
バスラ市の小児(15歳以下)における白血病数は1990年1%に満たなかったのが、2003年には40%にも急増しつつある。白血病にいたっては80%という激増ぶりだ。これは劣化ウラン弾の影響なしには考えられまい。バスラ母子病院のジョナン。ハッサン医師は「患者発生地域が拡大しているのは、劣化ウラン弾の汚染が風によって広がっているため」と云う。金沢大学の小村和久教授は、これら市街地で集めた劣化弾の破片を校内の低レベル放射能実験施設で分析、その結果、高濃度のウラン238を確認している。これはウラン鉱床より放射能が高く、破片はウランの固まりとなってばら撒かれているのと同じだと云う。バクダッド市街地にも至るところに劣化ウラン弾の破片が散在しており、地域を警備する米軍兵士らも知らされていないのが現状だ。
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キャロル・ピクー元陸軍看護兵 |
放火されたピクー元看護兵の乗用車 |
1995年ボスニア紛争の年に劣化ウラン弾のマニュアルを完成させたダグラス・ロッキ元米陸軍少佐は、それが軍によって適用されなかったことに憤慨している。ロッキ氏は弾劾する。「マニュアルを見れば兵士は劣化ウラン弾の危険を事前に知ることができる。ペンタゴンは私にそのマニュアルづくりに任命しておきながら、危険を承知のうえでマニュアル公表を拒んだのだ。これによりアメリカ政府には全世界に対する責任が生じたことになる」
キャロル・ピクー元陸軍看護兵は1991年の湾岸戦争に従軍した女性兵士だが、劣化ウラン弾に汚染され、排泄機能が阻害されるという症状に悩まされてきた。彼女は1993年9月6日の未下院退役軍人問題委員会の席上「排泄障害で軍がくれたのは尿を出す器具だけだった」として、劣化ウラン弾との因果関係を認めたがらない政府に抗議運動をつづけている。エリク・ダクソン米陸軍軍医大佐は「劣化ウラン弾は他の兵器と比べ環境にも被害が少ない」と平然と云ってのける。彼女はそれらを覆すための証拠書類を集めたが、放火され自家用車と共に燃やされてしまった。また長距離電話の発信もできなくなり、覚えのない電話の請求書も届くようになった。
(つづく)
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