映画「7月4日に生まれて」はロン・コーヴィックという元海兵隊兵士の実話を元につくられた。15年に及ぶこのベトナム戦争にあって、北ベトナムの解放戦線死傷者は約227万人、アメリカと南ベトナムはおよそ98万人もの犠牲者を出した。アメリカは50万人の地上軍を投入、うち戦死者は約5万人に達したと云われている。コーヴィックもまた国内に渦巻く愛国心に煽動され、ベトナムの戦場に赴いたわけである。しかし、下半身麻痺の重症を負いながら、帰国したコーヴィックは徐々に戦争への疑問を抱き始めていく。敬虔なクリスチャンの家に生まれ、倫理観を説く自分の両親への偽善に目覚めたのも、当然過ぎる必然であったろう。これは、愛する子どもを戦場に送り出してきた大人社会への抗議の映画でもある。青春期に戦争の地獄を体験しなければならなかった若者の心痛を、母親を罵倒するコーヴィックの酔態場面が迫力をもって伝えている。
【ベトナム戦争】1960-1975
(Vietnam)〈ヴェトナム〉東南アジア、インドシナ半島最東部にある社会主義共和国。北部のソンコイ川がつくるトンキンデルタ地帯と南部のメコン川がつくるメコンデルタ地帯とをアンナン山脈ぞいの狭長な中部がつなぎ、南シナ海に面する。北は中国、西はラオス・カンボジアに接し、文化的には中国の影響が強い。一九世紀初め阮王朝が全土を統一、越南と称したが、一八八四年以来フランスの保護領となった。一九四五年ホーチミンを首席とするベトナム民主共和国が独立。その民族主義戦線と、フランスとの間で、五四年のジュネーブ協定まで第一次ベトナム戦争がおこなわれ、北緯一七度をもって南北に分断された。六〇年、南ベトナム解放民族戦線(ベトコン)が成立、北ベトナムがこれを支持して南ベトナム政府軍との間で内戦化。六一年には南ベトナム側にアメリカが介入、第二次ベトナム戦争となる。七三年に和平が成立し、七六年、ベトナム社会主義共和国として南北統一が実現。首都ハノイ。
【関連サイト】映画「7月4日に生まれて」-解説DVD版&東宝出版
|