。今の人間社会で生きるってことは、カネのために生きるってことになるね。カネが無ければ生きられない、という意味において、私はもう死んだも同然なんです。どうか私が死んだと思って、集金は諦めてください。でも香典はちゃんと持ってきてね。

「金々節」添田唖蝉坊・作、小沢昭一・歌


マゾヒズム
(英masochismのドイツ語読み)
1 相手から肉体的な苦痛や精神的苦痛を与えられて性的満足をうる異常性欲。このような人物を主人公とする小説を書いたオーストリアの作家、ザッヘル‐マゾッホに由来する語。被虐愛。⇔サディズム。
2 (転じて)一般に、自虐的な傾向・性質。
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