<訃報>エリア・カザンさん94歳=米映画監督
【ニューヨーク高橋弘司】「欲望という名の電車」「エデンの東」などの名作で知られる、米国の名監督、エリア・カザンさんが28日、マンハッタンの自宅で死去した。94歳。死因は発表されていない。晩年は映画を離れ、小説や自伝の執筆などに専念していた。
トルコのコンスタンチノープル(現イスタタブール)生まれ。ギリシャ系の両親とともに4歳で米国に移住。エール大で演劇を学んだあと、俳優、演出家として「欲望という名の電車」「セールスマンの死」などの舞台を手掛けた。
45年、「ブルックリン横丁」で映画デビュー。47年、ユダヤ人差別を取り上げた「紳士協定」でアカデミー賞作品、監督賞などを受賞。51年、「欲望という名の電車」では、ビビアン・リーにアカデミー賞主演女優賞をもたらした。54年には、港湾労働者を牛耳るボスの不正を命がけで暴く主人公を描いた「波止場」で再びアカデミー作品、監督賞など8部門を受賞。55年には、ジェームス・ディーンの出世作となった「エデンの東」を発表。リー・ストラスバーグらとともにニューヨークに俳優学校「アクターズ・スタジオ」を設立し、ディーン、マーロン・ブランドら数々の名優を輩出した。63年、自伝的要素の強い「アメリカ アメリカ」を製作。76年「ラスト・タイクーン」を最後に映画監督を引退した。
社会性の強い映画で高い評価を得た一方、反共産主義の「マッカーシズム(赤狩り)」の嵐が吹き荒れた52年、米下院非米活動委員会で、共産主義に関係したとして映画界の知人の名を挙げたことで批判にさらされた。ハリウッドで仕事を続けたものの、最後までしこりが残り、99年のアカデミー賞授賞式で特別名誉賞が贈られたときも、賛否が分かれた。88年、「エリア・カザン自伝」を発表し、99年に邦訳され、毎日出版文化賞を受賞した。(毎日新聞)
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