帯化タンポポに異常遺伝子発見、その新たな効用?
今年8月12日の日誌では、奇形植物であるところの帯化タンポポに「リン酸トリス」という化学物質が検出されたことを書いたが、最近また新たな発見があった。逆の発想転換からすれば、これは新たな展開と云うべきかも知れない。
愛知教育大学の生物学教室、渡邉幹男助教授によれば「これら帯化タンポポには、通常考えられない交雑が起きている」のだという。日本にはセイヨウタンポポとニホンタンポポの二種類に大別され、双方は繁殖方法が全く異なるのだ。セイヨウタンポポはクローンのように雌しべだけで増殖を続ける「無融合生殖」なのに対し、ニホンタンポポは雌しべと雄しべがなければ増殖しない「有性生殖」である。つまり「無融合生殖」のセイヨウタンポポを母親とする一方的な生殖形態になる。帯化タンポポは、人間でいえば化学物質に敏感に反応する化学過敏症のようなものだ。渡邉教授によれば「異常な交雑が起きたから帯化になるのではなく、異常な交雑の結果、化学物質に過敏な帯化タンポポが発生する」と云うのだ。
ここが微妙なところで、一見正常に見えるタンポポにも、異常な交雑で生まれたタンポポがあるということになる。そうしたタンポポの中でも化学物質に過敏なタンポポだけが帯化するのだ。それではそれを逆手にとって、その異常な交配で生まれたタンポポだけを育てれば、帯化の有無で化学物質の有無も確認できるわけである。まだ可能性の段階ではあるが、今後の更なる分析を経て具体化することも考えられる。渡邉幹男助教授は云う。
人間にも化学物質に敏感な人とそうでない人がいる。今回の帯化タンポポでいえば、遺伝子が違っていることによって、化学物質に過敏に反応しているのではないか。こういう植物が見つかっていけば、化学物質があるかどうかのチェックに使える可能性がある。
シックハウスで毛穴から血を流す患者の悲惨と苦しみは想像以上のものである。化学物質が特定の化学物質過敏症にとどまらない、深刻な社会問題になりつつある今、これら奇形植物の異常は人間社会への自然からの警告でもあろう。
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